朝もやが残る山合の町に、俺を乗せたタクシーがゆっくりと入っていく。窓の外には田んぼと古い民家が続き、信号もまばらで、時が止まったような街並みが広がっていた。
「お客さん、着きましたよ」
顔を上げると、四階建ての白い建物が見えた。正面玄関の上には「御影総合病院」と、古びた文字が刻まれている。
俺はキャリーバッグを引きながら自動ドアをくぐった。受付の女性が俺を見て、慌てて立ち上がる。
「あっ、佐藤先生ですよね。お待ちしておりました」
「今日からお世話になります。佐藤です」
俺の名前は佐藤渡。三十九歳。非常勤の医者だ。大学病院にもどこの医局にも所属していない。全国の病院を渡り歩きながら、人手の足りない場所に数ヶ月だけ入って働く。そんな生き方を、もう十年以上続けている。
幼い頃に父を亡くしてから、俺は一つの場所に根を下ろすことが怖くなった。人と深く関われば、いつかその人がいなくなる日を覚悟しなければならない。それなら最初から深く関わらない方がいい。俺はそう考えて生きてきた。
院長室に案内されると、白髪の男性が椅子から立ち上がった。三影大次郎。この病院の院長だ。
「遠いところをよくおいでくださいました。佐藤先生」
「こちらこそ、お世話になります。短い間ですが、よろしくお願いいたします」
大次郎は俺の顔をじっと見つめた。何かを確かめるような、そんな視線だった。俺は少し戸惑ったが、すぐに目をそらした。
院長室を出ると、廊下の向こうから足音が近づいてきた。白衣を着た女性が、患者のカルテを抱えて歩いてくる。切れ長の目に、品のある顔立ち。彼女は俺の前で足を止めた。
「佐藤先生ですね。内科の三影環と申します」
「院長先生のお嬢さんでしたか。佐藤渡です。よろしくお願いします」
彼女は軽く頭を下げると、忙しそうに次の病室へ向かっていった。
その日のうちに、俺は外来と病棟の両方で仕事を始めた。高齢の患者ばかりで、診察というよりは世間話の延長のようなやり取りが多い。だが、それを煙たがる医者では、ここは勤まらないのだろう。廊下で見かける環は、どの患者にも丁寧に膝を折って話しかけていた。住民から厚く信頼されていることは、すぐに分かった。
夕方、看護師長から世間話のついでに聞かされた。
「ここね、もうずっと赤字なんですよ。先生もいつまでいられるか分かりませんけど、患者さんだけは大事にしてあげてくださいね」
「もちろんです。経営のことは俺には分かりませんが、診療のことは任せてください」
どこの病院も似たような事情を抱えている。俺はただ役目を果たして、地を移るだけだ。
赴任して二週間ほど経った夜のこと。当直明けの俺は医局のソファで仮眠を取っていた。扉を叩く音で目を覚ますと、環が立っていた。
「夜分にすみません。少しお話、よろしいですか?」
環は向かいのソファに腰を下ろした。
「突然で本当に失礼な話なんですけど……佐藤先生にお願いしたいことがあるんです」
「お願いですか?」
「はい。あの、一時的でいいので、私の婚約者のふりをしていただけませんか?」
俺は一瞬、聞き間違えたかと思った。冗談を言うような相手ではない。環の目は真剣だった。
「事情を聞かせてもらえますか。さすがにそれだけでは返事ができません」
「父が半年も前から見合いの話を持ってくるんです。相手は理事会の関係筋で、病院の経営問題を片付けるためなんです。私はこの病院を自分のやり方で守りたいんです。誰かに譲り渡すつもりはないんです」
環は一度息を吸って続けた。
「でも父は、私一人ではこの病院は持たないと言うんです。結婚して後継ぎを決めれば、理事会も少しは静かになるはずだと」
「それで、俺ですか? 失礼ですが、もっと適任の方がいるんじゃないですか?」
