「フリーダンスって、要するにニートってことじゃないの?」…

「フリーダンスって、要するにニートってことじゃないの?」...

あの言葉で、バーの空気が一瞬で凍りついた。
「フリーダンスって、要するにニートってことじゃないの?」
週末、大学時代の友人・木本匠に頼まれて、合コンの人数合わせに駆り出された。期待なんてしていなかったが、初対面の令嬢に、俺の恰好を上から下まで睨むように見て、吐き捨てるようにそう言われた。
「私たち、弁護士さんと飲めるって聞いて来たのよ。どうしてこんな人を連れてくるの?」
隣のスーツ姿の男も口を閉ざし、木本も慌てて目をそらす。華やかな照明の下で、俺に向けられるのは冷たい視線ばかりだった。
「あんたみたいな社会のゴミと同席するなんて、時間の無駄よ。とっとと帰ってくれない?」
俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。この空気では、どんな返しをしても無駄だと思ったからだ。
「じゃあ、俺は失礼するよ」
軽く会釈して出口へ向かおうとした、その時だった。
店の奥から、今話題の若手歌手が現れた。彼女は俺の姿を捉えると、驚いたように口を開く。
「あれ? 作曲家さん、どうしてここに?」
周囲の視線が一気に集中した。さっきまで俺を無能呼ばわりしていた連中が、目を丸くして固まっている。
「あなた、まさかあの天才作曲家?」

俺の名は杉崎優。都内でフリーランスの音楽関係の仕事をしている。とはいえ、もっと自由でクリエイティブなイメージとは違い、実際は細かなスケジュール管理や雑務に追われる日々で、収入も不安定だ。今日は徹夜明けで、ようやく納品を終えたばかりだった。
早く帰って眠りたい。そう思いながら街を歩いていると、不意に肩を叩かれた。
「おい、ゆうじゃないか」
振り返ると、そこには大学時代の同級生・木本が立っていた。彼は今や弁護士として働いているらしい。久しぶりだな、と笑いながら、彼は言った。
「なあ、今から合コンないか? 人数足りなくて困ってるんだ。うちの事務所の連中と、ちょっとした令嬢たちの集まりなんだが」
どうやら彼の仲間が主催する合コンらしい。こんな場に俺みたいなラフな格好の人間が混ざっていいものかと断ろうとしたが、彼の必死な様子と昔からの縁で、1時間だけという約束で妥協してしまった。
向かった先は、都心の高級感漂うバー。すでに数人の弁護士風の男たちと、華やかなドレスアップした女性たちがいた。みんなきちんと決めている。俺だけが場違いな雰囲気だった。
挨拶を済ませると、その中の一人、佐田リカという女性が俺を睨みつけた。
「ちょっと失礼だけど、そのラフな格好、あなたも弁護士か何か?」
「いや、違う。フリーランスで音楽の仕事をしてるんだ」
「フリーランス? 要するに定職についてないってことでしょ。ニートみたいなもんじゃないの?」
「まあ、解釈によってはそうかもしれないけど」
言い返す気力もなく、適当に流そうとした。だが、彼女はさらに続ける。
「私たちは、きちんと資格を持って頑張ってる人たちと飲みたいわけよ。なんでこんなの連れてきたの?」
木本が慌てて彼女をなだめるが、場の空気は重くなる一方だった。俺は耐えられなくなり、席を立つことにした。
「悪いな、木本。せっかく呼んでくれたけど、俺は帰るわ」
そう言って出口へ向かおうとした、まさにその時だった。

