パーティー会場で、私は怒りに震えていた。自社主催のその夜、子会社の社長令嬢が私の娘にワインを浴びせかけたのだ。初対面の彼女は会場中で悪目立ちし、周囲の顰蹙を買っていた。「口先だけじゃなくて、どうにかしなさいよ」「貧乏臭いったらないのよ」と、合わせた人々に暴言を吐き、ワインを煽る。娘を傷つけられ、私はいても立ってもいられなかった。だが、私には彼女に対してとっておきの切り札があった。「悪いが、君の解雇が決まったよ」——社長令嬢の急所をつき、奈落へ突き落とす。私のその一言が、彼女の人生を大きく狂わせていく。
私の名前は佐藤優一。家業を引き継ぎ、現在はその会社を経営している。曽祖父がネジの製造から始めた会社は、祖父が自動車部品の開発と製造に乗り出してから大きく変わった。父が祖父の築いた自動車部品製造会社の基盤を引き継ぎ、好景気の時代には会社は一気に成長した。私は30歳半ばでそれまで勤めていた会社を退職し、家業を継ぐため実家に戻った。それから経営者修行というものを始め、今に至る。
55歳になった今、私は自分なりに研鑽を重ねて仕事の能力を伸ばし、家族が大事に守り続けた家業をよりしっかりとしたものに変えた。社長と言われても、そこには自信を持っている。国内のみならず、現在は海外にも進出して拠点があり、海外の自動車メーカーとも取引関係がある。一つ一つ確実に目標を決め達成し、実績を積み上げた結果、今では年商2000億円規模の会社にまでなっている。上には上がいるが、小さなネジを作っていた会社の始まりを思えば、とんでもない境地に来たのだ。
「本当によろしいんですか? 社長がご自分で式をしても良いかと思いますが。」
「いや、いいんだよ。私より現場を把握して優れた指揮感がいる。その人に任せるべきなんだ。」
大きな会社の社長。そう見られている私は、自分ではその立場を大きいものだと思っていない。社長らしい振る舞いを求められるのは分かっているが、必要以上にそうすべきではないと考えているのだ。
じこは私と同じ席にいては周囲に気を使わせてしまうからと、離れた席にしてほしいと申し出て、そこにいたのだ。
「ねえ、あんた何その格好?」



