新居に引っ越したその日、私は我が家の庭で恐怖に凍りついた。そこには高校時代から私を馬鹿にし続けてきたママ友・タエと、その取り巻きたちが、まるで自分の家のようにパーティーを開いていたのだ。「あなたは新築パーティーに招待していないんだけど。残り物でも食べに来たの?」彼女の言葉に、私は「ここは私の家です」と必死に訴えたが、彼女は大笑いするだけだった。「苦し紛れにも程があるわ」。夫が駆けつけるまで、…

新居に引っ越したその日、私は我が家の庭で恐怖に凍りついた。そこには高校時代から私を馬鹿にし続けてきたママ友・タエと、その取り巻きたちが、まるで自分の家のようにパーティーを開いていたのだ。「あなたは新築パーティーに招待していないんだけど。残り物でも食べに来たの?」彼女の言葉に、私は「ここは私の家です」と必死に訴えたが、彼女は大笑いするだけだった。「苦し紛れにも程があるわ」。夫が駆けつけるまで、...

その日、私はようやく念願のマイホームに引っ越すことになった。娘をチャイルドシートに乗せ、新しい家の歌を上機嫌で歌う彼女の声を聞きながら、私はハンドルを握っていた。子供の頃から建築士になるのが夢で、自分で設計した家に住むことこそが私の目標だった。夫の達夫の協力もあって一級建築士の資格を取り、この土地を見つけた時から、図面はすべて自分で引いた。防音室も、バーベキューができる庭も、すべて私の設計だ。

ところが、新居の駐車場に車を入れようとした瞬間、私は強くブレーキを踏んだ。

庭に見知らぬ高級車が止まっている。そして、なぜか見覚えのある女性たちの姿があった。タエさんだ。高校時代から私に張り合ってくるセレブママ。そして、その周りにはいつものセレブママ軍団がいる。

「嘘でしょ?なんでここに瞳さんがいるのよ。あなたは新築パーティーに招待していないんだけど。残り物でも食べに来たの?」

私は言葉を失った。なぜ私の家の庭で、私がこんな暴言を浴びせられなければならないのか。娘は不安そうに私にしがみついてきた。

「ここは私の家です」

ようやく絞り出したその言葉に、タエたちは一瞬静まったが、すぐに大爆笑に変わった。

「苦し紛れにも程があるわ。みんなに責められすぎて頭おかしくなったんじゃないの?」

そこへ、夫の達夫が戻ってきた。彼は状況を見て、鋭い目つきでタエたちを見つめた。

「あなた達、我が家に何の用ですか」

娘は泣きながら達夫に抱きついた。「このおばちゃんたちが、私たちのお家を壊そうとしてくるの」

タエは一歩も引かずに言い放った。「達夫君、覚えてる?瞳さん、仕事のしすぎで病んじゃってるみたいなの。私の家に来て、ここは自分の家だって言い張ってるのよ。ちゃんと病院で見てもらった方がいいわ」

しかし達夫は淡々と返した。「悪いが君のことは全く覚えていないし、瞳は病んでなんかいない。この家を設計できるくらいには頭はさえているよ」

そう、私の職業は建築士だ。この家は、私が設計した世界に一つだけの家。

タエは自分が不利になったと悟ったのか、黙り込んだ。そこに、息を切らした男性、タエの夫が駆けつけてきた。

「あなた、ここは私たちの家よね。そうよね?」

タエは夫に確認するが、彼は首を振った。「そんなわけないだろう。まだ我が家は打ち合わせ段階から進んでいないじゃないか」

タエは叫んだ。「ここは私の家なのよ!あんたの家だと言うなら倍の金額払うから今すぐ売りなさいよ」

しかしタエの夫は無理やり彼女を車に乗せ、セレブママ軍団を連れて去っていった。

事件はそこで終わらなかった。パラホームに電話をすると、担当者が心当たりがあるようで、その晩、担当者とタエの夫が謝罪に来た。

「申し訳ありませんでした。まさか本気でこの家を自分のものにしようと思っていたとは」

話を聞くと、タエはパラホームで家を建てようとしていたらしい。しかし担当者の不手際で、私たちの家の図面と工事中の写真がタエの目に入ってしまった。それ以来、タエは「これと同じ家にしろ」と言い張り、打ち合わせにも一切参加しないまま、私たちの家を自分のものにしようと考えたのだ。

さらに、タエはどうやって家の中に入ったのか。タエの夫に問い詰めると、施工業者が家具を運び込んでいる隙に玄関に置いてあった鍵を持ち出し、スペアキーを作っていたらしい。運び込まれた食器や家電も、「瞳さんからの引っ越し祝いでもらうつもりだった」と白状した。

警察に相談したが、現行犯ではないため立証が難しく、突き出すのは諦めた。しかしパラホームからは情報漏洩の謝罪として、新しい案件をいくつか紹介してもらうことができた。タエの夫からも謝罪の品が届いた。

その後、タエはセレブママ軍団の間で「暴走ママ」というレッテルを貼られ、全員から距離を置かれた。息子の入学予定だった有名小学校にも噂が広まり、入学を断られたらしい。

春休みを経て、娘の入学式。大きな赤いランドセルを背負った娘と手をつないで小学校に向かうと、そこにはタエの姿があった。タエの息子は有名小学校への入学を断られたため、娘と同じ小学校に通うらしい。

タエは私を見つけると、いきなり言いがかりをつけてきた。「あなたがあの時、家を売ってくれなかったから、未だに私たちの家が立たないんだけど」

話を聞くと、なんとか打ち合わせをして構想は決まったらしいが、材料の入荷が滞っており、完成の目途が立っていないらしい。タエが何か無茶を言って担当者を困らせているのだろう。そんな自分勝手なタエに愛想を尽かしたのか、旦那さんからは離婚の話も出ているらしい。

でも、今の私にはそんなことよりも大切なことがある。

「新しいお家に、赤ちゃんが生まれるんだよ」

娘は嬉しそうに言う。私たち家族には新しい命が授かったのだ。

「そうね。お姉ちゃんになるのを楽しみにしてる?」

「うん!」

娘の笑顔を見ながら、私は思う。あの日の恐怖や怒りはすっかり消え去り、今は夫婦円満で、新しく始まる家族の生活に胸が弾んでいる。これからも、こんな幸せな日々が続いていけばいいと心から願っている。

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