「あれ? もしかして、歌手の星野彩佳じゃない?」
店内が突然ざわめき始め、カウンター席から立ち上がった女性が、客たちに取り囲まれていた。名前は星野彩佳。ネット発の新人アーティストで、特に配信限定でリリースした『サニーハート』は、ストリーミングのチャートを席巻し、圧倒的な人気を誇っていた。
彼女は周りを取り囲むファンたちに困ったような笑顔を見せながら、ふと俺の存在に気づいた。視線が交わった瞬間、彼女は目を見開いた。
「プロデューサーさん? 杉崎さんですよね?」
「え? ああ、うん」
彼女はマスクを外して、嬉しそうに微笑んだ。
「皆さん、この方は『サニーハート』を書いてくれた作曲家で、プロデューサーでもあります」
一瞬、合コンの参加者たちの間に沈黙が流れた。さっきまで俺を嘲笑していた連中の顔が、驚きと困惑に染まっていく。木本も「お前、そんなにすごかったのかよ」と目を丸くして呟いた。
しかし、俺としては複雑な気持ちだった。作曲活動は本名でやっていないため、こういう場で名前が出ると困るのだ。だが、それどころではなくなった。ファンが彩佳にサインを求め、瞬く間に店内は混乱状態になった。
「すみません。彼女も疲れてますから、また別の機会に!」
俺は彩佳の腕を引いて、人混みを掻き分けながらバーの外へ出た。夜風に当たってようやく息をつく。
「助かりました、杉崎さん。でも、あれ、友達じゃないですよね」
「ああ、まあ……同級生に無理やり連れてこられただけなんだよ」
彩佳は呆れたような笑みを浮かべた。
「そういえば、彩佳はなんであんな店に?」
「レコーディングの打ち合わせです。終わって店を出ようとしたら、あっという間にバレちゃって。まだテレビとかにもほとんど出てないのに、ネットで顔が知られすぎてて」
それから少し話すうちに、彼女の緊張が徐々に解けていくのが分かった。
「杉崎さんがすごいんです。私がこうして人気になれたのも、杉崎さんが書いてくれた曲があったから。あの時、声をかけてもらえなかったら、私はずっと売れない歌手のままでした」
「そんなことないさ。ただ、君の声があまりに良かったから、歌ってみないかって声をかけただけだ」
そう言うと、彩佳は照れくさそうに笑った。

それから数日後、俺は彩佳とスタジオで新曲のアレンジについて打ち合わせをしていた。彼女は以前よりもずっと積極的に意見を言うようになっていた。スケジュールが詰まるにつれて、アーティストとしての自信がついてきたのだろう。
打ち合わせが一段落したところで、不意にスマホが震えた。見覚えのない番号だ。出てみると、意外な声が聞こえてきた。
「もしもし、杉崎さん……わ、私、佐田です。この間は本当に失礼なことを言ってしまって……」
どうやら、あの令嬢の佐田リカだった。木本から番号を聞いたらしい。
「いや、俺の方は別に気にしてないよ」
「そ、それでもあの時は本当にごめんなさい。杉崎さんがこんなにすごい作曲家さんだと知らずに……。とにかく直接お詫びをさせてください。今どこにいらっしゃるんですか?」
謝罪に来るという。断るのも面倒だと思い、俺はスタジオの場所を教えた。
しばらくして、スタジオの入口がノックされた。現れたのは、前回の派手なイメージとは打って変わって、シンプルな白いブラウスにタイトスカート姿のリカだった。
「この間は本当に申し訳ありませんでした!」
そう言って、彼女は深々と頭を下げた。彩佳も挨拶を交わすと、リカは真剣な表情で話し出した。
「今日は謝罪以外にもお話があって。私、父が経営する桜エンターテイメントの関連レーベルで働いているんです。今回、新しいプロジェクトを立ち上げるんですが、もしよろしければ、杉崎さんと星野さんに参加していただけないかと思って」
桜エンターテイメントは、国内の音楽業界のトップクラスの大手レーベルだ。その社長の令嬢が目の前にいるとは、想像もしていなかった。
「ネット発の勢いのあるアーティストを集めようとしていて、星野さんの人気や杉崎さんの作曲センスはぜひとも欲しいって。もちろん、条件面でもできるだけ用意します」
そう言って、彼女はプロジェクトの概要資料を見せてくれた。破格の予算が組まれているようで、全国ツアーや海外進出まで見据えた大規模なプロモーションが計画されていた。
彩佳の夢を叶えるには、この話は魅力的だった。しかし、すぐに決断できるものでもない。
「ひとまず返事は保留でいいですか? 今の事務所との関係もあるので、ちゃんと整理したいんです」
「はい、もちろんです。父も星野さんの負担にならないよう最大限調整すると言っていますので、よろしくお願いします」
リカはそう言い残し、深くお辞儀をしてスタジオを後にした。

