「お前の首は確定だ。分かったらとっとと消えろ。」…

「お前の首は確定だ。分かったらとっとと消えろ。」...

「お前の首は確定だ。分かったらとっとと消えろ。」

部長の怒声がオフィス中に響く中、私はただ静かに立っていた。22年間、この会社のために全力を尽くしてきた。だが、今目の前にいる男にとって、それは何の価値もないらしい。

「わかりました。では、二度と出社しません。」

私の冷静な一言に、部長は眉をひそめ、「初めから素直にそう言えよ」と吐き捨てた。その姿に、心の中で静かな怒りが広がる。この会社を支えてきた社員を平然と切り捨てるやり方に、疑問を抱かずにはいられない。

諦めのような気持ちが心に満ち、自然とため息が漏れる。

「では、これで失礼します。後悔しても知りませんから。」

そう言い残し、私は部長室を後にした。

私の名前は二山清。工業高校を卒業してすぐに入社した電気メーカーで、商品開発の仕事をして22年になる。ベテラン枠に入っているため、部下や後輩から慕われることも多いが、嫌な気持ちは一切ない。むしろ、自分を頼ってくれることに感謝している。

しかし、ここ最近、良好だった人間関係に不穏な空気が流れ始めた。その原因は、最近部長に就任した工藤部長だ。

工藤部長はメインバンクから数ヶ月前に出向してきた人物なのだが、左遷されたと思い込んでいるらしく、仕事へのやる気が全く感じられない。部下任せの姿勢が目立ち、書類すらろくに目を通さない始末だ。見かねた私がそのフォローに回っているのだが、周囲はどんどん工藤部長に対して不満を溜めていた。

仕事を真面目にしないというだけなら、ここまで皆が不満を溜めることはなかっただろう。というのも、工藤部長はうちの会社の社員たちをどこか見下しているような節があり、非常に当たりが強い。「俺は一流大学出身の銀行員。低学歴の底辺社員どもなんて」というセリフを吐き捨てることは日常茶飯事で、それに加えて仕事もしないのだから、社員たちとの関係性はどんどん悪いものになっていった。

そんなある日、工藤部長は朝礼でとんでもない宣言を始めた。

「本日より社内改革を行う。若くて優秀な名門大学出身者のみを社内に取り入れ、在籍年数だけしか取り柄のない老いぼれ社員はお払い箱にする。」

工藤部長の発言に、当然部署内はざわめいたが、当の本人は一切気にする様子はなく、それどころか得意げに鼻の穴を大きく膨らませている。

そんな工藤部長の姿を見て、私は「ああ、やっぱりこの人は周囲のことなど考えず、自分のプライドを守ることばかり考える人なんだ」と思い、怒りと怖さが入り混じる何とも言えない気持ちになった。

「工藤部長、一旦冷静になりませんか?」

社員たちがざわめく中、私は意を決して声をあげた。このまま工藤部長の思い通りにことが動いては、社内が混乱するのは明白だ。そうなれば利益にも影響が出かねないと思い、私は工藤部長を落ち着かせようとしたのだが、それが癪に触ったのか、工藤部長はきっとこちらを睨みつけてきた。

「俺は冷静に判断した結果、この社内改革を実行すると言っているんだ。在籍年数だけ無駄に長い底辺が俺に指図するな。」

そう言って工藤部長は近くの壁をバンと叩くと、そのまま部署を出て行ってしまった。

社員たちは彼の激しい態度に動揺していたが、そもそも商品開発部に人事権はないため、工藤部長の改革案が実行される可能性は低いと思われた。

「みんな落ち着いてくれ。いくら工藤部長でも、人事を動かす権限は持っていないはずだ。安心して今日の業務に入ってくれ。」

そう伝えて社員を落ち着かせたが、事態を甘く見ていた自分を数日後に悔むことになる。

なんと工藤部長は、社歴の長い社員たちを個別に呼び出しては退職を迫るようになったのだ。当然、このことは上に報告はしたのだが、どうやら工藤部長はメインバンクの肩書きを武器に上を黙らせているようで、こちらのクレームにも黙ったまま対処すらしてくれない。

