診察室の窓から、朝の光が畳の上に長く伸びていた。海の匂いが開け放たれた窓から流れ込んでくる。この町の朝は、いつも海から始まる。
最初の患者は、漁師の妻である宮原さんだった。膝の痛みを訴えて、月に二度ほど通ってくる常連だ。
「先生、また膝がね。雨が近いとわかるよ」
「昨日は孫さんが来てたんだろう? 抱っこしすぎたんじゃないか」
「あら、やだ。なんで知ってるの?」
宮原さんは笑った。俺は膝の腫れ具合を見ながら、当てずっぽうが当たったことに内心ほくそ笑んだ。最後に旦那の体調の話を聞いて、診察を終えた。
俺の名前は田島。四十五歳。この海沿いの町で診療所を営んでいる。先代の父の代から数えれば、もう五十年近くになる。
宮原さんが帰ると、入れ替わるように一人の女性が診察室に入ってきた。白い襟がピンと張っていて、立ち姿がまるで紋切型の教科書から抜け出してきたかのようだった。大学病院から研修に来た、梶木美里だ。
「梶木美里です。今日からお世話になります」
「ああ、聞いてるよ。東京の大学病院からだったね」
「半年間、よろしくお願いいたします」
頭の下げ方も立ち姿も、絵に描いたように完璧だった。ただ、目だけが少し冷たい。診察室の中をぐるりと見回し、古いカルテや年代物の血圧計、棚の上に置かれた錆びた聴診器を、一つ一つ値踏みするような目つきだった。
「先生、CTはどちらに?」
「うちにはないよ。必要な時は隣町の総合病院に紹介する」
「そうですか」
返事の間が、ほんの一泊長かった。
午前中、俺は十五人ほど診た。熱が下がらないという子供。嫁との喧嘩で眠れないと訴える女性。病気の話と暮らしの話と世間話が、診察室の中に混ざり合う。梶木は俺の後ろでずっと黙ってカルテを見ていた。時々、眉が少し動いた。
午後の往診の帰り、車のハンドルを握りながら助手席の梶木に声をかけた。
「お父さんも医者だったそうだね」
「聞いてたんですか?」
「紹介状に書いてあった。地方の診療所でずっとお一人でやってらしたとか」
梶木は少しだけ窓の外を見た。遠くで漁船が一そう、ゆっくりと港へ戻っていく。
「父はよく言っていました。患者の心まで見られる医者になれ、と」
「いい言葉だ」
「正直、意味はよくわからないままでした。心は見るものじゃなくて聞くものでしょ。私たちが見るのは数字とデータです」
俺は何も言わず、ハンドルを切った。診療所の建物が視界に入ってくる。
それから三日ほど経った午後だった。田所洋一郎さんが、息子に付き添われて診察室に入ってきた。元造船所の職人で、定年してからも町内会の世話役をやっている人だ。
「先生、親父が最近どうもおかしくて。同じ話を何度もするし、言葉も出にくくて」
「いや、そんなことはない。ああ、その、あれだ。あれ、なんだったかな」
田所さんは笑いながら、もどかしそうに手を動かした。息子は深いため息をついた。背後で梶木が小さくメモを取り始める。
「失礼ですが、物忘れが始まったのはいつ頃からですか?」
「一ヶ月くらい前です。かみさんも心配していて」
梶木のペンが「認知症疑い」と書くのが、視界の隅に入った。俺は田所さんの隣に椅子を寄せて、正面から向き合った。
「田所さん、今日の朝飯は何だった?」
「朝飯か。うちのがな、その、味噌汁とな、それからあの、白い、ほら、ご飯か。そう、それだ」
田所さんは答えようとしている。思い出せていないのではない。言葉と口がうまく動いていないのだ。俺は黙って田所さんの口元と右手を見ていた。
「田所さん、ちょっと字を書いてみてくれるか? 名前でいい」