それから1週間ほど、俺と彩佳は今後のキャリアについて真剣に話し合った。その結果、大手レーベルとの契約を結ぶ方向に傾いていった。彩佳の才能を伸ばすには、この大きなステージが必要だと確信したのだ。
最終的に契約を交わしたのは、桜エンターテイメントの本社にある豪華な会議室だった。リカの父親で、桜エンターテイメントの社長が姿を見せ、温かい笑顔で握手を求めてきた。
「杉崎さんの作るメロディは素晴らしい。これはぜひ、うちの力で世界に広めたいと思っております」
順調に話は進み、俺と彩佳は正式に桜エンターテイメントのレーベルと契約を交わした。
その後は、レーベルの強力なプロモーション体制のもと、彩佳の知名度は爆発的に上がっていった。テレビ出演、CMタイアップ、ドラマ主題歌、街中の大型ビジョン。どこを見ても彩佳の姿があった。
最初は喜ばしいことだった。しかし、彩佳がどんどん遠い存在になっていくような寂しさも、同時に感じていた。互いのスケジュールが空かず、打ち合わせもオンラインで済ませることが増えた。画面越しの彼女は、どこか疲れていた。以前のように熱く語り合った日々が嘘のように思えた。

そんなある日、深夜のスタジオで偶然彩佳と顔を合わせた。彼女はマネージャーも連れず、疲れた様子で俺の前に立った。
「杉崎さん、ちょっとだけ話せますか?」
誰もいないスタジオで、彼女はぽつりと本音を漏らした。
「実は、最近思うんです。私の歌が、私の歌じゃないみたいで。忙しすぎて、一曲にかけられる時間があまりにも少なくて。自分が本当に納得できるまで向き合えないまま、曲が世に出ていくのが怖いんです」
彩佳の瞳は揺れていた。アイドルのように祭り上げられ、華やかな世界にいるにも関わらず、彼女は純粋に歌を届けたいと願う一人のアーティストだった。
「でも、私は恵まれてるのも分かってるんです。こんなに大手のレーベルで、大勢の人に聞いてもらえる。多分、夢のような環境なんだと思います。でも、何か違うんです」
「今が忙しすぎるだけだよ。君が本当に届けたい歌があるなら、きっと大丈夫。俺も手伝うから」
そう言って彼女の肩にそっと手を置くと、彩佳は唇を噛みしめ、ポツリと涙をこぼした。泣く場所すらなかったのだろう。彼女は誰にも弱音を吐けず、走り続けていた。
「私、やっぱり杉崎さんと一緒に歌を作りたい。駆け足のままじゃダメなんです」
「ゆっくりでいいんだ。俺たちが納得できるスピードで、曲を作ろう」
そう言うと、彩佳の涙は少しずつ治まっていった。

あの夜以来、彩佳のために、俺には書きたい曲が頭に浮かんでいた。そして数日後、完成した新曲は驚くほどの手応えがあった。彩佳に聴かせると、彼女の目には再び涙が浮かんでいた。
「ごめんなさい、急に泣いたりして。でも、言葉にならないくらい嬉しくて」
「実は、初めて会った時のことをイメージして書いたんだ。路上で歌ってた頃の、あのちょっと不器用な熱量とか、純粋さ。今の君にも通じる思いが、ちゃんと形になればいいなと思って」
「ありがとうございます。絶対、これを自分の声で最高に仕上げたいです」
そう言って、彩佳は真っ直ぐに俺を見つめた。

