前社長から全権を任され、俺はこの工場のシステムを一人で守ってきた。しかし、後任としてやってきた新社長は、俺を見るなり「ただの金食い虫だ」と切り捨てた。そして、驚くべき条件を突きつけてきたんだ。「不眠普及で給料は半分。飲めないなら退職届にサインしろ。」俺は、殴り書きで名前を書いて工場を去った。それから数日後、私物を整理に行くと、工場は機能停止していた。原因は、あの新社長がシステムを壊したことだ…

前社長から全権を任され、俺はこの工場のシステムを一人で守ってきた。しかし、後任としてやってきた新社長は、俺を見るなり「ただの金食い虫だ」と切り捨てた。そして、驚くべき条件を突きつけてきたんだ。「不眠普及で給料は半分。飲めないなら退職届にサインしろ。」俺は、殴り書きで名前を書いて工場を去った。それから数日後、私物を整理に行くと、工場は機能停止していた。原因は、あの新社長がシステムを壊したことだ...

新社長は、俺の顔をじっくりと眺めたあと、小さなため息をついた。

「優秀だ、やり手だと聞いていたが、ただの金食い虫じゃないか。」

俺は頭の中が真っ白になるのを感じた。俺はこの工場のために、幾つものシステムを設計し、維持管理してきた。それを、この新任の社長は「無駄」だと言い切ったのだ。

俺の名前は平本哲也。ある大手メーカーの子会社で、システムエンジニアとして働いている。地方の工場に配属されてから、もう5年になる。前任の社長から全権を任され、工場のシステムの全てを一人で見守ってきた。

前任の社長は、病に倒れて会社を去った。その後にやってきたのが、親会社から出向してきた日田孝太郎新社長だった。彼が来てから、工場の雰囲気は一変した。職員との顔合わせの場で、彼は開口一番、こう言い放ったのだ。

「あなた方は、最新式の工場という看板に甘えている。ここには、製造部門には不要と思われる無駄が多い。」

嫌な予感がした。案の定、日田さんの視線は、俺に向けられた。

「この工場では、システムが過剰に適用されているようだ。外部に委託すればいいものを、自社で構築して維持管理を続けている。それは、明らかな無駄遣いだ。」

その場の空気が凍りついた。周囲の視線が、一斉に俺に注がれる。俺は、やり玉に挙げられた。

面談を申し入れ、直接話をしようとしたが、日田さんの態度は変わらなかった。彼は俺の説明に耳も貸さず、給料を半額にしろと言い出した。

「不眠普及で、給料はこれまでの半分でやってもらわないとね。システムエンジニアなんて、他にいくらでもいるんだ。君の価値なんて、そんなもんだよ。」

ここまで見下されて、この人の下で働くのはごめんだ。俺は、退職届に、半ば殴り書きでサインをした。

「わかりました。でしたら私はここを退職します。」

ひっそりと、工場を後にした。怒りよりも、虚脱感の方が大きかった。

その後、同僚や工場の人たちから心配の連絡が来た。日田さんが俺の電撃退職を伝えたらしく、彼らは口々に怒りをあらわにした。中には「一緒に抗議しよう」と言ってくれる者もいたが、俺はもう、分かり合えない相手と戦う気にはなれなかった。

数日後、私物を整理するために工場を訪れると、様子がおかしい。事務エリアは異様な静けさに包まれ、残っている人たちは皆、困惑した表情で電話をしていた。そして、日田さんが慌てて飛び込んできた。

「おい、いい加減どうにかならないのか?」

「あの業者さんも、対応可能なSEを用意できないようで…」

「なんだよ。役に立たねえな。」

製造ラインの稼働状況を示すパネルには、赤い警告が広がっていた。工場が停止していることを示していた。

「あの、何かありましたか?」と、近くの職員に尋ねると、彼は声を潜めて話してくれた。

「実は、日田さんが全てのラインを止めてしまって…不具合を直そうとシステムをいじって、機能停止状態にしてしまったんです。」

彼の顔には、正気の色がなかった。俺なら、この状況をすぐに復旧できる。そう思ったが、もう退職した身だ。無関係の人間が、口を出すべきではない。

荷物をまとめていると、日田さんに気づかれてしまった。

「おい、平本。いいところに来た。何とかしてくれ。」

「何とかって、何をどうしろと?」

「システムを動かせ。それから、とにかく復旧しろ。これ全部、お前のせいなんだから。」

「どうして僕のせいですか? 僕はここにいた間、正常にシステムが作動するよう、ずっと対応していましたよ。」

「だから、それが異常になってるんだよ。」

「それは失礼ですが、誰かが不適切な処理をしたからではないんですか?」

日田さんの目が泳いだ。彼は、声を震わせて命じた。

「おい、システム責任者として対応しろ。誠意を見せろ。」

俺は、長く大きなため息をついた。

「お断りします。僕はもう、ここの社員ではありません。権限も与えられていないのに、会社のシステムに手を触れるわけにはいきません。」

荷物をまとめ、頭を下げた。

「おい、待て。今から権限を渡す。」

「それは、会社の許可を得ているんですか? 退職者にあなたが単独で許可を出して、本当にいいんですか?」

そう言い残して、俺は工場を後にした。後ろで、脱力した日田さんが立ち尽くしているのが見えた。

あれから1ヶ月後、俺は知らされた。工場のシステム停止は半日以上も続き、外部のSEが何とか復旧させたものの、生産機能は大きな打撃を受けた。納期が遅れ、工場と会社は大きな損害を被ったのだ。

日田さんは、責任を問われて、系列の小さな子会社に左遷されたらしい。「全ての計画の立案者であり、実行者」として。

そして、俺は会社に復職させてもらえることになった。会社は、日田さんによる退職の強要を認め、謝罪してきた。俺はそれを受け入れ、さらに、以前から計画していた「システム部」の発足を提案した。会社は、二つ返事で聞き入れてくれた。

今、工場にはシステム部専用のオフィスがあり、複数のSEが常駐し、24時間体制で業務に当たっている。失った信頼を取り戻すように、俺はこれからも、この仕事に全力を尽くすつもりだ。

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