忙しい時期が終われば、この会社で働き続ける意味がある。そう自分に言い聞かせて、俺は地獄のような日々を乗り越えてきた。家にはほとんど帰れず、いつ寝たのかも分からない。それでも離職率が低いのは、この時期を乗り越えたら待っている休暇が特別だからだ。
今年もなんとか乗り切り、あとは休暇を待つだけになった。一人でゆっくりできる場所はないかとネットで調べていると、興味を引く温泉を見つけた。山奥にあり、人が訪れないというのだ。アクセスは悪いが、今は静かに過ごしたい。俺はそこに行くことを決め、近くの旅館も予約した。
休暇が始まり、車で山奥へ向かった。空気が澄んでいて、頑張ってよかったと思えた。温泉に到着すると、入口には簡易的な脱衣所があり、男女の区別すらない個室にロッカーが並んでいるだけだった。「まあ、人が来ないならこれで十分か」と、俺は一番手前のロッカーに服を入れた。周囲に誰もいないのを確認し、タオル一枚を持って野外温泉へ向かった。
温泉に着いた瞬間、声が聞こえた。女性の声だ。見ると、3人の女性が湯に浸かりながらこちらを見ていた。俺は驚いて固まった。やばい、何も隠していない。慌ててタオルで体を隠したが、ここは人が来ない温泉のはずだ。
すると、女性たちはクスクスと笑い出した。
「やっと男の人が来たよ。早くこっちに来なさいよ」
「このまま誰も来なかったらどうしようかと思った」
3人とも綺麗で、全裸だった。俺は視線をそらし、ここから出ようと思った。しかし、女性たちは湯から上がり、こちらに近づいてきた。逃げなきゃと思っても足が動かない。一人が俺の手を握ってきた。驚いてタオルを落とすと、女性たちは俺の下半身を見て言った。
「なかなかいいもの持ってるね」
「確かに立派だわ。早く楽しんじゃおうよ」
「いや、僕はそんなつもりは…」
「え、でも体はそのつもりっぽいけど」
「こ、これは反射的に…」
俺は必死に抵抗した。すると女性たちは顔を見合わせてまた笑い出した。
「真面目で可愛いじゃん」
「じゃあ、とりあえず自己紹介しようか。安心して、あなたがその気になるまで襲ったりしないから。まずは温泉を楽しみましょう」
そう言ったのは、俺のタイプの女性だった。ドキドキしながら黙って頷くと、彼女に手を引かれて温泉に入った。4人で縁を作るように座ったが、どこを見ても裸の女性がいる。下を向くことしかできなかった。
自己紹介が始まった。
「私はリカ。40歳よ」
「私はミサ。この前41歳になったばかり」
「で、私はセイコ。ミサと同じで41歳。よろしくね」
「はい、次はお兄さんの番だよ」
「あ、僕はスバルです。今年で32歳になります」
3人がじっと見てくるので緊張したが、話をしてみると意外といい人たちだった。彼女たちはなぜここに来たのかを教えてくれた。
「私たち、40歳を過ぎた頃から性欲が強くなったのよね。3人とも独身で彼氏もいないから、発散する場所がなくて」
「会社の同僚で、3人で飲んだ時に相手がいないねって話になって、探しに行っちゃおうかって」
「彼氏を作るっていうよりかは、やれる相手を探しに来たって感じかな」
「調べたらここを見つけたの。可能性が低いからこそ、捕まえた時の達成感があるなって思ってね。まさか男の人が来ると思わなかったから、最初は必死になっちゃってごめんね」
「それにスバル君はまだ若いから、私たちみたいなおばさんの相手をしてもらうのは申し訳ないよね」
リカさんにそう言われて、俺は否定したくなった。
「おばさんなんかじゃないと思います。3人ともとても綺麗ですし、そんな申し訳ないとか思わないでください」
3人は驚いた様子だったが、すぐに微笑んだ。するとリカさんが近づいてきて、直球で聞いてきた。
「じゃあ、スバル君は私とできる?」
「で、できますけど…」
「じゃあ、やろっか」
俺が頷くと、
「え、じゃあ私たちも混ぜてよ」
「せっかくならみんなで思い出作ろうよ」
俺はそんな器用な人間じゃないが、この場で断れるはずもなく、ただ頷くことしかできなかった。そうして俺のとんでもない経験が始まった。誰とキスをしているのか分からないような状態で、元気な体が入れ替わり立ち替わり襲ってくる。あっという間に限界を迎えそうになると、彼女たちはジャンケンで順番を決め始めた。順番はセイコさん、ミサさん、リカさんの順になった。本命のリカさんまで体が持つか心配だった。
セイコさんは作業的な行為を終えると、満足そうに「最高だった。登せそうだから先に上がって外で待ってるね」と言って出て行った。次にミサさんが来て、これも愛情を感じない行為だった。やりたいだけと言っていたから仕方ないが、なんだか虚しかった。
そして最後に、俺とリカさんだけが残った。
「なんか2人だけになっちゃったね」
顔を赤くしてそう言う彼女に、俺は素直に伝えた。
「僕はリカさんとしたかったです」
