PTA役員会の初日。会議室の扉が開き、根本さんと呼ばれる女性が入ってきた瞬間、それまで賑やかだった保護者たちが一斉に沈黙した。私は挨拶しようと近づいたが、彼女は私を品定めするようにじろじろと見つめ、赤い唇を歪めて言った。「あなた、中卒の旦那さんがいるんでしょ?今度、本社に中卒のバカが移動してくるって夫が嘆いてたのよ。あなたからも早く会社を辞めるよう言ってよ」
私は冷静に抗議した。「誤解があるようです。あなたの夫がお勤めの会社は、私の夫の会社です」根本さんはきょとんとした顔で「何言ってるの?」と首をかしげた。私は深く息を吸い、告げた。「私の名前は木下正恵。夫が本社へ移動になり、家族三人でこちらへ引っ越してきました」部長夫人の顔色が一瞬で変わったのは、言うまでもない。



