夫は笑いながら、私にこう言いました。「引っ越しまで5日だ。両親も同居させるからそのつもりで。準備は全部お前がやれ」 今まで同居の話なんて一度もなかったのに。私が何か言う前に、夫は皮肉な笑みを浮かべて付け加えました。「お前は何年経っても俺の言いなりだな」…

夫は笑いながら、私にこう言いました。「引っ越しまで5日だ。両親も同居させるからそのつもりで。準備は全部お前がやれ」 今まで同居の話なんて一度もなかったのに。私が何か言う前に、夫は皮肉な笑みを浮かべて付け加えました。「お前は何年経っても俺の言いなりだな」...

引っ越しまで5日。夫のヒカルが、笑いながら言い放った。両親も同居させるから、そのつもりでいろ。引っ越し準備は全部お前がやれ。俺は仕事で忙しいからな。

今まで同居の話なんて一切なかった。それなのに、最初から選択肢など与えられていない。私はゆっくりとスマホをテーブルに置き、淡々と返事をした。心配しないで、私が責任を持って準備しておくから。

ヒカルは機嫌よく笑った。さすがだな、お前は何年経っても俺の言いなりだ。両親の介護もお前がやるんだぞ。嫁としてではなく、奴隷として、俺のために働け。

何度も侮辱されてきた。それでも私はずっと我慢してきた。この勘違い野郎を、必ず後悔させて地獄の底に叩き落とすために。私は心の中で密かに笑った。

引っ越し当日、私は言われた通りすべてを終わらせた。荷物を整理し、不要なものを捨て、引っ越し業者の手配もすべて一人でやった。感謝の言葉は、もちろんなかった。

新居の前で待っていると、義両親が先にやってきた。
「Dさん、今回の同居の件、本当にありがとう。私たちも年だから、一緒に住んでくれると聞いて心強かったわ」
「りえさん、これからよろしく頼むよ」

何も知らない義両親は満面の笑顔だ。夫は彼らに、私が同居を提案したと嘘をついているらしい。義両親は本当にいい人たちだ。もし同居するなら、この人たちとはうまくやっていけるだろう。だが、それは叶わない。義両親には申し訳ないが、私はすべてを終わらせるつもりだ。何年も作り笑いをしてきた私には、笑顔を保つことなど簡単だった。

しばらくして夫が現れた。新居を前にして、彼はニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべていた。これからも嫁を奴隷としてこき使ってやろうという、黒さが滲み出ている。
「どうだ、新居はいい家だろ。感謝しろよ」
「本当に素敵な家ね。でも、ちょっと広すぎる気もするけど」
「4人で暮らすんだから、これぐらいしないとな。まあ、それはともかく、今日からよろしくな。これからはお前に休む暇なんてないからな。掃除も隅々までやるんだぞ」

夫は私を奴隷呼ばわりし、今まで見たことのないくらい満面の笑みになった。これまでずっと私が家のことを全部やってきた。つまり、今までと何も変わらない。まっぴらごめんだ。笑っていられるのも今のうちだけ。
「早速だけど、今日中に全部やっておけよ。こういうのは初日にさっさと終わらせるのがいいんだ」
「それはできない。荷物がないから。悪いけど、後で取りに行ってね」

夫の顔が一瞬で歪む。
「は?荷物がないだと?どういうことだ?そもそも亭主に向かってその態度は何なんだ?お前は俺に言われたことだけやってればいいんだよ」

夫は声を大きくしていく。それに気づいた義両親が家の中から出てきた。
「おいおい、2人ともどうしたんだ。家の中まで丸聞こえだぞ。引っ越し当日に喧嘩なんて、近所に聞こえるわよ」

夫は肩をすくめて、義両親に告げた。
「なんかリエが急に変なことを言い始めてさ。俺の荷物がここにはないだとか」

私は深呼吸をした。そして、確信に迫る一言を放った。
「ヒカルの荷物は、別の場所に送りました。その場所は、ヒカルの愛人のところです」

3人同時に「え?」という声が漏れた。義両親は理解が追いつかない様子だったが、夫だけはギクリとした表情を浮かべていた。彼の額にはうっすらと汗も滲んでいる。

「ヒカル?愛人ってどういうことなの?まさか、浮気してるのか?」
「いや、俺も何のことだか。リエが急に変なこと言い出しただけだよ。受け合わないでくれ」

夫は当然否定する。あえて平然とした態度で、私は続けた。
「その様子じゃ、私が愛人に荷物を送ったことを信じていないようね。でも、本当のことよ。あなたは私に引っ越し準備は全部やれって命令した。全部丸投げだったし、私がどこに送ろうが自由でしょう」

夫の汗がさらに増していく。私は義両親に、夫の本性について明かした。
「お父さん、お母さん、私たちの結婚生活はうまくいっていませんでした。今話したこともすべて本当で、ヒカルには愛人がいます。今回の新居への引っ越しや同居の件も、ヒカルは私に何の相談もなく独断で決めてしまいました。実はヒカルに脅されていたんです。逆らったら離婚すると」

「そんな…どういうことなの、ヒカル!」

義両親は困惑している。いつも夫は彼らの前で私に優しいそぶりを見せていたからだ。私はスマホを取り出し、ある音声データを再生した。5日前の、夫との会話の録音だ。あの日、私は黙って録音していたのだ。

『引っ越しまで5日だな、りえ。両親も同居させるからそのつもりで。ちなみに引っ越し準備はお前が全部やれよ。俺は仕事で忙しいからな』
『心配しないで。私が責任を持って準備しておくから』
『さすがりえ。お前は何年経っても俺の言いなりだな。分かってると思うが、両親の介護もお前がやるんだぞ。嫁としてではなく、奴隷として俺のために働け』

