「中卒がアルバイト以外できるわけねえだろ。」 そう言って笑ったのは、人事部長の息子で同じアルバイトの恵太さんだった。俺は17歳で中卒、両親を失ってからこの会社で必死に働いてきた。店長は正社員にしてやると言ってくれていたのに、彼の言葉をきっかけにすべてが壊れ始めた。 それから1週間後、本社の部長が突然店に来て言い放った。「君は首だ。」…

「中卒がアルバイト以外できるわけねえだろ。」 そう言って笑ったのは、人事部長の息子で同じアルバイトの恵太さんだった。俺は17歳で中卒、両親を失ってからこの会社で必死に働いてきた。店長は正社員にしてやると言ってくれていたのに、彼の言葉をきっかけにすべてが壊れ始めた。 それから1週間後、本社の部長が突然店に来て言い放った。「君は首だ。」...

「中卒がアルバイト以外できるわけねえだろ。」
その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。俺は朝田ケト、17歳。去年、両親を事故で失い、高校を中退して働き始めた。遺産はあるけれど、のんびり学生を続けられるほどの余裕はない。今は中小企業の会社でアルバイトとして働いている。
ここは高校に入ってすぐに面接を受けた会社で、高校生でも店頭で働かせてくれていた。両親がいなくなったあとも、正社員になれるチャンスがあると聞いて、このまま勤め続けることにした。店長も「本社に話を通しておく」と言ってくれて、心の底から嬉しかった。
だが、それを快く思わない人間がひとりいた。木下恵太さん。本社の人事部長の息子で、俺より2歳上の大学生。同じアルバイトなのに、いつも偉そうに振る舞い、周りからは煙たがられていた。それでも誰も注意しない。部長の親族に喧嘩を売りたくないからだ。
俺も正社員を目指している以上、彼の機嫌を損ねるわけにはいかない。だからいつも丁寧に接してきた。今日も「正社員になるつもりです」と伝えた。すると彼は鼻で笑って言い放った。
「お前が正社員なんてありえねえだろ。中卒がアルバイト以外できるわけねえ。」
「この会社は学歴不のはずですけど。」
「そんなの世間によく見せるために書いてるだけだよ。バイトから正社員に雇用するってのも、耳障りのいい言葉を吐いてるだけだっての。」
「でも、店長が正社員になるように本社に話してくれるって言ってました。」
「騙されてるよ、お前。」
彼は腹を抱えて笑い飛ばした。悔しくて反論したけど、彼はますます馬鹿にするだけだった。
「無能な中卒なんて雇うわけねえだろ。お前は一生正社員にはなれねえよ。」
そう言いながら、俺の肩をポンポンと叩いた。その言葉に違和感を覚えて「どういう意味ですか?」と尋ねると、彼はニヤリと笑って「後で分かるよ」とだけ言い残して去っていった。
あの時、あの笑顔の意味をちゃんと考えていればよかった。
それから1週間ほど経ったある日、店舗に木下部長が厳しい顔で現れた。
「君は首だ。明日から来なくていい。」
「え? どういうことですか?」
「浅田君がやってきたことは全部聞いた。仕事は雑で、商品を棚から落としたり、客に対してひどい態度を取っているらしいじゃないか。注意しても改善されないと相談された。」
「そんなことしたことありません!」
「息子から報告を受けている。言い訳はしないでくれ。」
息子。そうか、恵太さんが俺のことを貶めるような嘘を吹き込んだのか。あの時ニヤニヤしていたのは、こうなることを最初から分かっていたからだ。
「俺は真面目に働いてました。商品を傷つけたことなんて一度もない。他に問題を起こしたことだってありません。」
「恵太が嘘をついていると言うのか?」
「嘘じゃない。俺はちゃんと働いているんです。だから、どうか話を聞いてください。」
「雇ってやった恩を忘れたのか? この裏切り者め。」
「自分で俺を首にしたくせに、恩を語るな。それに、あんたに雇ってもらったことなんて一度もない。」
「なんだと?」
その瞬間、木下部長の顔が憤怒に歪んだ。俺は何も言えず、その場に立ち尽くすことしかできなかった。

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