翌日、俺は社長に新曲のデモを聴かせるために、桜エンターテイメントの本社を訪れた。社長はデモを一通り聴くと、感心したように言った。
「おお、これはまた素晴らしい曲じゃないか。星野さんにぴったりだ。決めた。これは、新人に歌わせよう」
「新人ですか?」
「実はな、リカが歌手になりたいと言ってきてね。以前から声楽を学んでいて、歌がうまいんだよ。この曲は、彼女のデビューに最高だと思ってね」
俺は言葉を失った。この曲は、彩佳のために書いたものだ。
「ちょ、ちょっと待ってください。この曲は星野さんのために書いたんです」
しかし、社長は気にした様子もなく言い放った。
「星野さんはもう十分人気がある。君の曲を歌わなくても困りはしないだろう。むしろ、新人を育てるには最高の名刺になる。まあ、考えておいてくれ。星野さんには別の曲を用意する」
そう言って、社長は会議室を出て行った。俺は一人、硬い沈黙の中で立ち尽くすしかなかった。
その夜、俺は彩佳に正直に話した。
「社長の方針で、この曲を新人に歌わせたいらしい。しかも、その新人っていうのが佐田リカなんだ」
「え、私の曲を……新人に?」
彩佳の顔が一瞬で曇った。彼女は必死に感情を抑えようとしている。
「俺が社長に話してくる。この曲は絶対に、お前のために書いた曲なんだ」
そう言って立ち上がろうとすると、彩佳が俺の腕を掴んだ。
「大丈夫です。お願いしても……どうしようもないですから。私がもっと実力をつければ、きっとまたいい曲を書いてもらえますから」
無理やり笑顔を作る彼女を見て、俺は胸が締め付けられた。

だが、俺は納得できなかった。後日、レーベルのスケジュールに従って、俺はリカとスタジオでレコーディングをすることになった。リカは以前の高飛車な態度はなりを潜めていたが、確かに声楽を学んできたというだけあって、技術は素晴らしいものだった。ピッチも正確で、伸びやかな声を響かせる。しかし、一曲歌い終えた後、彼女はこう言った。
「この曲、星野さんのために作った曲なんですって? でも、ぶっちゃけ、あの子顔だけじゃないですか。私に任せてくれれば、完璧に歌いこなして見せますよ」
その一言に、俺ははっとした。あの合コンで見せた態度が頭をよぎる。完璧な技術の裏に、傲慢さが見えた。
「技術的には、君なら完璧に歌いこなせるかもしれない。でも、俺は君とは一緒にやっていけない」
「はあ? どういうこと? 私が下手だって言うの?」
「そうじゃない。あなたは確かにうまい。でも、歌にはその人の人柄が滲み出るんだ。あなたの歌には傲慢さが出てる。テクニックで押し切ろうとしているけど、心を揺さぶる何かが伝わってこない」
リカは激昂し、スタジオを飛び出していった。
「ふざけないで! 私にはパパがついてるのよ! 今すぐ言いつけてやるから!」
その後、当然のように社長から呼び出しがかかった。
「杉崎君にはがっかりだ。娘が傷ついたんだぞ。君は首だ。契約解除だ。出て行ってくれ」
こうして、俺は桜エンターテイメントとの契約を解消され、再びフリーランスに逆戻りした。大手レーベルとの契約が消え、連絡先も仕事も失った。しかし、全く後悔はなかった。
彩佳から連絡が来た。公園の片隅で、彼女は言った。
「私も、レーベルを辞めます」
「待て、そんなのまずい。お前はもう大勢のファンに支持されてる。こんな形で辞めたら、社長の妨害だって壮絶だぞ」
「構いません。あそこにいても、私の歌はなくなっちゃう。杉崎さんがいないなら、なおさら意味がないんです」
彼女の瞳から涙がこぼれ落ちた。俺は彼女の肩を支え、深く息を吸った。
「分かった。じゃあ、もう一度二人でやり直そう。あの曲を大ヒットさせて、見返してやろう」
「はい。もう一度、あの曲を歌わせてください」

