あの姑にナイフを持って追いかけられた夜のことは、今でも忘れられない。夫と絶縁したはずの義母が、私たちの結婚式でご祝儀を全部持ち逃げした悪夢から2年。今度は義弟の結婚式で、義母が新郎新婦に向かって「この泥棒猫が!」と叫びながらテーブルのナイフを掴んで突進してきたんです。私は柔道の経験を活かして義母を取り押さえましたが、義弟の彼女は「結婚する資格なんてない」と白けてしまい…気がつけば、警察沙汰に…

あの姑にナイフを持って追いかけられた夜のことは、今でも忘れられない。夫と絶縁したはずの義母が、私たちの結婚式でご祝儀を全部持ち逃げした悪夢から2年。今度は義弟の結婚式で、義母が新郎新婦に向かって「この泥棒猫が!」と叫びながらテーブルのナイフを掴んで突進してきたんです。私は柔道の経験を活かして義母を取り押さえましたが、義弟の彼女は「結婚する資格なんてない」と白けてしまい…気がつけば、警察沙汰に...

義母から連絡が来たのは、ある夜のことだった。夫が電話に出て、表情を曇らせた。

「義弟が結婚するらしい。彼女を紹介したいって。」

私たちは2年前に義母と絶縁している。その義母を通じての話だ。夫も義弟も、義母とはあまり仲が良くない。滅多に連絡してこない相手からの突然の知らせに、嫌な予感がした。

数日後、私たち夫婦は義弟とその彼女に会った。義弟は夫の一回り下で、モデルのようなイケメンだ。彼女はまだ20代前半で、華奢で可愛らしい子だった。夢は可愛いお嫁さんになることだそうで、結婚情報誌を見せられたり、指輪をねだったりしているらしい。

「おめでとう。よかったね」

私は口では祝福したが、内心は複雑だった。夫も同じようだ。

「問題は母さんだよ。僕だって兄貴たちの結婚式での母さんの態度を覚えてる。あれ以来、親戚から白い目で見られてるし、そもそも母さんは僕にべったりだろう。彼女の存在がバレたら何をしてくるか分からない」

義弟はしょんぼりと下を向いた。自分の母親がこうだと認めるのは、相当つらいことだろう。

「だから、母さんには内緒で結婚するつもりなんだ」

義弟はそう宣言して帰っていったが、玄関のドアが閉まった瞬間、私は夫に聞いてしまった。

「無理だよね」

「無理だろう」

夫は短く答えた。義母に内緒で結婚できるわけがない。義弟は義母と同居していて、義母は義弟の収入で生活している。生活能力ゼロの義弟は、料理も作れなければ自分のパンツすら洗ったことがない。義母が何もさせなかったのだ。

私たちが義母と絶縁した理由を思い出す。私たちの結婚式のとき、義母は白いワンピースを着て現れた。

「私はあなたを産んだとき、結婚式をあげられなかった。私が主役になってもいいじゃない」

そう開き直って、私たちの結婚式で集まったご祝儀を全部持ち逃げしたのだ。夫は泣きながら私の両親に土下座して謝った。そして、ご祝儀額を手切れ金にして義母と絶縁した。夫は弁護士に依頼して法的な書類まで作り、義母が遊び回って金に困って戻ってきたところを捕まえて署名させた。

それ以来、1年ほどは連絡がなかった。義弟は違う。義母は夫を放置していたくせに、義弟には嫉妬深い彼女のように執着している。義弟に彼女ができるたびに、暴言を吐いたり、手作りのお菓子を目の前でゴミ箱に捨てたり、デートに乱入したりしていたらしい。

「何よ、あんたみたいなブサイク息子にふさわしくないわね」

義弟の歴代の彼女たちは、みんな義母に追い払われていた。それなのに、義弟は義母に内緒で結婚しようとしている。

その数ヶ月後、また義弟から連絡があった。今度は彼女も紹介したいと言う。まだバレずに続いていたのかと驚いたが、本気なら応援してやりたいと思った。

しかし、義弟の彼女はくせ者だった。最初は和やかに話していたのに、彼女が突然こう言い出した。

「全然家族に合わせてくれないから、私騙されて遊ばれているだけかと思ってたんです」

「そんなことないよ。実は僕の母さん、ちょっとやばいんだ」

義弟は慌てて言い訳を始めたが、彼女は納得しない。話の流れで義母のやばさを証明することになり、私がこれまでの夫の生い立ちや結婚式の事件を話すことになった。途中から義弟の彼女の顔が青ざめ、俯きがちになった。

「まあ、こんなわけで絶縁したんだけど」

「最低です」

義弟の彼女が呟いた。

「そうでしょ?本当にひどかったのよ」

「違います。ひどいのはお姉さんです。そんな嘘つくなんて。いくら何でも話を盛りすぎでしょ。私たちが結婚するのに反対なんですね。だからそんなありえない話をするんでしょう」

私は絶句した。夫も義弟も理解不能だった。でも彼女はますますヒートアップしていく。

「お母さんがかわいそうですよ。お姉さんには嫁の自覚ないですか?嫁はお姑さんを立てるものでしょう。可愛い息子が取られてちょっと意地悪したくなっただけですよ。そういうときは優しく接してあげないといけないんじゃないですか」