紙とペンを渡した。田所さんは少し戸惑った顔をしたが、ペンを握って書き始めた。右手が小さく震えている。線がかすれ、最後の一画が紙の外まで流れた。
「もう一度、左手で書いてくれるか?」
左手で書いた字は、震えてはいたが最後まで紙の中に収まっていた。
「いつもは右利きだろ? 最近、箸や茶碗を落とすことはないかな?」
「そういや、この前、茶碗をな……」
「親父、そうだったのか!」
梶木がペンを止めて顔を上げた。じっと田所さんの右手を見ている。さっきまでとは、明らかに違う目だった。
「息子さん、悪いが隣町の総合病院に紹介状を書く。明日にでもCTを取ってもらってほしいんだ」
「先生、認知症じゃないんですか?」
「認知症だけなら、字の形は崩れない。右手だけに力が入らないってのは、別の話だ」
田所さん親子が帰った後、診察室には俺と梶木の二人だけが残った。梶木は田所さんの描いた字をじっと見ていた。
「先生、なぜ字を書かせたんですか?」
「字は嘘をつかない。本人が気づいていない不調が、線の震えに出るんだ」
「問診表では、何も分からなかったと思います」
「だから、書いてもらった。それだけだよ」
梶木は何かを言いかけて、やめた。窓の外で海猫が一声、長く泣いた。
それから五日後の朝だった。総合病院の脳神経外科から電話が入った。田所さんのCTに、小さな脳腫瘍が映っていた。場所も大きさも、早期と言える段階だった。
その日の夕方、息子さんがお礼の品を持って診療所に来た。
「先生、手術が来週に決まりました。早く見つかったから、命に別状はないって言われました」
息子さんは何度も頭を下げて、目を赤くしていた。帰っていく後ろ姿を見送ると、梶木が俺のそばに来て、小さな声で言った。
「先生。私、田所さんを最初に見た時、認知症だと決めつけました。問診表と家族の話と年齢と、それだけで判断していたんです」
「最初はみんなそうだよ。教科書通りに見れば、その方が早い」
「でも先生は、『見ろ』と言いました。茶碗を落としたかと聞きました。私には、その発想がなかったんです」
梶木は少し俯いた。
「父が言ってた言葉の意味、少しだけ分かった気がします」
「少しでも分かれば上等だ。私だって、今でも分からんことだらけだよ」
俺は窓を開けた。夕暮れの塩風が診察室の中に流れ込んでくる。棚の上の写真立てが風で少しだけ揺れた。その中で、亡き妻のさおりがいつもと同じ顔で笑っていた。
田所さんの一件があってから、梶木の様子が少しずつ変わっていった。朝の挨拶の声が、前より少しだけ柔らかくなった。
ある日の昼下がり、診察室の扉が勢いよく開いた。入ってきたのは、町の食堂「港」の女将、西城ケイ子さんだった。前掛けをしたまま、片手で腰を抑えている。
「先生、また腰がね。もう、本当に参っちゃって」
「立ちっぱなしの仕事だからな。今日は店休みか?」
「昼の客がはけたから、ちょっとだけ抜けてきたの」
俺は椅子を進めた。ケイ子さんは大きな体をゆっくり下ろし、腰を叩きながら笑った。笑い声はいつも通り明るかった。ただ、頬の輪郭が前より少し細くなっていた。
「最近、飯はちゃんと食ってるのか?」
「食べてるわよ。でもね、なんか味が分からなくなることが増えてさ。年かしらね。もう五十超えたし」
俺はケイ子さんの顔をじっと見ていた。血色が悪い。目の白いところに、ほんの少しだけ黄ばみが刺している。
「ケイ子さん、ちょっと腹見せてくれるか?」
「え、腰痛なのに」
「いいから」
ケイ子さんは腹を出した。俺は手の裏も見せてもらった。血の色が薄い。
「最近、体重減ってないか?」
「そういえば、前掛けの紐が一つ緩くなったかも」