そんな状況から工藤部長の行動はどんどんエスカレートしていき、ついに耐えかねた社員が1人退職する事態にも発展した。

そんなある日の朝、私がいつも通り出社すると、工藤部長から即座に声がかかる。

「おい、二山、こっちに来い。」

そう言って手招きをする工藤部長の方へ私は向かうと、そのまま部長室へと通された。工藤部長はそのまま流れるように椅子に腰かけ、のけぞるようにして座ると、そのまま不気味な笑みを浮かべる。

そして、工藤部長はデスクの引き出しから1枚の用紙を取り出し、まじまじと見つめながらゆっくりと口を開いた。

「お前の履歴書を確認したが、最終学歴は高卒だったんだな。」

そう言って工藤部長は手に持っていた用紙をこちらに見えるように掲げる。それは入社当初に会社に提出した私の履歴書だった。

「はい。確かに私の最終学歴は高卒ですが、それが何か?」

私は淡々とそう返すが、工藤部長は表情を一つ変えず、ぺらりと履歴書をデスクに置く。

「この会社に高卒のバカがいるなんて、恥ずかしいったらありゃしないな。」

口汚く私を罵ると、工藤部長は置いてあった履歴書を指でピンと弾き、そのまま床にわざとらしく落とす。

工藤部長の失礼な言動を不愉快に感じたものの、ここで喧嘩腰で対応してしまっては良くないと心の中で言い聞かせ、呼吸を整えた。

「確かに私は高卒です。しかし、学歴など関係なく会社に貢献するために商品開発に尽力し続け、経験と技術、また実績も着実に作ってきたつもりです。」

私は冷静に工藤部長に告げた。しかし、工藤部長はこちらを嘲笑うかのようにふっと鼻で笑う。

「大した仕事もしていないくせに、偉そうなことばかり言うな。お前は首だ。」

「ちょっと待ってください。そんな簡単に解雇を決めてしまうのはどうかと思います。それに、私がいなくなったら人員が不足することになるんですよ。」

工藤部長の発言はあまりにも横暴で、納得のいかないものだ。そう思った私は少しだけ声を荒げながら反論するが、工藤部長は余裕の笑みを浮かべながらデスクからまた1枚の用紙を取り出す。

「人員不足に関しては、きちんと対策もしてある。」

そう言って工藤部長は持っていた用紙を掲げて私に見せてきた。それはまたしても履歴書だったのだが、そこに貼られた写真は見たこともない若い男性が映っていた。

「それは誰の履歴書ですか?」

「彼は今年の春、東大を卒業したエリートでな、今後働いてもらう予定になっているんだ。」

工藤部長はそう言って、ひらひらと手に持った履歴書を揺らし、誇らしげな表情を見せる。

「どういうことですか?中途採用は現在募集していないはずですが。」

「SNSで個人的に知り合ったんだよ。彼は東大卒だが就活はせず、株や投資で今は生活を立てている頭脳派で、それを評価して俺がスカウトしたってわけだ。」

得意げに工藤部長はそう説明し、にやりと笑う。

「それは上の人間は把握しているんですか?人事を通さずにスカウトだなんて、全く問題ですよ。」

「社長には伝えていないが、本部長には優秀な人材を入れることは銀行側の意向だと伝えてある。銀行側の意向なら、取締役が許可を出したと。」

私がそう言うと、工藤部長は居心地が悪そうな表情で口ごもる。

「ちっ、ごちゃごちゃ質問するな。お前に答える義務はない。給料泥棒のバカはとっとと荷物をまとめてこの会社から出ていけ。帰ったらちゃんと就職活動しろよ。」

そう嫌みったらしく工藤部長は吐き捨てると、「ほら、さっさと出ていけ」とさらに一方的に言い放つ。

「いい加減にしてください。そんな身勝手な理由で人を首にするなんて、ひどいじゃないですか。こんなの不当です。」

私はとうとう我慢の限界を迎え、つい強い口調で抗議してしまった。しかし、そうでも言わないと腹の虫が収まらなかったからだ。

この22年、私はこの会社のために全力で働いてきたし、実績も残せてきたと自負している。後輩や部下たちからも信頼してもらえて、さらに会社に貢献してきたというのに、こんな扱いを受けなければならないというのは、正直納得がいかなかった。