「えっと、つまり私が悪くなくても折れろってこと?そういうレベルじゃないから絶縁したんだけど」

「お姉さんたちのせいで私たちが結婚できないんじゃないですか?私ならお母さんにもっと優しくしてあげて、仲良くなれますから」

彼女は私に意味不明な説教をかまし、私たちの関係はすっかりこじれてしまった。

それから1ヶ月ほどして、義弟が結婚式を企画したと言ってきた。レストランウェディングで、両家の家族とごく親しい友人や近い親戚だけの小規模なものだという。夫は何度も「大丈夫なのか」と確認していたが、満足のいく返事は来なかったらしい。

ドキドキしながら会場へ行くと、私たちのテーブルに義母の名前の札があった。思わず夫にこそっと尋ねる。

「ねえ、どういうこと?お母さんの席があるんだけど」

「昨日、義弟がさすがに黙ってられなくなって話したらしい。先方の彼女が『結婚式なのに呼ばないなんてありえない』って主張したみたいだ」

それから数分後、義母が現れた。泣きはらした目をして、真っ黒な喪服を着ている。フォーマルウェアだから完全な違反ではないのかもしれないが、あの義母のことだ。意図的に決まっている。義母は大げさにすすり泣きながら席に着き、俯いて義弟の恨み事をブツブツ呟いている。怖い。絶対に何かをやらかす。

「新郎新婦のご入場です。皆様、拍手でお迎えください」

司会のアナウンスとともに華やかな音楽が流れ、義弟と義弟の彼女が入り口に現れ、スポットライトが当たった。会場がわっと盛り上がり、拍手が起こった。

その瞬間、義母がガバッと顔を上げた。

「この泥棒猫が!」

義母は叫びながら、テーブルにあったナイフを掴み、そのまま義弟の彼女に向かって突進していった。

「きゃー!」

義弟の彼女が悲鳴をあげ、周りがざわついた。私はすぐに義母を追って、掴むと足技をかけた。義母は勢いがあったため、盛大にすっ転ぶ。私は小学校から高校まで柔道少女だ。この程度は余裕だった。本当は自分の結婚式のときに直接向かってこないかなと思っていた。投げ飛ばしてやるのに。

義母はよろめきながら立ち上がろうとした。私は素早く足を払って、また転ばせた。

「失礼。お母さん、式を台無しにする気ですか?刃物を持って何をするつもりなんです?私たちのときは、ご祝儀全部持ち逃げしましたよね。それで絶縁したわけですけど」

義弟の彼女の両親にも聞こえるように、大きな声で言ってやった。会場はしーんと静まり、義母は見る見る真っ赤になった。

「ナミさん、邪魔をするな!」

義母に怒鳴られたが気にしない。また義弟の彼女に向かっていこうとしたため、関節を極めて義母を抑えた。

「わあ、怖い。邪魔をするなって、式を台無しにするのは否定しないんですね」

私は義母を抑えたまま、義弟を睨んだ。

「今日の式を台無しにしたのは、お母さんだけの責任じゃないわよ。こうなる前に、あなたが何とかしなきゃいけなかったの。あなたがお母さんを説得するなり、縁を切るなりしないと。黙って結婚式をあげようとして、ギリギリまで何の行動もしてこなかったから、お母さんが加害者になるところだったのよ。いい大人なんだから、ちゃんと反省しなさい」

周りからパチパチと拍手が起きた。スカッとしたのだろう。

義母はこの泥棒猫と口汚く罵り続けたが、程なく警察が到着した。夫が通報したらしい。義母は連行され、結婚式は当然のごとくぶち壊しになった。義弟の彼女はわっと泣き、義弟は黙って何度も頭を下げるだけだった。

その後、夫に怒られた。

「無事でよかったけど、怪我をしたらどうするんだ?俺にはナミが一番大切なんだからな」

でも、義母を投げ飛ばしたことは叱られなかった。すっきりしたのでよしとする。

その後、義弟と彼女は破局した。義弟の彼女の両親が「あんな姑のいる家になんかやれるか」と大反対し、彼女自身も義母の行動がトラウマになって、すっかり結婚願望が消えうせてしまったらしい。他人の忠告を聞かなかったのだから自業自得だ。

義母は精神的に参ってしまい、精神科の病院へ入院した。噂では、一度入ると出られないという有名な病院だ。元々だいぶあれな人だったし、これ以上は何も言わないでおこう。

義弟は、あの場で一括されて少しは響くところがあったのだろうか。彼女とは破局したが、一人で生活するようになり、別人のようにしっかりしてきた。義母の悪影響が抜けてきたのかもしれない。

そして今、私は夫との間に赤ちゃんを授かった。まだ初期で性別も分からないが、夫は今からベビー用品のカタログを色々見ていたり、名前辞典を男女両方買ってきたりと、今から大張り切りだ。私と夫なら、きっと幸せな家庭を築いていけるだろう。

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