それから数日後、俺は彩佳とレコーディングの準備を進める一方、SNSやニュースで驚くべき情報を目にした。佐田リカが、俺が書いた曲とほぼ同じ曲でデビューするというのだ。作曲者は全く知らない名前に書き換えられていた。
「やられたな。レーベルのデータを利用されたんだ」
俺は頭を抱えた。相手は業界のトップクラスの大手レーベルだ。フリーの作曲家が訴えたところで、勝ち目はあるのか。そう考え込んでいると、大学時代の友人である木本が突然家に現れた。
「お前、あの曲、盗まれたんだろ?」
木本はビールをプルタブを開けながら、静かに言った。
「ああ、もう知ってたのか」
「やっぱりな。で、どうすんだよ?」
「相手は大手だ。下手に争えば、潰されるかもしれない」
「お前、何言ってるんだ? 俺がいるだろ。弁護士の俺が」
木本は力強い眼差しで俺を見た。
「お前は俺みたいに、親や周りに追い立てられるようにして弁護士になった。でも、お前は違う。自分の意思で音楽の道を選んで、成功してる。お前の曲は、ちゃんと評価されるべきだろ。こんなところで終わってほしくない。訴えろよ。曲を書いたのはお前なんだって、胸を張って言え!」
その言葉に、俺は心を動かされた。そうだ、このまま黙っているわけにはいかない。
「分かった。やってみるよ」
こうして、俺は作曲者として、そして木本は弁護士として、彩佳のチームも含めて、怒涛の日々が始まった。法廷では、桜エンターテイメントの杜撰さが次々と明るみに出た。著作権侵害、契約書の違法な追加、二重契約。それらが暴露されるにつれ、世間は騒然とした。
最終的に裁判所は、作曲者が俺であるとの判決を下し、桜エンターテイメントに多額の損害賠償と謝罪広告の掲載を命じた。社長は過去の契約違反も複数発覚し、桜エンターテイメントは業界最大級の不祥事として大きく報じられた。
その後、判決後もニュースは尽きなかった。あの裁判の最中、リカは相変わらずだった。散々な結果になったあと、街角で偶然再開したリカは、すっかり痩せてやつれていた。
「本当は、私も自分の力で歌手になりたかったの。パパの影響力を借りれば簡単にステージに立てると思って、あんなことをしちゃったけど……結局、誰も私の歌なんて聞いてくれなかった。私は、父の人形だっただけ」
そう呟いて、彼女は夜の闇に消えていった。俺は、ただその背中を見送るしかなかった。
一方で、俺と彩佳は、取り戻した曲を正式にレコーディングし、配信リリースすると、それは驚くほどの速さでヒットチャートを駆け上がっていった。彩佳の切ないほど純粋な歌声と、曲本来のアレンジが、多くの人の心を捉えたのだ。さらに、このブームに目をつけた海外の大手レーベルから、世界挑戦のオファーが来た。
「俺たち、ちゃんと世界に行けるんじゃないか」
「そうですね。杉崎さんと一緒なら、どこへでも行けます」
今日もレコーディングを終えた後、クタクタに疲れた彩佳が、俺の前にふらりと現れた。
「ねえ、頑張ったからご褒美ください。何でもいいです」
「ご褒美って、俺にできることなんて高が知れてるぞ」
そう言うと、彩佳はいたずらっぽく微笑んだ。
「じゃあ、私とも合コンしてください」
「え、合コン?」
「ただし、私と二人きりの合ですけど」
「そ、それは合コンじゃなくて……」
「いいじゃないですか。私が頑張ったご褒美なんですから」
そう言って、彩佳は軽い足取りでスタジオの外へ歩き出した。すべてをかけた一曲が奇跡のように蘇り、今や世界へ羽ばたこうとしている。これまでの苦労も試練も、すべてが俺と彩佳、そして仲間たちを強くしてくれた。次なる舞台は海外。夢はまだまだ終わらない。俺たちは、どこへでも行ける。音楽と、この思いがあれば。

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