「便の色はどうだ?」
「ちょっと先生、何聞くのよ」
ケイ子さんは笑ったが、俺は笑わなかった。ペンを置いて、ゆっくりと言った。
「血液検査と便の検査をさせてくれ。それから、隣町で大腸の内視鏡を受けてほしいんだ」
「腰なのに、お腹を見るの?」
「腰のことは、それからでいい」
ケイ子さんは少し戸惑った顔をしたが、俺の目を見て頷いた。長い付き合いだからこそ通じる何かがあった。
ケイ子さんが帰った後、梶木が小さな声で聞いた。
「先生、腰痛で来た患者さんになぜ大腸の検査を?」
「顔色だよ。痩せ方もただの夏バテじゃない。腰の痛みだって、本人が長年の持病だと思い込んでるだけで、別の原因があるかもしれない」
「思い込みですか?」
「患者も医者も、思い込みが一番怖い」
梶木は何かを言いかけて、自分の手元に視線を落とした。
検査の結果が出たのは、十日ほど経った頃だった。大腸の入り口近くに、小さな腫瘍が見つかった。幸い、初期の段階だった。手術は無事に終わり、ケイ子さんは二週間ほどで食堂のカウンターに戻ってきた。
退院の翌週、ケイ子さんは旦那と娘を連れて診療所に来た。手土産には、店で炊いた赤飯が入っていた。
「先生、私、腰が悪いと思っていたのよ。本当に先生に見つけてもらえなかったら、今頃私、どうなってたか」
娘さんはずっと頭を下げていた。旦那さんは何も言わず、目を赤くしていた。
ケイ子さん一家が帰った後、梶木はぽつりと言った。
「教科書には、こういう瞬間のことは書いてありませんでした」
夏の盛りが過ぎた頃、漁師の浜岡道夫さんが健康診断にやってきた。五十八歳、現役の漁師で、町で一番の働き者と言われている。日に焼けた顔、太い腕、声も大きい。
「先生、俺は病気なんかしたことはないよ。うーちゃんがうるさいから来ただけだ」
「それは何よりだ。じゃあ、軽く見させてもらうよ」
血圧、脈、心音、どれも年齢の割に良かった。俺は聴診器を胸から背中に当てた。浜岡さんが合間に、小さく咳払いをした。その咳払いが、少しだけ気になった。ケホンと切るような音ではない。喉の奥で何かを払うような、湿った音だった。
「浜岡さん、最近咳が増えてないか?」
「ああ、たまーにな。タバコのせいだろう。四十年も吸ってるからな」
「網を引く時、息が上がることは?」
「そりゃ、網を引き上げりゃあな。年のせいだろう」
浜岡さんは笑った。俺はもう一度、背中の上の方に聴診器を当てた。右の肺の上の方で、ほんの僅かに雑音が混じる。普通なら聞き流す程度の、かすかな音だった。
「浜岡さん、レントゲンを取らせてくれ。それと、隣町でCTを取ってほしい」
「先生、大げさだろう。俺は本当に何もないんだよ」
「念のためだ。漁師の体は、町の宝だからな」
浜岡さんは渋ったが、奥さんに押し切られて隣町の病院に行ってくれた。結果は、肺の右上に小さな影だった。肺癌の、ごく初期だった。手術で取り切れる範囲だと、向こうの医者から連絡があった。
知らせを受けた日の夜、浜岡さんが診療所に一人で訪ねてきた。作業着のまま、帽子を手に持っていた。
「先生。俺は自分の体のことは、自分が一番分かっているつもりだった。咳払いなんざ、誰だってするだろう。それを聞き分けるなんて、思いもしなかった。あんたはすげえよ」
浜岡さんは深く頭を下げて、帰って行った。梶木は戸口で、その背中を見送っていた。
「先生。私、聴診器で同じ音を聞いていました。でも、雑音だと思って流したんです」
「最初はそれでいい。何度も聞いて、何度も外して、それで分かるようになる」
「先生は、何度外したんですか?」