「そもそも、このやり方は正しいんでしょうか?」

「何がだ?」

私の問いかけの意味が分からないのか、工藤部長は不機嫌な表情でそう返す。

「ここ数日、私を含めてベテランの社員を呼び出しては退職を迫っていますよね。現に、耐えかねた1人の社員は本当に退職してしまいました。彼はうちの会社にとって大切な社員だったのに。」

「ああ、そういえばあいつはお前の同期だったな。気が済む気持ちは分からなくもないが、無能同士で傷の舐め合いをするのは見苦しいぞ。」

そう言って工藤部長は馬鹿にしたようにくくくと笑う。

「あなたが原因で辞めてしまった人まで出てしまったせいで、社内には不満と不安が広がっています。会社の利益にも大きく影響が出てしまう可能性もあるので、こんなこと今すぐやめるべきです。」

私は工藤部長に懸命に今の状況を説明したが、当の本人は一切聞く耳を持たず、むしろ苛立っているのか貧乏ゆすりを始める。

「無能の言い分なんて聞きたかねえんだよ。お前の首は確定だ。分かったらとっとと消えろ。」

何を言っても無駄というのは、まさにこのことなのだろう。正直、今工藤部長に対しても不信感はあったが、こんな人物を部長にしている会社に対しても、私は疑問を感じるようになっていた。

諦めのような気持ちが心の中に満ち、自然と息が漏れる。

「わかりました。では、二度と出社しません。」

そう告げると、工藤部長は眉をひそめながら「初めから素直にそう言えよ」と呟いた。きっと、ことの重大さに気づいていないのだろう。しかし、今となってはそれもどうでもいいことだ。

「では、これで失礼します。後悔しても知りませんから。」

私はこれからこの会社にやってくる地獄を想像しながら、そう言って歩き始めた。

そんな私の態度に工藤部長はカチンと来たのか、デスクをダンと力いっぱい拳で殴る。

「この負け犬が。お前が辞めて後悔するわけねえだろ。とっとと出ていけ、このバカ野郎が。」

そう怒鳴られ、私はそそくさと部長室を後にした。

翌日の朝、私が自宅でコーヒーを入れていると、突然スマホが鳴り響く。画面を確認すると、そこには工藤部長の名前が表示されており、面倒に感じていたものの、着信音は一向に鳴りやまない。このまま放置していても意味がないと思った私は、しぶしぶ電話に出ることにした。

「おはようございます。どうかしましたか?」

「今すぐ会社に来い。」

工藤部長は驚かせるほどの大声で叫び、私は思わずスマホを耳から遠ざける。

「声が大きすぎます。少しは冷静に話ができないんですか?」

「冷静になりたくてもなれない状況なんだよ。なぜだか知らんが、社長がお前に会いたいって言ってんだ。いいからさっさと来い。」

焦っていても、工藤部長は相変わらずの上から目線でカチンと来る物言いではあったが、こちらの返答を待たずに工藤部長は「頼んだぞ」と言い、そのまま電話を切ってしまった。

正直、工藤部長の命令に従うのは癪だと思ったが、「社長が会いたがっている」という言葉には引っかかった。社長にはお世話になったと心から思っているし、長年雇ってくれていた手前、挨拶もなしに辞めてしまっては申し訳ないという気持ちがふつふつと湧いてくる。

最後の挨拶も兼ねて出社するか。

そう、私はスーツに身を包み、会社へと向かった。

会社に到着し、すぐさま社長室に向かうと、社長室の前に立っていた工藤部長と目が合い、私は思わず「うわ」と小さな声が漏れてしまう。

「なんだそのリアクションは?」

私の声が聞こえてしまったようで、工藤部長は不満そうにこちらを睨みつけてきた。

「いえ、何でもありません。そんなことより、社長が私を呼んでいるというのは本当ですか?」

私がそう尋ねると、妙に不機嫌な表情で工藤部長は口を開く。

「ああ、そうだ。社長はきっと、お前になぜもっと早く辞めなかったんだって嫌味の一つでも言いたいんだろうな。」

そう、工藤部長は呑気に言っているが、私は表情を一つ変えず、社長室の扉をノックした。

「おはようございます。二山です。工藤部長も一緒にいます。」

私は扉越しにそう声をかけると、中から「ああ、入れ」と社長の声がしたので、ゆっくりとドアの取っ手を回し、扉を開いた。

中に入ると、社長は自身の席に座っており、ソファーにはスーツのいい男性が座っていた。どうやら、ソファーに座っている男性は、うちのメインバンクである銀行の取締役らしい。