「いえ、先生は数ヶ月でこの土地を離れる方です。だから無理に結ばれる心配もない。私の事情を理解してくださる方なら、お互い気持ちが楽だと思って」
合理的といえば合理的だ。利害だけで成り立つ関係。俺の生き方によく似ている。ただ、それでも普通なら断る話だった。昼間見た環の姿が浮かんだ。病室で患者の手を握っていた、あの真剣な横顔。
「俺で、本当にいいんですか? 環先生にとって悪い噂になるかもしれない」
「先生になら迷惑をかけてもいいと思える私がいるんです。勝手な言い分ですけど」
そう言って環は深く頭を下げた。ここで断れば、彼女はまた一人で抱え込むのだろう。それが、なんとなく見ていられなかった。
「分かりました。お引き受けします。ただ、病院のためという一点だけです。環先生に余計な負担はかけません」
「ありがとうございます。本当にありがとうございます」
翌日から、俺と環は周囲にお付き合いしていると伝えるようになった。看護師たちは目を丸くし、すぐに病院中の噂になった。廊下ですれ違う時、環はわざとらしく俺の腕に手を添える。俺もそれに合わせて、ぎこちなく微笑んだ。
週末、俺は環に連れられて御影家を訪れた。婚約者として正式に挨拶をするためだ。古い日本の門をくぐると、庭には松の木が悠然と枝を広げていた。玄関で出迎えてくれたのは、大次郎と祖母の房子だった。房子は八十を過ぎているとは思えないほど背筋が伸びていた。だが、俺の顔を見た瞬間、彼女の手がわずかに震えた。
「あなたが佐藤さんですか?」
「はい、佐藤渡と申します。突然のご挨拶で失礼いたします」
「ええ……どうぞ、お上がりください」
座敷に通されてからも、房子は何度も俺の顔をちらりと見た。大次郎も、湯のみを置く手が落ち着かない様子だった。
「あの、何か俺の顔についていますか?」
「いや、すまない。昔知っていた人によく似ているものでね」
それ以上は、二人とも語ろうとしなかった。環も不思議そうに祖母を見ていたが、話題はそのまま流れていった。
帰り道、環が小さな声で言った。
「祖母があんな風に動揺するのを、初めて見ました」
「俺も気になりますね。誰かに似ているとは、よく言われる方じゃないんですが」
翌日、俺と環は病院の地下にある資料室の整理を任された。新しい電子カルテの移行のため、古い記録を仕分ける必要があったのだ。俺たちは黙々と作業を続けた。やがて環が、奥の棚から色褪せた一冊のノートを取り出した。表紙には診療日誌と、満年筆で書かれている。
「これ、随分古いものですね。日付が……三十五年前です」
「貸してください」
開いてみると、丁寧な字で患者の症状と処置が記されていた。欄外には毎日のように若い医師の所感が綴られている。病院や患者への思い、地域医療への熱意。そこには一人の医者の生き方そのものが残されていた。
俺は何気なく、最初のページの担当医に目をやった。そして息を飲んだ。そのまま、しばらく動けなかった。
「佐藤先生、どうしました?」
「いえ、何でもありません。少し、続きを読ませてもらってもいいですか?」
俺はノートを閉じ、胸に抱えるように持った。資料室の電球が、じじっと小さく音を立てた。
その夜、俺は宿舎の机に古い診療日誌を置いた。表紙をめくると、丁寧な文字が並んでいた。担当医の欄には「佐藤吉夫」と書かれている。俺の父の名前だ。
胸の奥がじわりと熱くなる。幼い頃に亡くなった父のことを、俺はほとんど知らずに育った。母は父の話を好まなかった。医者だったということと、若くして病院で死んだということ。それだけが、俺の知る父の全てだった。
ページをめくる手が止まらなくなった。患者の名前と症状の下に、必ず短い所感が添えられている。