誰が聞いても、夫が嫁いびりをしていることは明白だった。義両親は絶句する。夫は言い逃れしようとしたが、私はさらに別の音声データも再生した。それは夫が普段から私を奴隷呼ばわりしていることが分かる内容だった。

「あんたって怖い。自分の奥さんになんてことを…」
「この様子じゃ、りえさんが話していたこと、全部本当なんだろうな」

義両親は夫を信じた。実は私、夫が私を奴隷扱いし始めたのは約1年前からだった。それと同時に夫は仕事と称して家に帰らないことが増えた。友人たちに相談すると、みんな口を揃えて浮気を疑っていた。そして、夫の出張日に彼を尾行した。そこで見たのは、愛人といちゃつく夫の姿だった。さらに探偵に依頼すると、相手は同じ会社の女子社員だということも判明した。

「もうあなたの浮気については全部分かってるから、言い訳なんてしても見苦しいだけよ」

義両親は夫に大激怒した。すると夫は、ここでとんでもない行動に出る。
「ああ、めんどくせえ。せっかく今までうまくやってたのによ。リエの言う通り、俺は愛人を作って嫁いびりをしていた。めちゃくちゃ楽しかったなあ。父さんも母さんも全然気づかないし」

夫は完全に開き直ってしまった。義父が震えながら夫の胸ぐらを掴む。
「ヒカル!その態度は何だ?お前は自分が何を言ってるか分かってるのか?」
「おい、そんなに怒るなよ。たかが浮気や嫁いびりぐらいで。俺はリエの口から離婚したいって言わせたかっただけだ。俺の浮気が原因で離婚すれば、慰謝料を払わなきゃいけないだろう。もったいないしな」

夫の計画には気づいていたが、改めて聞くとどんだけクズなのかがよくわかる。私は夫に宣言した。
「ヒカル、あなたにはできるだけ高額の慰謝料を請求するわ。愛人の名前はナさんよね」
「バレてしまってるならもういいさ。もったいないけど、慰謝料は払ってやるよ。俺はナと再婚できればそれでいいからな。お前は俺と離婚して、この家から出ていけ」
「あなたに言われなくても、喜んでそうするわ」

私は記入済みの離婚届を差し出した。夫は喜んでサインをした。
「じゃあ、とっとと全員家から出て行ってくれ。この新居でナと人生を再スタートさせるよ」

私は義両親と一緒に、その日のうちに新居を出た。義両親は夫の代わりに深く頭を下げて謝ってくれた。
「りえさんが謝る必要は全くないわ。謝らなきゃいけないのはこっちの方よ。うちのバカ息子が迷惑をかけてごめんなさい」
「私たちは親子ではなくなってしまうけど、いつまでもりえさんの味方だから、何かあれば遠慮なく頼ってちょうだい」

義母の優しい言葉に、思わず涙が出そうになった。
「ありがとうございます。でも、あいつがこのまま謝罪もせず幸せになるのは許せません」
「ああ、それなら大丈夫です。あの人は、今回の件で必ず後悔することになりますから」

数日後、私のスマホに大量の着信が入った。元夫のヒカルからだ。あえて何度か無視してから、電話に出た。
「りえ、やっと繋がった。俺、あいつに騙されていたんだよ。ナの家に行ったら、ゴミ捨て場に俺の荷物が捨てられててさ。慌てて部屋に行ったら、小柄な男が待ち構えていて『俺の女に手を出すんじゃねえ』って言うんだ。ナに男がいたなんて知らなかった」

「ご愁傷様。まあ、私は知っていたけどね。だって、ナさん本人に話を聞いていたから」
「は?ナ本人に?どういうことだ?」
「ナさん曰く、あなたが既婚者だとは本当に知らなかったらしいわ。あなたにとっては遊ぶのにちょうどいい相手だったみたいだけど、最近あなたが結婚の話をするようになって、どうやって別れようか悩んでいたそうよ。私に謝って、本命の男がいることも打ち明けてくれたわ」

「あいつの本性を知っていたなら、なんでその時言ってくれなかったんだよ!言ってくれていれば!みんなであの家に住んで丸く収まったじゃないか!」
「何言ってるの?あなたに言う必要なんてなかった。だって私は、あなたに後悔させたかったから。それに、言ったところであなたは信じなかったでしょう?」
「浮気される方が悪い。騙される方が悪い。あなたが言ったその言葉、そっくりそのままお返しするわ。全部自業自得よ。あ、そうそう。ナさんの本命って、暴力団と繋がってるんだって。あなたのこと、ボロボロになるまで探しているらしいわよ」
「おい、嘘だろ?それはヤバいって。頼む、ナに行って止めてくれ!」
「残念だけど、ナさんには干渉しない約束なの。大人しく捕まって、惨めな人生を歩めばいいわ」

夫は発狂していたが、私はお構いなく電話を切った。きっと彼は想像できないくらい悲惨な目に遭うだろう。でも、それは彼が自分から選んだ道だ。ヒカルが自分を改めない限り、その人生は変わらない。その後、ヒカルは新居で一人寂しく暮らしているらしい。ナさんの本命から追われて、碌に家にも帰れずビクビクしながら過ごしているそうだ。ヒカルからは義両親を騙したことへの謝罪と後悔のメッセージが毎日のように届いているが、私は一切返信していない。そして、慰謝料が振り込まれたのを確認して、ヒカルの連絡先をブロックした。

私は前を向くことにした。いつかどこかで再会した時、本当の笑顔を見せられるように。

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