「おお、工藤部長。よく来てくれた。」

社長は笑顔で私を見ると、すっと立ち上がる。そして、すぐさま私に駆け寄り、「来てくれてよかった」と歓喜の声をあげ、私の手を力強く握りしめた。

「何も言わずに会社を去る形になってしまい、申し訳ありませんでした。」

私がそう謝罪すると、社長は「いやいや」と言って首を横に振る。

「謝るのはこっちだ。私が海外に行っている間、君が首になるような事態になっていたとは、本当に申し訳ない。」

社長は言いながら深々と頭を下げると、ゆっくり顔を上げ、今度は工藤部長に目を向けた。

「なぜ独断で二山君を首にした?一体どういうつもりなんだ?」

そう言って社長は詰め寄ると、そのあまりの勢いと圧に、工藤部長は縮こまったように体を縮ませる。

「こんな役立たずのバカ社員は必要ないと思ったので。」

工藤部長がそうつぶくると、その言葉にいち早く反応したのは意外な人物だった。

「バカは貴様だ。」

取締役はそう大声で一喝すると、すっと立ち上がり、私に向かって深々と頭を下げる。

「うちのアホが無礼なことをしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。」

社長の次は取締役が頭を下げたことで、工藤部長はますます混乱したのか、目を白黒させて呆然としていた。

そんな彼の姿をよそに、取締役は話を続けた。

「二山君は、この会社のヒット商品で売上の半分以上を稼ぎ出す商品を開発した人物なんだぞ。それを首にするとは、どういう思考をしているんだ?」

取締役がそう叫ぶと、工藤部長は「え、マジ?」と言って私の方に顔を向ける。

「自分で話すと嫌味のように聞こえる気がして、あまり言いたくはなかったのですが、我が社の主力商品の開発に携わったのは事実です。それと、その商品の特許も持っています。」

私の説明を聞き、工藤部長は驚きのあまり無言のまま頭を抱えた。

「本来なら、それ相応の役職についてもらうのが筋なのだが、彼自身、名誉欲がない性格で、今も通常の社員として我が社で働いてくれていたんだ。」

「そんな、まさか。」

社長の説明を聞き、工藤部長は絶句するが、社長はさらに説明を続ける。

「特許の使用に関しても、本来なら多額の手当てを与えるべきところを、毎月少額の報酬で好きに使って構わないと言ってくれ。どれだけ我々が彼の恩恵を受けたことか。」

社長は言い放つと、工藤部長は俯きながら「高卒のバカのくせに特許…そんなバカな」とぶつぶつつぶやきながら表情を失う。

「本当に申し訳なかった。この件はなかったことにしてくれないだろうか。」

社長はそう言って懇願するが、私は淡々とある事実を伝えることにした。

「社長には随分お世話になったと思っていましたが、実はもう戻ることはできないんですよ。」

「それは一体どういうことだ?」

「実は、部長からすぐに就職活動をするようにと言われたので、以前からお声がけしてくださっていたライバル社にお世話になることが、昨日の時点で決まってしまいまして。」

実は、前々からうちとライバル関係にある会社からスカウトの連絡が来ていた。もちろん、声をかけてもらった当初は社長に申し訳ない気持ちもあったため、一旦保留にしてもらっていたが、昨日の一件で無職のままでいるわけにはいかないと、すぐさま連絡をしたのだ。

「急な話でしたが、先方は快く受け入れてくれ、来月から働くことになっていますので、戻るつもりはありません。なので、特許の件ですが、今後こちらの会社では使えなくなります。よろしいですよね。」

