これは仕事だ。俺がやれと言ったら、やるんだよ。
温造司という上司は、そう言って無理やり仕事を押し付けてくる。自己主張が苦手な俺は、断ることもできず、ただ必死にこなす日々を送っていた。
しかし、ついにキャパオーバーを起こし、とんでもないミスを犯してしまう。取引先との商談をすっぽかしてしまったのだ。
怒り狂った社長に絞られ、俺は移動(左遷)を言い渡される。
「移動する必要なんてないですよ。私に任せてください」
そう言って現れたのは、新人社員の高橋海。
彼女は俺の無実を証明するため、社長室へと乗り込んでいく。
高橋は防犯カメラの記録や倉庫の入退室記録をもとに、俺がはめられた証拠を突きつけた。
犯人は、俺に仕事を押し付けていた大津だった。
さらに、高橋はボイスレコーダーを取り出し、大津が彼女に迫った時の録音を再生する。
「私を首にするのなら、取引中止の覚悟はできていますか?」
高橋の正体は、日本最大級のグループ会社・高橋グループの社長令嬢。
その事実を知った社長と大津は、顔を青くして震えるしかなかった。
調査の結果、大津は俺のパソコンから勝手にメールを送信していたことが判明。
さらに、他の女性社員への不適切な行為も発覚し、大津は自主退職に追い込まれた。
大津が去った後、俺は主任に昇格。
今まで日の目を見なかったのは、大津のせいだったのだとようやく分かった。
「真面目に働くあなたが、大津さんよりずっと上司にふさわしいですよ」
高橋はそう言って、相変わらず優しくサポートしてくれる。
彼女がなぜこの会社で働いているのか聞くと、
「父は私に甘いので、そのままでは成長できないと思ったんです」
と、複雑そうな表情で答えた。
楽な道を選ばず、真面目に働く彼女の姿は、誰よりも輝いている。
俺は彼女の窮地を救ってくれた恩を忘れず、働きやすい職場を作っていくと決めた。
それが、同じように苦しむ仲間たちへの、せめてもの恩返しになるのだから。



