兄の結婚相手は二十六歳。出会って三ヶ月で電撃結婚、しかもすでに妊娠しているという。私は給料目当てではないかと疑ったが、実際に会ってみると彼女は堂々と一番高いステーキを注文するたくましい女性だった。ところが、食事中に兄が「夫から同居の提案があった」と話し始めた瞬間、場の空気が凍りついた。何も聞かされていない私の夫からの提案?…

兄の結婚相手は二十六歳。出会って三ヶ月で電撃結婚、しかもすでに妊娠しているという。私は給料目当てではないかと疑ったが、実際に会ってみると彼女は堂々と一番高いステーキを注文するたくましい女性だった。ところが、食事中に兄が「夫から同居の提案があった」と話し始めた瞬間、場の空気が凍りついた。何も聞かされていない私の夫からの提案?...

「結婚するんだ」――兄からの短いメッセージに、私はスマホの画面を二度見した。五十五歳の主婦である私には、兄の誠が結婚するという知らせは想像を絶する出来事だった。誠は性格こそ良いものの、顔が残念で「もったいない」と言われ続けてきた男だ。相手は二十六歳で、上司に連れて行かれたキャバクラで知り合ったという。慌てて電話をかけると、なんと向こうからの猛アピールで付き合い始めたのだと聞かされ、私は給料目当てではないかと疑ってしまった。

後日、私と母、そして兄夫婦で食事をすることになった。夫は仕事で来られず、後日改めて挨拶する予定だ。予約した店に向かうと、兄嫁のあねはすでに妊娠していて、お腹が大きくなり始めていた。紹介するよ、とは付き合って三ヶ月での電撃結婚なんだ。照れながら話す兄に、三ヶ月でそんなに大きくなるものなのかと違和感を覚えたが、成長は人それぞれかと納得した。

席に着くなり、兄嫁は一番高いステーキを迷わず注文した。お腹の赤ちゃんのためにも、と遠慮なく食べる姿を見て、私は昔の自分の悪阻を思い出した。水すら満足に飲めなかった日々とは大違いだ。たくましい体なのかもしれない、と自分を納得させる。

しかしその後の会話で、事態は思わぬ方向へ進んでいく。兄が「実は、夫から同居の提案があったんだ」と話し始めたのだ。私は耳を疑った。私の夫が? 何も聞かされていない。同時に、兄嫁のあねの表情が一瞬ひきつるのが見えた。何かがおかしい。私はこの結婚と妊娠に、隠された真実があることを直感した。

「私や母の気持ちは考えないの? そんな夫って必要?」

思わず口にした言葉に、その場の空気が凍りついた。義兄は「つい甘えようとしてしまい、すみませんでした」と謝るが、その口ぶりはまるで何かを隠しているようだった。そして何より、義兄嫁のあの表情――。私は彼女が何かを知っていると確信した。

帰宅した私は、夫に問い詰めようと電話をかける。しかし、夫は妙に落ち着いた声で「ああ、その話か」とだけ言うのだった。何か知っている。夫は何か知っているのだ。そして翌日、私は決意する。この結婚の裏に隠された真実を、絶対に暴いてみせると――。その日から、私は独自に調査を始めたのだった。

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