「田端の山田さん、今日は腰の調子が良いとのこと。畑仕事の話を嬉しそうにされていた」「夜間に子供の発熱。母親が雪の中を背負って来院。無事に下熱。母親の手の冷たさを忘れぬこと」
そんな一文一文が、父の人柄を浮かび上がらせる。俺は気づくと、涙が溢れていた。父は、こんな人だったのか。顔も声もろくに覚えていない父が、ページの向こうで確かに生きていた。
翌日、俺は環にこのことを打ち明けた。彼女は驚いた顔のまま、しばらく言葉を失っていた。
「お父様が、この病院に?」
「ええ。三十五年前、ここで働いていたようです。俺が四歳の時に亡くなりました。だから、医者だったことくらいしか知らなかったんです」
「だから、祖母もあんな顔を……」
環は何かを言いかけて、口を閉じた。二人の間に、しばらく静かな時間が流れた。
その週末、町では小さな夏祭りが開かれていた。病院の前の通りに屋台が並び、子供たちが浴衣で駆け回っている。環に誘われて、俺もしぶしぶ出かけた。婚約者という名目がある以上、姿を見せておく必要があったのだ。
屋台の前で焼きそばを買っていると、年配の女性が環に声をかけてきた。
「環ちゃん、この前は本当にありがとね。うちの主人、おかげ様で元気にしてます」
「よかったです。お薬は、欠かさず飲んでくださいね」
別の男性が、俺に向かって頭を下げる。
「先生、噂は聞いておりますよ。環先生をよろしく頼みますよ」
一人、また一人と声をかけられる。誰もが環のことを、家族のように呼ぶ。帰り道、環が言った。
「この景色をなくしたくないんです。ここに病院があるから、この人たちは安心して暮らせるんです」
「分かります。俺も、今夜それを思い知らされました」
翌日、環と一緒に山奥の集落へ往診に出た。道なき道を軽自動車で進み、患者の家を訪ねる。
「ああ、ありがたい。先生が来てくれるだけでもう半分治ったようなもんですわ」
帰りの車中、俺はハンドルを握りながら環に言った。
「父も、こうやって患者の家を回っていたんでしょうね」
「きっと、そうだと思います」
父の足跡を、俺は今、自分の足で辿っている。そんな気がした。
夏が終わる頃、理事会が緊急に招集された。俺は環の付き添いという形で、廊下の椅子に座って待った。会議室の扉の向こうから、男の太い声が漏れてくる。理事の大野の声だった。
「もう限界です。三期連続の赤字、設備の更新も滞っている。今売却すればまだ買い手はつく。職員の雇用も引き継がせる条件を出します。これ以上、傷を深くしてどうするんですか?」
「大野さん、この病院は先代から預かったものだ。簡単に手放せるものではない」
「先代、先代と、いつまでその話を続けるんですか?」
大野の声には怒りが混じっていた。扉が開いて、環が出てくる。表情が硬い。俺は黙って隣に並んだ。廊下を歩きながら、環は小さく息を吐いた。
「次の理事会で、売却の決議が取られそうです」
「対抗策はあるんですか?」
「正直、厳しいです。父も私も、経営の数字では大野さんに勝てません」
環は壁に凭れて目を閉じた。強気な彼女が、初めて見せる弱さだった。
数日後、俺は院長室で大次郎と二人になった。大次郎は縁側で古い写真を手に取っていた。
「佐藤先生、君のお父さんのことを、知っていたんだろう」
「日誌を、見つけました」
「そうか……」
大次郎は写真を置いて、深く椅子に腰を下ろした。
「吉夫君は立派な医者だった。私は彼に随分助けられた。あの事故さえなければ、この病院ももっと違う形になっていたかもしれん」
「事故ですか?」
「昔の話だ。今となってはもう……」
それ以上、大次郎は語ろうとしなかった。父はこの病院で何があったのか。なぜ、去ることになったのか。
数日後、俺と環は再び資料室にこもった。三十五年前の記録を隅から隅まで探した。