「数えきれんよ。だから今、こうして聞こえるんだよ」
梶木は自分の聴診器を胸の前で握りしめた。
季節が秋に変わる頃、梶木の様子に小さな変化が出始めた。最初に気づいたのは、診察の途中だった。立ち上がる時、机に手をついてゆっくり起き上がるようになった。階段の踊り場で一度立ち止まり、息を整える姿も見た。カルテに書き込む手からペンが滑り落ちることが、二度三度続いた。
「すみません。寝不足で。慣れない土地で、つい夜更かしを」
「無理はするな。代わりはいくらでもいる」
「大丈夫です。父も、こうやって働いていましたから」
梶木は笑って見せたが、目の下の影は濃くなる一方だった。
ある朝、診療所の前で梶木を見かけた。門の柱に手をついて、肩で息をしていた。俺が声をかけると、姿勢を直した。
「ちょっと、坂を上がるのがしんどくて。運動不足ですね」
「梶木先生、一度血液検査をしておこう」
「先生、大丈夫です。本当に過労なんです」
梶木はそう言って、診察室に入っていった。俺はその場で動けなかった。その姿が、十年前のさおりと重なった。
さおりも最初は「疲れただけ」だと言っていた。階段で立ち止まり、笑ってごまかしていた。俺はそれを信じてしまったのだ。忙しさを理由に、見ないふりをしてしまった。
診察室の窓から海が見えた。波の音が、いつもより低く聞こえた。棚の上でさおりの写真が、いつもと同じ顔で笑っていた。俺はその写真を長いこと見つめていた。気のせいであってほしかった。もう一度あの病気と向き合うことになってほしくなかった。
それでも、医者として見て見ぬふりはできなかった。あの時の後悔を、もう一度繰り返すわけにはいかなかった。
窓の外で海が、長く長く鳴っていた。
その朝の空気は、いつもより少し冷たかった。梶木はいつものように白衣を羽織って、診察室に立っていた。最初の患者が帰り、次の患者を呼ぼうとした時だった。
梶木が机に手をついたまま、動かなくなった。ペンがカルテの上を転がって、床に落ちた。
「梶木先生!」
呼んだ時には、もう間に合わなかった。梶木の体がゆっくりと床に崩れ落ちた。受付の事務員が悲鳴を上げた。俺はすぐに駆け寄り、脈を取り、呼吸を確かめた。意識はあった。ただ、俺を見つめて何かを言おうとして、言えなかった。
「先生、ごめんなさい。私……」
「喋らなくていい。今運ぶからな」
救急車を呼び、隣町の総合病院へ運び込んだ。俺はただ、梶木の手の上に自分の手を置いていた。検査が始まり、長い時間が過ぎた。夕方、担当医から呼ばれた。
進行性の難病だった。病名を聞いた瞬間、俺は凍りついた。さおりと同じ病気だった。
「先生、お辛いとは思いますが」
「わかりました。本人には、私から話します」
病室に戻ると、梶木はベッドの上で天井を見ていた。点滴の滴が細く揺れていた。俺は椅子を寄せて座った。すぐには言葉が出なかった。
「先生、何の病気ですか?」
「正直に話す。神経の難病だ。治療法はあるが、完治は難しい」
「私、医者は続けられますか?」
「続けられる。ただ、今までと同じようにはいかないだろう」
梶木は天井を見たまま、動かなかった。やがて目尻から涙が一筋、流れていった。
「父との約束、果たせないかもしれませんね。東京に戻ってもっと大きな仕事をして、そう思って医者になったのに。体が動かなくなったら、私は何のために……」
俺は何も言えなかった。
数日後、俺は診療所の奥の引き出しから、一通の古い封筒を取り出した。さおりが亡くなる少し前に書いた手紙だった。十年間、一度も誰にも見せたことはなかった。
