海外赴任から帰ってきた息子が社長を務める会社で、役員会議に出た初日、新しく赴任してきた佐々木課長が俺の顔を見てこう言ったんだ。「あんた、部外者だろ。会議は社員だけで十分。じじいは出ていけ」と。俺はその場で何も言わなかったが、その日から数週間、彼の言動を密かに録画し続けた。パワハラ、セクハラ、そして会社の金を使った不正まで、すべて証拠を掴んだ。解雇を告げるための会議を開くその日、彼は何も知らず…

海外赴任から帰ってきた息子が社長を務める会社で、役員会議に出た初日、新しく赴任してきた佐々木課長が俺の顔を見てこう言ったんだ。「あんた、部外者だろ。会議は社員だけで十分。じじいは出ていけ」と。俺はその場で何も言わなかったが、その日から数週間、彼の言動を密かに録画し続けた。パワハラ、セクハラ、そして会社の金を使った不正まで、すべて証拠を掴んだ。解雇を告げるための会議を開くその日、彼は何も知らず...

その日、営業部の重要会議で、俺は佐々木課長に面と向かって「会議は社員だけで十分。GGは出ていけ」と言われた。営業部長の火山が真っ青になるのが見えた。俺は広坂商事の会長、広坂刑事。66歳だ。

息子が社長に就任してから、俺は自宅でリモートで会社の様子を伺っていた。営業部には小さな防犯カメラが設置されていて、俺はそれをパソコンで監視するのが日課だった。そんなある日、息子から両親への海外旅行の提案があり、妻と初めてのハワイ旅行に出かけた。仕事一筋だった俺を、妻はいつも支えてくれた。息子の教育も、すべて妻が引き受けてくれた。ハワイから帰国し、孫たちにお土産を渡して、また平和な日々が戻ってきた。

しばらくして、俺は監視カメラで佐々木の様子に気づいた。佐々木はT大卒のエリートで、支店から本社の課長として赴任してきた男だ。最初の挨拶から、わざわざ大学名を強調するような、嫌味なタイプだった。息子と同じ42歳だという。佐々木は高卒社員を見下し、パワハラも辞さなかった。事務員にセクハラまがいの言葉をかけ、業務中にも関わらず社員にコーヒーを買いに行かせる。自分の飲むコーヒーを経費で落とそうとする。そして、佐々木の机を中心に捉えた小さなカメラからは、パソコンでゲームをしている姿が映し出されていた。全くの給料泥棒だ。

俺は佐々木に対する対策として、さらに小さなカメラを業者に依頼して設置した。そして、佐々木の机の内線に頻繁に電話がかかってくることに気づき、事務員に調べてもらうと、それは佐々木の妻からの電話だった。佐々木は週に3日も家に帰っていないという。俺は佐々木の妻に電話をし、顧問弁護士と探偵を紹介した。探偵の報告は、さらにひどいものだった。佐々木はほぼ毎日キャバクラに通い、得意先の独身女性のマンションに入り浸っていた。佐々木の妻は、ゆっくり弁護士を挟んで話をした末、離婚を決断した。内容証明を送り、慰謝料と子供たちの養育費を支払わせることで話はついた。

そして、俺は息子に佐々木の不正な領収書を調べさせた。佐々木以外の営業担当に確認すると、誰もそのスナックの存在すら知らなかった。経費の不正使用は、3年分でかなりの金額になっていた。俺は顧問弁護士に損害賠償の書類を書いてもらい、解雇するための会議を開くことにした。

その日、俺は会議室に足を運んだ。営業社員だけが集まる会議だった。俺は佐々木の隣にそっと座った。一通りの成績発表が終わり、プロジェクターが消え、部屋が明るくなる。すると佐々木が俺の顔をじっと見つめ、「あんた部外者じゃないのか。会議は営業の社員だけで十分。じじいは出ていけ」と言い放ったのだ。俺の息子である社長が、その言葉を聞いて、すぐに佐々木の前に現れた。

「出ていくのは君の方だ」

佐々木は何が何だかわからない様子だった。火山部長も真っ青だ。社長の息子がそう言った時、俺は静かに席を立ち、会議室の正面に立った。マイクを握り、自己紹介をした。

「私は当社の会長である広坂刑事です。皆さんのご活躍で当社は順調に業績が伸びております。ですが、どうやら1人だけ、活動というような活動をしていない社員もいるようです。本日はそのお話に参りました。また、社員の皆さんからのパワハラやセクハラの相談も、火山部長や社長の方できちんと考慮いたしました。ご説明いたします」

俺はそう言って、息子に目で合図した。プロジェクターに映し出されたのは、佐々木が業務中にゲームをしている場面。その次は、社員たちへの暴言やセクハラと思われる言葉の数々。そして、不当な領収書数十枚。それを見ながら、佐々木は冷汗をかき、体が震え出した。

「今見ていただいたのは、この営業部での佐々木課長の姿と、佐々木課長以外の営業社員が知らない、不正と思われるスナックの領収書です」

俺がそう言うと、佐々木は「それは私が接待で使ったものですが」と言い訳した。俺は「本当に接待でしょうか?こちらでは全て調査済みです。ほぼ毎日のように君がキャバクラに通っていることも、自宅にほとんど帰っていないことも。これは絶対に認められません」と突き放した。

「佐々木君、君には会社への損害賠償を命じます。そして、真面目に業務をしていない証拠がある限り、今後当社で働いてもらうわけにはいかない。君は本日をもって解雇とする。そして、真面目に働いている社員たちに今すぐ謝罪しなさい」

火山部長が佐々木を正面に引っ張り出すと、佐々木は膝から崩れ落ち、土下座を始めた。「社員の皆様、会社、とても失礼な言動を、誠に申し訳ございませんでした」と。

会議室は静まり返った。5分ほど経った頃、俺は「佐々木君、顔をあげて立ってください」と言ったが、佐々木は立ち上がれない。火山部長が無理やり立たせた。俺は「では、すぐ事務所へ帰り、デスクの私物を片付けてこの会社から出て行きなさい」と言った。歩くこともままならない佐々木を、火山部長が事務所まで連れて行った。会議室は、その後拍手の嵐になった。

俺は社員たちに、今後とも活躍を期待していること、そしてその日の飲み会を開くことを伝えて、会議室を後にした。その後、社員たちは飲み会を楽しみ、佐々木がいないことで、元のアットホームな職場に戻った。佐々木は、奥さんに離婚され、貯金もなく、どこかの金融会社で借金をして、会社への損害賠償金は無事振り込まれたが、奥さんには家を無料で明け渡し、今は居所が不明である。

一方、俺は、平和になった、父から継いだ会社を見守りながら、孫の成長を楽しみにして、元気に会長を続けている。

Thumbnail