「ありました。三十五年前の事故報告書です」
紙はすっかり茶色く変色していた。そこには、ある患者の急変と死亡について書かれていた。「担当医・佐藤吉夫のミスにより死亡に至った」と結論されている。末尾には吉夫の署名と、退職届の写しが添えられていた。
俺は黙って報告書を読み返した。だが、何度読んでも違和感が消えなかった。
「環先生、この記録、おかしくないですか? 投薬の時間と急変の時間が合わない」
「本当ですね。それに、立ち合った看護師の名前がどこにも書かれていません。通常なら複数のサインが残るはずです」
「これは一人の判断にしては、不自然すぎる」
俺たちはその前後の議事録を探した。だが、ちょうどその時期の理事会議事録だけが、棚から抜け落ちていた。他の年は揃っているのに、その三ヶ月分だけがない。
「誰かが抜いたんでしょうか。偶然にしては、できすぎている」
俺たちは当時を知る人物を探した。その一人が、環の祖母の房子だった。
その夜、御影家を訪れた俺たちに、房子は仏壇の前で長い間手を合わせていた。やがて振り向いた房子の目は、潤んでいた。
「吉夫先生は、悪くなかった。あの人は、何も悪くなかったんですよ」
「おばあちゃん、知ってたの?」
「全部は知りません。ただ、吉夫先生が辞めた夜、うちの主人と何時間も話していました。最後に吉夫先生は笑って帰って行ったんです。罪を犯した人間が、あんな顔をするはずがない」
房子は目元を拭った。
「私はずっと黙っていました。主人が墓場まで持っていけと言ったから。でも、もう三十五年です。吉夫先生の息子さんが、こうして帰ってきてくれた。これはきっと、意味のあることなんでしょう」
俺は何も言えなかった。帰り道、環が静かに口を開いた。
「先生、私、決めました。お父様の名誉を必ず取り戻します。それと病院も守る。二つはきっと、一つのことなんです」
「俺も同じ気持ちです。父のためだけじゃない。この病院を、環先生を、ここで生きる人たちを、もう知らないふりはできません」
夜空に星がまたたいていた。
真夜中の医局で、俺はもう一度診療日誌を最初から読み返していた。最後のページに辿り着いた時、俺はふと表紙の厚みに違和感を覚えた。指でなぞると、わずかに膨らんでいる。内張りを慎重に剥がしてみた。中から、二つ折りの封筒が滑り落ちた。宛名には「渡へ」と書かれている。父の字だった。
俺は思わず椅子から立ち上がっていた。誰もいない医局で、自分の心臓の音だけが大きく響いた。封を切る手が震えた。便箋は四枚。インクは少し薄れていたが、文字ははっきりと読めた。
「渡。お前がこれを読む頃、父さんはもうこの世にいないかもしれない」
そんな書き出しだった。手紙には、三十五年前のことが綴られていた。亡くなった患者は、当時の理事の親族だった。急変の原因は、別の医師による投薬ミス。だが、その医師には妻と幼い子供がいた。父は自分が責任を負うことで、その家族の生活と病院そのものを守ろうとしたのだった。
「病院がなくなれば、この町の患者たちが行き場を失う。一人の医者が辞めるだけで済むなら、それでいい。父さんは医者として、それを選んだ」
そう書かれていた。最後の一枚に、俺への言葉があった。
「渡。父さんはお前に済まないと思っている。お前が大きくなる姿を見届けてやれない。だが、医者として恥ずかしい生き方はしていない。それだけは信じてほしい」
俺は便箋を握ったまま、しばらく動けなかった。父の顔はもう思い出せない。だが、この手紙の中に、確かに父がいた。
「父さん……」
窓の外で、夜が明け始めていた。
その日の午後、臨時の理事会が開かれた。俺と環は父の手紙と、調べ上げた当時の記録を持って会議室に入った。理事たちが顔を上げる。大野が居心地悪そうに眉を潜めた。
