お見合いの席で、天使のような女性に出会った。写真が趣味で、笑顔が可愛くて、人生で初めて恋をした。なのに、弟の一言で全てが崩れ去った。「西条さん、右足が義足なんだよ」。彼女は泣き崩れ、そして真実を知った。俺の父親は、彼女のことをビジネスの道具にしようとしていた。彼女を守るために選んだ道、それは俺から別れを告げることだった。最愛の人の前で、俺は言った。「ごめんなさい。俺が間違っていました」それか…

お見合いの席で、天使のような女性に出会った。写真が趣味で、笑顔が可愛くて、人生で初めて恋をした。なのに、弟の一言で全てが崩れ去った。「西条さん、右足が義足なんだよ」。彼女は泣き崩れ、そして真実を知った。俺の父親は、彼女のことをビジネスの道具にしようとしていた。彼女を守るために選んだ道、それは俺から別れを告げることだった。最愛の人の前で、俺は言った。「ごめんなさい。俺が間違っていました」それか...

「父さん、どうして黙っていたんだ?西条さんが義足だってことを!」

社長室のドアを乱暴に開け、俺は怒り心頭で父に詰め寄った。父は顔色ひとつ変えず、書類から顔も上げずに言った。

「やかましいぞ。それがどうした。西条の娘が義足で、お前に何の関係がある?」

俺の名前は柚月一、29歳。平凡なアパレルメーカー社員だ。唯一、周りと違うのは、実の父親が会社の社長だということ。俺は生まれた時から父の言いなりで、会社を継ぐための英才教育を受けてきた。自由な結婚なんて許されるはずもなく、父が持ち込んだお見合い相手が、この西条さんだった。

お見合い当日、高級レストランの個室で、俺は緊張でガチガチだった。相手は写真で見ただけでも圧倒される絶世の美女。まさか、こんな相手が俺の見合い相手だなんて。俺みたいな平凡な男には釣り合わないと思った。だが、実際に会った彼女は、写真以上に美しく、そして優しかった。

「もしかして、すごく緊張されていますか?」

彼女がくすっと笑う。その瞬間、雷に打たれたような衝撃が走った。

「あ、はい。緊張しています。すごく」

「天使だと思いました」

思わず口にした本音に、彼女はますます笑う。それから、写真が趣味だと話すと、彼女は目を輝かせて「私もです」と言った。人生で初めて女性からデートに誘われた瞬間だった。

それから何度かデートを重ね、俺はすっかり彼女に恋をしていた。弟の浩司に「それは恋だろ」と言われるまで、自覚すらなかったほどだ。父の言いなりで会社を継ぐのも、こんな出会いがあるなら悪くないと思い始めていた。

彼女との何度目かのデートの帰り道。俺たちはすっかり打ち解けて、写真の話に花を咲かせていた。そんな時だった。

「よう、兄貴。デートは楽しんでるか?」

突然現れたのは、弟の浩司だった。そして、彼は西条さんの顔を見るなり、軽い調子で言った。

「やだなあ、西条さん。よそよそしくない?俺たち同級生なのに。え、あれ?兄貴には言ってなかったんだ?」

彼女の顔色が一瞬で曇る。浩司は追い打ちをかけるように、彼女の足元に自分の財布を放り投げた。

「おっと、ごめん。手が滑っちゃった。拾ってくれない?西条さん」

彼女は一瞬ためらい、そして妙に丁寧な動作でしゃがみ込んだ。右膝を立てるような、あまりスカートでは見ない姿勢で。その瞬間、浩司が俺に言った。

「西条さん、右足が義足なんだよ。2年の終わりに事故で」

俺は衝撃のあまり、その場に立ち尽くした。彼女は顔を覆って泣き出した。浩司は冷ややかな目で彼女を見下ろしていた。

「こじ、お前、どういうつもりだ?」

「どうして親父が兄貴たちを結婚させたいのか、俺は知ってるよ」

お見合いを破棄すると父に告げると、父は激昂した。

「バカ者!お前たちはもう婚約済みだ。義足だからという理由で解消するだと?恥ずかしいとは思わないのか!」

「父さん、はっきり言えばいいのに。もう俺は知ってるんだよ。義足の西条さんをビジネスに利用しようとしていることを」

そう告げると、父の顔色がわずかに変わった。浩司が教えてくれたのだ。父が近いうちに福祉関係の新事業を展開しようとしていて、西条さんの義足で美人という容姿を広告塔にしようとしていることを。

俺は彼女に別れを告げることにした。彼女を父の道具にさせないためだ。メッセージを送り、最後に一度だけ会ってもらうことにした。

「私が義足だと知った途端、みんな離れていくんです。恋人も友達も。だから、今日は覚悟してきました。何を言われても大丈夫です」

彼女はさっぱりした顔でそう言った。何度も裏切られて、期待することを諦めた人の顔だった。そして、彼女は全てを話してくれた。両親から「恥ずかしいから外に出るな」と家に閉じ込められていたこと。自分は「西条家のお荷物」だと言われてきたこと。お見合いは、そんな両親から逃げるための唯一の方法だったこと。

「けど、途中からそうじゃなくなったんです。あなたといる時だけ、私は自分が義足だってことを忘れられた。大好きです。一さん」

彼女の告白を聞いて、俺は決意を固めた。彼女を守るのは、父でも、彼女の両親でもない。俺だ。

「ごめんなさい。俺が間違っていました。絶対にあなたを不幸にはしません。だから一緒に来てほしい」

俺は彼女の前に膝をつき、手を差し出した。

「もしあなたが義足の自分を嫌いになる時が来たら、その時は俺があなたの足になります。あなたの自由でいいんだ。好きなものも、行きたい場所も。その自由を俺が守りたいんです。だから俺と逃げてくれませんか?」

彼女は泣きながら、震える手を俺に重ねた。

それから数年後。俺たちは二人で義肢や義足を制作する会社を設立した。彼女と同じ境遇の人に、再び生きる希望を持ってほしいという願いを込めて。父の会社は浩司が継ぎ、父や彼女の両親の問題もうまく収めてくれた。彼女は時々、浩司が助けてくれることに対して焼きもちを焼くことがあるが、そのたびに彼女は笑って言う。

「一さんが言ってくれたでしょ。私の自由でいいって。だから、ずっと一さんだけを好きなのも私の自由なの」

生まれる場所は選べない。それに将来を決めつけられながら育ったけれど、思い切って飛び出した時、そこには自由な未来が待っていた。あの時諦めていれば、決して見ることはできなかった未来だ。最愛の妻と、俺はこれからも幸せに暮らしていく。

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