「俺は超天才だから、見なくても分かるんだよ。お前みたいな奴がうちに来る時点で、無能揃いだってのが分かる。」
面接官にそう言われた瞬間、俺は何が起こったのか分からなかった。目の前に座っていたのは、確かに同じくらいの年の男。でも、いきなり「無能」呼ばわりされたのは、予想外すぎた。
「あなたと僕は同じ年ぐらいだと思うんですが…」
俺はそう言って、なんとか冷静を保とうとした。すると彼は笑いながら言った。
「俺は社長の息子なんだぞ。天才イケメンの大橋大樹って名前を聞いたことないのか?」
「申し訳ありませんが、全く。」
俺がそう答えると、彼はますます得意げに話し始めた。
「俺を知らないとか、これだから無能は困る。」
俺の名前は松井政治。29歳。企業向けのシステムを作る会社で働いている。まだ小さな会社だが、社員は少ないなりに精鋭揃いだから、これから大きくなっていくだろうと思っている。
そんなある日、俺は大橋商品という物販会社に相談に行くことになった。その会社は製品を自社サイトで販売していて、ネット限定商品ばかりだから、サイトの強化が必須だと聞いていた。うちの最新システムを採用してもらえば、彼らのビジネスを大きく伸ばせるはず。俺はそう確信していた。
大橋商品は最近有名になってきた会社だから、慎重になっているだろう。俺も営業にさらに気合を入れた。絶対に成功させたい。うちのシステムを使って相手を満足させてやる。そう思いながら、俺はアポイント先へ向かった。
しかし、そこで思わぬことが起こる。
約束の時間に部屋で待っているように案内されたのに、時間になっても誰も来ない。何か問題でもあったのかと、時計をチラチラ確認しながら30分待った。やっと1人の若い男性が現れたのに、彼は遅れたことを謝りもしない。
俺の目の前にドカッと座ると、いきなりこう言ってきた。
「私の製品って、役に立つの?」
俺は名刺を出して挨拶しようとしていたのに、そんな質問に驚いてしまった。えっと、と一度言葉に詰まる。だが、すぐに気を取り直して答えた。
「絶対に契約してよかったと言わせてみせます。」
そう言って、俺は胸ポケットから名刺を取り出し、自己紹介をした。商品の話も大事だが、まずはちゃんと自分の名前を伝えなければ。俺はそう思いながら名刺を差し出した。
しかし、彼は俺の名刺をチラリと見た後、グシャリと握りつぶすと、ゴミ箱にポイッと投げ捨てた。
思ってもみない行動に、俺は目を見開いて驚く。すると彼は、笑いながら言った。
「この意味分かるか? 底辺企業は帰れ。」
俺はその言葉に、一瞬何も言えなくなった。こいつは俺が軽んじられるのが当然だと思っている。それだけでなく、後から聞いた話では、大橋大樹は社長の息子で、周囲からもストレスが溜まっていると噂されていた。プライドが高いから、最近ではアルバイトをやめるのも時間の問題だろうと言われているらしい。
だが、俺は絶対に諦めなかった。
あの侮辱から、俺はもう一度営業に挑むことを決意した。そして、俺は大橋社長との面談を成功させた。何度も交渉を重ね、うちのシステムを評価してもらえるように必死に説明した。最終的に、俺は無事に契約を勝ち取ることができたのだ。
契約書にサインをもらった時、大橋社長は俺の手を握ってこう言ってくれた。
「穏やかに見えたが、意外と粘る男だな。うちも信頼できる相手に任せることができてよかった。」
俺はその言葉を聞いて、ほっと胸をなでおろした。父もこの結果を聞いて、喜んでくれた。
「政治、ようやった。これからもっと会社を大きくしていこう。」
父の言葉に、俺は新たな決意を固めた。あの日、俺を嘲笑った大橋大樹のことは、もう気にしない。確かに、彼の性格が変わらない限り、彼の未来は見えているかもしれない。でも、俺は俺の道を進むだけだ。
契約を成し遂げた今、俺はこれからもっと自分たちの会社を大きくしていくつもりだ。どんな相手に侮辱されようと、最後に笑うのは努力を続けた者だ。俺はそう信じている。