「皆さんに見ていただきたいものがあります」
環が静かに資料を配る。父の手紙の写し、矛盾だらけの事故報告書、消えた議事録の存在、そして当時の看護師の証言。俺たちはこの数週間で、できる限りの裏付けを集めていた。
会議室が静まり返った。大野は手紙の写しを手に、長い間それを見つめていた。やがて、その手が小さく震え始めた。
「この、薬ミスをした医師というのは……」
「大野さん、もう察しはついているだろう。父です。私の父だ」
大野は椅子に深く沈み込んだ。顔を両手で覆い、長い息を吐いた。他の理事たちは、誰も言葉を発せなかった。
「父は晩年、酒に逃げて死にました。何かに苦しんでいるのは、子供の私にも分かりました。でも、何も話してくれなかった。父が背負っていたものが、これだったのか……」
大野は顔を上げた。目が赤かった。
「佐藤先生、お父様に、私の父の代わりにお詫び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした」
俺は首を横に振った。
「父は誰かを恨んで去ったわけじゃありません。手紙にも、それは書かれていません。大野さん、もう終わりにしましょう」
大野はゆっくりと立ち上がり、深く頭を下げた。売却計画は、その場で撤回された。
一ヶ月後、病院のロビーには新しい額が掛けられていた。父の写真と、診療日誌の一説が並んでいる。
「夜間に小児の発熱。母親が雪の中を背負って来院。無事に下熱。母親の手の冷たさを忘れぬこと」
訪れる患者が足を止めて、それを読んでいく。
季節は秋になっていた。俺の任期はもうすぐ終わろうとしていた。本来なら、次の赴任先へ移る準備を始める頃だ。だが、俺はまだ荷物を一つもまとめていなかった。
夕方、俺は父の手紙をもう一度開いた。
「いつかお前がどこかで、誰かのために手を差し伸べる大人になってくれたら」
その一文を、何度も読み返した。俺はずっと逃げていたのだ。どこにも根を下ろさず、誰とも深く関わらず。そうやって自分を守ってきた。だが、この町で、この病院で、環のそばで、俺は初めて守りたいと思える場所に出会っていた。
その夜、俺は病院の屋上に環を呼んだ。
「環さん、話があります」
「はい」
「この病院に残ろうと思います。非常勤じゃなく、ここの医師として」
環は息を飲むように、こちらを向いた。
「それともう一つ。偽りの婚約を、本当のものにしてほしいんです。あなたのそばで、これからも生きていきたい。父が守ろうとしたこの場所で、あなたと一緒に」
環の目に涙が浮かんだ。
「私、ずっと待っていました。先生がそう言ってくださる日を」
風が吹いて、環の髪が揺れた。俺は黙って、彼女の手を取った。
翌年の春、俺と環は正式に結婚した。結婚式の日、房子は車椅子から立ち上がり、環の手を握って涙を流した。
「吉夫先生、見てくれていますか? あなたの息子さんが、こんなに立派になって、環と一緒になってくれましたよ」
大次郎は白い袴で、何度も目元を抑えていた。
数年が経った。俺と環は夫婦として、御影総合病院で働いている。環は理事として経営の立て直しに奔走してくれている。病院の経営はまだ楽ではない。だが、潰れる気配は、もうどこにもなかった。
休日の午後、俺は病院の裏庭のベンチに座っていた。小さな娘が芝生の上をよちよちと駆けていく。環がその後ろから、笑いながら追いかけていた。秋の柔らかい日差しが、二人の上に降り注いでいる。
「父さん。俺はようやく、ここに居場所を見つけました。あなたが守ろうとしたこの病院で、愛する人と子供と一緒に生きています」
空を見上げた。雲の切れ間から、光が斜めに差している。父の声が聞こえた気がした。