そう、私が話すと、社長と取締役は顔面蒼白の表情で、すぐさま工藤部長を睨みつける。

「まあ、工藤部長は私の代わりに東大卒の優秀な若手を入社させるらしいので、今後はその彼に頑張ってもらえばいいんじゃないですか。」

そう、私が発言すると、社長は「なんだその話は」と言って首をかしげ、取締役も「こんなタイミングで中途採用だと?」と疑問の声をあげた。

「工藤部長は社長にはお話ししていなかったようですが、本部長にはお伝えしていたそうです。それと、若手の採用は銀行の意向だとも言っていましたが。」

「なんだその話は。私は二山君を首にして若手を入れろなどと言った覚えはない。」

取締役はそう言うと、工藤部長を睨みつける。工藤部長はと言うと、このタイミングで自分の嘘がバレるとは思っていなかったようで、汗をだらだらと流しながら焦っている様子で目を泳がせている。

「一体どういうことなんだ?きちんと説明しろ。」

取締役にそう迫られ、焦った工藤部長は、なぜか私の近くに寄ってくると、肩にポンと手を置き、笑顔で語りかけてきた。

「ま、まあなんだ、首は冗談だったんだ。君には俺の右腕として今後も働いてもらう。よろしく頼むぞ。」

工藤部長は懸命に作り笑いをしながらそう言うと、私の耳元に顔を近づけ、「頼むから話を合わせてくれ。このままじゃまずい」と小声で耳打ちする。

この後に及んで、まだ自分の保身しか考えていないのか。私は呆れと怒りが入り混じった気持ちで、「あなたのせいで会社は終わりです」と呟いてやった。

その言葉を聞いた工藤部長は、見る見る顔を青くし、言葉を失っていたが、私にはもう知ったことではない。

「何が冗談だ。しかも、銀行の名前を悪用してまで散々なことをしておいて、冗談で済むわけがないだろう。」

取締役は大声でそう叱責し、さらに話を続けた。

「お前は銀行での成績は悪くなかったし、有名大学出身ということもあって、それを評価して出向させたというのに、私には見る目がなかったようだ。」

「え、左遷じゃなくて?」

取締役の言葉を聞き、工藤部長は呆然としながらそう言った。

「そんなわけないだろ。何をどうしたらそんな考えになるんだ。」

「いや、だって、こんなしょぼい会社に出向させるってことは、そういうことなのかと。」

工藤部長の言い分を聞いて、取締役は頭を抱えながらため息をつく。

「まあ、今更あれこれ言われても、私の意思は変わりません。今までお世話になりました。それでは失礼します。」

そう言って扉の方に体を向けると、社長はすぐさま私の腕を力強く掴み、頭を下げる。

「頼む。どうか、どうか考え直してくれ。」

慌てふためく社長は何度も私に頭を下げて、戻ってくるように懇願するが、私は首を縦に振ることはなかった。

「このままでは会社が潰れてしまう。どう責任を取るんだ。」

社長は涙目になりながら工藤部長を攻め立てる。取締役もそれに拍車をかける形で「これは銀行の責任問題にも発展するかもしれないんだぞ」と大声で騒ぎ始めた。

社長と取締役に攻め立てられ、縮こまる工藤部長を横目に、私は静かに社長室を立ち去った。

それから数ヶ月が経過し、工藤部長のその後は噂で知ることになる。

工藤部長は責任を追求され解雇となり、さらに社長に許可なく人材を中途採用したことで、本部長も譴責処分を受けたそうだ。そして、今は就職活動に追われているようなのだが、あのプライドの高さが面接でも露骨に出てしまい、全て玉砕しているらしい。

会社はと言うと、特許が使用できなくなったことで新たなヒット商品を生み出さなければならなくなったが、それもうまくいかなかったと聞いた。

ちなみに、工藤部長が俺の代わりに入社させた東大卒の若手社員は、工藤部長同様、プライドが高いだけの仕事ができない人物だったらしく、彼が会社を救うという未来もなかったようだ。

結果、会社は私が転職したライバル会社に吸収合併することになった。

ちなみに、工藤部長のせいで退職した社員については、私が転職したライバル会社の社長にお願いをし、雇用してもらえることにもなった。

そして、私は今の会社で特許保持が高く評価され、役員クラスで遇されている。また、その特許を使った新たな商品を次々に開発し、世に送り出したことで、会社は業界トップの座に躍り出るまで急成長した。

ただ、私はこの現状に一切満足していない。今後も世の中のためになるような商品を開発できるよう、日々地道な研究活動に忙しくしている。

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