その日の午後、病院の個室で俺は梶木の枕元に座った。ゆっくり話し始めた。
「私の妻の話を、少しだけしていいか?」
「先生の、奥様の」
「さおりと言ってな、看護師だった。この診療所で、私と一緒に働いていた」
俺はさおりと出会った頃のことから話した。往診の帰りに海辺で握り飯を食べたこと。さおりが患者一人ひとりの誕生日を覚えていたこと。さおりが倒れたのは、三十八の春だった。診断は、今の梶木と同じ病気だった。
「さおりは、動けなくなるまで診療所に出続けた。看護師の仕事ができなくなってからは、受付に座って患者と話をしていた。私はやめろと言った。休めと言った。さおりは首を振ったんだ」
梶木は目を閉じて聞いていた。頬を涙が静かに伝っていた。
俺は封筒を開いた。便箋を広げ、震える声で読み上げた。そこにはさおりの字でこう書かれていた。
「先生へ。私の体はもうすぐ動かなくなります。でも、私の代わりにいつかこの診療所に、誰かが来てくれる気がしています。その人にも伝えてください。医者の仕事は、病気を治すことだけじゃない。患者さんの人生の隣に座ることなんです。私は最後までそれができて、幸せでした」
読み終えて、俺は便箋を畳んだ。梶木は枕に顔を埋めて、肩を震わせていた。俺はただ、そばにいた。
その日の夕方、廊下を歩く足音が聞こえた。看護師が病室の扉を叩いた。
「先生、お見舞いの方が」
扉が開いた。廊下に立っていたのは、田所さんとケイ子さんと浜岡さんだった。三人とも、よそ行きの服を着ていた。田所さんは自分で書いたという見舞いの色紙を抱えていた。
「先生、ほら、字が書けるようになったよ。手術してもらってから、ちゃんとかけるんだ」
「先生、これね、店の赤飯。食べられる時に、少しずつでいいから」
浜岡さんも声を出した。
「まだ海に出てるよ。先生のおかげで、孫と魚を釣りに行けたよ」
三人は口々に話した。梶木はベッドの上で身を起こし、一つ一つの言葉に何度も頷いていた。涙が溢れていた。田所さんが最後に色紙を差し出した。そこには、こう書かれていた。
「先生、俺たちの番です。先生を、俺たちが見ます」
ケイ子さんがぽろぽろと泣き出した。俺はその光景を戸口から見ていた。胸の奥が熱くなった。
季節が二度変わった。冬を超え、春が来た。桜のつぼみが診療所の前の坂道にぽつぽつと開き始めていた。梶木は治療を続けている。歩く速さは前より少し遅くなった。それでも、働いている。東京の大学病院から戻ってこないかという話があったらしい。研究職なら体への負担も少ないと、向こうの教授が言ってきたそうだ。梶木は丁寧に断ったと聞いた。
ある日の昼、診察の合間に梶木が俺のところに来て言った。
「先生、父の言葉の意味が、ようやく分かった気がします。父は『病気を見ろ』と言っていたんじゃなかったんです。『人を見ろ』と言っていたんです。暮らしを、検査じゃなくてその人の一日を」
「お父さんは、いい医者だったんだろうな」
「はい。私もそうなりたいんです。この町で」
その日の午後、診療所の前が賑やかになった。田所さんが孫を連れて散歩に来ていた。ケイ子さんが店から赤飯を運んできた。浜岡さんは釣ったばかりの鯛を新聞紙に包んで持ってきた。その輪の中心に、梶木が立っていた。
俺は診察室の窓からその光景を見ていた。棚の上の写真に目をやった。さおりがいつもと同じ顔で笑っていた。
さおり、見えるか? 声には出さず、心の中で呼びかけた。海から春の風が吹いてきた。窓のカーテンがふわりと揺れた。写真が少しだけ傾いて、また元に戻った。梶木の笑い声が聞こえてきた。田所さんの孫のはしゃぐ声も混じっていた。



