放課後、廊下が妙に騒がしいと思ったら、校門の前に他校の不良たちが数人、仲間を連れて乗り込んできた。
校内の不良連中と揉み合いになり、そのうちの一人がみずほに掴みかかろうとした。
「おい、やめろ」
気づいた時には、俺はみずほと不良の間に立っていた。
「今度は誰だよ。また弱そうなのが来たな」
「あんた、俺より強いの?」
俺が余裕の表情で煽ると、不良は殴りかかってきた。だが、それを冷静にかわしてカウンターを放つと、不良は目を丸くして倒れた。
「ちょっとルイ君、大丈夫?」
みずほが心配そうに声をかける。
「大丈夫。ここは俺がなんとかするから、ちょっと離れてて」
俺はいつもの調子で言ったつもりだった。
ところが、倒れた不良が這うようにして顔を上げ、俺を睨みつけて言った。
「ルイ……ルイ? もしかして、お前、中学時代に空手の王者だったあのルイか?」
「へえ、よく知ってるじゃん。でも、なんでそんなこと知ってるんだ?」
「俺はお前に人生をめちゃくちゃにされたんだよ。中学の大会で、お前に負けたんだ。だから今日こそ、お前を倒して俺の本当の強さを証明してやる」
正直、俺は彼のことをまったく覚えていなかった。だが、彼が俺に恨みを持っていることだけは確かだった。
「分かった。やってやるよ」
今度は俺から仕掛けると、不良はたまらず受けてしまった。その後も攻撃を避けながら反撃を続け、ついに彼はその場に崩れ落ちた。
周りの生徒たちは誰もが驚愕していた。地味で影が薄いと思っていた俺が、不良を叩きのめしたのだから無理もない。
「この子の前で負けるわけにはいかないんだよ」
俺は振り返ってみずほを見た。
「みずほちゃん、大丈夫だった? 怪我はしてない?」
「私は大丈夫。でも君こそ、面倒なことに巻き込んじゃったみたいでごめんね」
みずほは今にも泣き出しそうな顔で俺を見つめていた。
「ルイ君、守ってくれてありがとう。実はね、私、ルイ君のことが好きだったの」
「え?」
「ずっと言うの我慢してたんだけど、さっきのルイ君がかっこよすぎて、我慢できなくなっちゃった」
俺は嬉しさと驚きで頭の中が真っ白になった。しかし、まだ心の中にモヤモヤが残っていた。
「でもみずほちゃんには、彼氏がいるんじゃないの?」
「え? 彼氏? そんなのいないよ」
「でもこの前、スーツを着た背の高い人と楽しそうに歩いてたじゃないか」
みずほは何かを思い出したように、「ああ、あの日のこと? ルイ君、誤解してるよ。あれは私のお兄ちゃんだよ」と笑った。
「え、お兄ちゃん?」
「もしかして、最近ルイ君が私に冷たいのって、お兄ちゃんを彼氏だと思ってたから?」
「だって、あんなに仲良さそうに歩いてたから……」
真実を知った瞬間、心のモヤモヤは一気に晴れていった。
「勝手に誤解しちゃってごめん。本当は俺も、みずほちゃんのことが好きなんだ」
俺はこのタイミングでようやく告白をした。
「そっか、両思いだったんだね。よかった。これからよろしくね」
こうして俺たちの交際は始まった。高校を卒業し、社会人になってからも関係は順調で、少し前に俺は彼女にプロポーズをし、彼女は受け止めてくれた。
そして今日、俺たちは二人で母校の校庭を散歩しながら、あの日のことを話していた。
あの日、不良に立ち向かう勇気を持てたからこそ、今の俺たちがある。