そう言ってキスをした。さっきまでの作業的な行為とはどこか違う気がした。リカさんだって俺に恋愛感情はないはずなのに、不思議な感じだった。時間をかけて、2人で果てていった。
一気に3回戦も交えた俺は、全身の水分がなくなった気分だった。2人で休憩し、一緒に湯場を出た。服を着て駐車場へ向かうと、2人が待っていた。
「ねえねえ、3人の中で1番誰が良かったの?」
セイコさんがいきなり聞いてきた。
「だってスバル君の本命を聞いておかないと。もし私たちの中でスバル君のことを本気で好きになったら、めんどくさいことになりそうでしょ。だからもう1度できるなら、誰としたいか聞いておきたいな」
「隠さないで正直に言っていいんだよ。選ばれなかったら、また他の人を探せばいいだけの話だし」
ミサさんの言葉に、俺は素直に答えた。
「リカさんですかね」
リカさんは顔を赤くして照れていた。すると、リカさん以外の2人は俺たちを後押しして、連絡先を交換させてくれた。3人は本当に仲がいいんだなと思いつつ、その日は解散し、俺は旅館へ向かった。
旅館に着くと、その日の晩に早速リカさんから連絡が来た。
「私のことを選んでくれてありがとうね」
「僕は最初からリカさんがいいと思っていたので、今度は2人でゆっくりしましょう」
俺たちは頻繁に連絡を取り合うようになり、1ヶ月後に再会した。久しぶりに見る彼女はやっぱり綺麗で、一目見ただけでドキドキした。ドライブや食事など、普通のデートを重ねるうちに、彼女と一緒にいる時間は本当に楽しくて幸せだと感じるようになった。夜にはホテルで愛し合うこともできた。
3ヶ月ほど経った頃、俺はリカさんのことを完全に好きになっていた。見た目だけでなく、内面も大好きになっていた。ある日のデートで告白すると、彼女は嬉しそうに微笑みながら話してくれた。
「スバル君が温泉に来た時、私たちがすぐに声をかけたでしょう。あの時すぐにやっていたとしたら、多分連絡先を交換していなかったと思う。あの時は欲求を満たしたかっただけだったから。でも、スバル君はためらったから、互いのことを知ることができたでしょう。勇気を出しておばさんじゃないって言ってくれたしね。意外とあれすごい嬉しかったんだよ。この年になると、女性として見られることも少なくなるからね。あと、スバル君は私とやる前に私としたかったって言ってくれたでしょう。あれも特別な気がして嬉しかった。心の中では私のことを選んでくれなかったらどうしようって焦ってたんだけど、ちゃんと私のことを選んでくれた。私もスバル君のことすごく好きだったから、本当に今嬉しくて幸せだよ」
彼女は俺の告白を受け入れてくれた。
交際が始まり、週1のデートを欠かさなかった。距離はあるが、その分メッセージや電話で寂しさを埋め合っていた。しかし、会社の繁忙期がやってきた。リカさんには事前に伝えていたが、会えない期間に耐えられるか不安だった。話し合った結果、彼女に合鍵を渡すことにした。
「週末なら私は暇してるし、スバル君の寝ている姿を見ているだけで幸せだから、できれば会いに行きたいな。必要ならご飯も作っておくしね」
深夜に帰る時は彼女に会うことができ、ほんの少しの時間でも彼女を抱きしめて眠ることが唯一の幸せだった。彼女が作ってくれた料理のおかげで、俺は仕事を頑張ることができた。この繁忙期で、彼女と結婚したいという気持ちが一層強くなった。
俺は彼女にバレないように指輪を買い、繁忙期が終わった後の休暇で旅行に行き、プロポーズすることにした。旅行当日の夜、宿泊先の温泉旅館の部屋で、俺は指輪を渡す用意をした。
「あの、リカさんちょっといい?」
「え? どうしたの?」
「この繁忙期を乗り越えられたのはリカさんのおかげだと思ってる。俺のことを支えてくれて本当にありがとう。それで今度は僕がリカさんを支える番だって思ったんだ」
「え、それって…」
「これからもリカさんとずっと一緒にいたいと思ってます。だから僕と結婚してください」
リカさんは目に涙を浮かべて微笑んでくれた。
「大変な時はお互いに支え合っていくものでしょ。だからこの先も私はスバル君のことを支えていくつもりだよ。好きな人の活力になれるなら何だってしたいと思う。私もスバル君と結婚したい。だからこれからもよろしくお願いします」
プロポーズは成功し、俺は彼女を一生幸せにしていくんだと決めた。すぐに結婚の準備を始め、両家への挨拶も済ませ、俺たちは夫婦になった。その後も互いに支え合い、愛し合いながら生活していった。あっという間に結婚して8年が経ったが、今でも俺たちは仲良く幸せな毎日を過ごしている。
ミサさんとセイコさんも、俺たちが結婚した時期に新しい彼氏ができたらしい。2人がいなければ、俺たちは結婚できていなかったかもしれない。初めて会った時はどうなってしまうのかと思ったけど、今ではあの3人に出会えて本当に良かったと思っている。これからも感謝の気持ちを忘れずに、リカと支え合って生きていきたい。


