「久しぶりに2人で外食でもどうだ?」と、40年間無視し続けた夫が突然言ってきた。3ヶ月間、話しかけても無視された。目も合わせず、透明人間扱いされてきたのに、今更何を言ってるの?その言葉を聞いた瞬間、私はエプロンを外し、決意が固まった。家事も全部やってきた。給料は小遣い程度だと馬鹿にされてきた。それでも耐えてきたのに、この仕打ちはあまりにも酷すぎる。私は静かに引き出しを開けて、ある書類を取り出…

「久しぶりに2人で外食でもどうだ?」と、40年間無視し続けた夫が突然言ってきた。3ヶ月間、話しかけても無視された。目も合わせず、透明人間扱いされてきたのに、今更何を言ってるの?その言葉を聞いた瞬間、私はエプロンを外し、決意が固まった。家事も全部やってきた。給料は小遣い程度だと馬鹿にされてきた。それでも耐えてきたのに、この仕打ちはあまりにも酷すぎる。私は静かに引き出しを開けて、ある書類を取り出...

「久しぶりに2人で外食でもどうだ?」

私は耳を疑った。同時に、怒りとあきらめが込み上げてきた。3ヶ月ぶりに夫が発した言葉がこれだった。台所で夕食の支度をしていた私の手がピタリと止まり、振り返ると、リビングのソファーに深く腰を下ろした夫が、まるで何事もなかったかのような顔で私を見ていた。

40年連れ添った夫。この3ヶ月間、私の存在を完全に無視し続けてきた男。話しかけても返事をしない。目も合わせなかった。まるで私が透明人間にでもなったかのような辛い日々がずっと続いていた。それが、今更外食に誘うというのか。

私は静かにエプロンを外した。胸の奥で燃えていた怒りが、冷たい決意に変わった。そして夫の目をまっすぐ見つめていった。

「はい、これで最後よ。」

夫の顔から、見る見るうちに血の気が引いていった。私が差し出したのは、すでに署名と押印を済ませた離婚届だった。

「何を3ヶ月も無視しておいて、今更何を言っているの?この瞬間から、40年間の結婚生活に終止符が打たれることになった。」

私は63歳。地域の総合病院で看護師として31年間働いてきた。結婚してから9年間は専業主婦だった。息子が小学校に上がったタイミングで看護師の仕事を始めた。朝5時に起きて弁当を作り、病院で8時間働く。帰宅後は夕食の支度、洗濯、掃除。それが私の40年間だった。

夫の正しは、地元の中小企業で経理として働いていた。「俺は外で稼いでるんだ。家のことはお前に任せる。」それが彼の口癖だった。私も働いていたのに、家事は全て私の担当だった。息子の大学進学時には400万円、住宅ローンの繰り上げ返済500万円も、私がコツコツ貯めたお金だった。

家族のために、私は全てを捧げてきた。専業主婦の頃は「誰のおかげで飯が食えると思ってるんだ」と言われた。働き始めてからは「お前の給料なんて小遣い程度だ」と下げられた。それでも私は耐えてきた。家族のためだと、自分に言い聞かせてきた。

しかし、3ヶ月前、夫は突然口を聞かなくなった。話しかけても無視。食事を用意しても、無言で食べるだけ。40年連れ添った夫が、私の存在を消し去ろうとしていた。

無視が始まって1週間が経った頃、私はある違和感に気づいた。31年間病院で働いてきた私は、心臓発作の前兆を見抜く目を持っている。夫の顔色が悪い。動作がぎこちない。少し歩いただけで息切れをしている。

私は看護師としての勘で、何かおかしいと感じた。でも、それ以上に、長年連れ添った妻としての直感があった。夫が何かを隠している。病気のことを、あるいはもっと別のことを。

夫を無視し続けたのは、体調が悪いからなのか。それとも、私に対して何か怒りを抱えているのか。何も言わないまま、私は行動を起こした。静かに、夫の内ポケットを確認してみた。

すると、そこには見覚えのない書類が入っていた。それは、夫が私に内緒で準備していたものだった。私はそれを見つけた瞬間、体の力が抜けた。怒りよりも、深い悲しみと失望が込み上げてきた。

私は夫を問い詰めた。

「これは何?何でこんなものを準備してるの?」

夫は口ごもりながら、急に言い訳を始めた。何か言いかけては止め、また何か言おうとして。結局、彼は完全に言葉を失った。私は彼の目を見て、静かに言った。

「もう十分よ。私は耐えてきた。でも、今度ばかりは許せない。」

私は離婚届を取り出し、自分の署名と押印をした。夫は何も言えなかった。ただ、呆然と私を見つめていた。

「もう、意味はないわ。私は決めたの。」

私はそう言って、離婚届を夫に差し出した。彼の手は震えていた。それでも、私は止まらなかった。40年間の思い出が走馬灯のように頭をよぎった。出会った頃の優しさ、結婚式の日の笑顔、息子が生まれた日の喜び。それら全てが、一瞬で崩れ去った。

私が離婚届を彼に押し付けるように渡した時、夫はようやく口を開いた。

「待ってくれ。本当は……最近、体調が悪くて。それで、つい……」

私は手を挙げて、彼の言葉を遮った。

「いいえ、本当のことを言って。何を隠してるの?」

夫は長い沈黙の後、涙を浮かべて白状した。最近、会社をクビになった。病気もしていた。私には言えなかった。プライドが邪魔をして、何も言えなかったのだ。

私は彼の話を聞きながら、心が揺れた。でも、長年の傷は消えない。40年間、十分苦労してきた。私は彼を許せなかった。

「それでも、無視は許せない。私を人として見ていないような態度。耐えられないわ。」

私は立ち上がって、バッグを手に取った。

「私はもう出ていく。あなたは自分で何とかして。」

玄関に向かう途中、夫が小声で「すまなかった」と言った。でも、私は振り返らなかった。ドアを開けて、外に出た。冷たい風が顔に当たった。私は深呼吸をして、前を向いて歩き始めた。

翌日、私の手元には、送り状の控えがあった。離婚届を役所に送ったのだ。私は窓の外を見ながら、静かに言った。

「長い間、お世話になりました。」

それが、私の40年間の結婚生活の最後だった。私は新しい人生を始める準備をしていた。少し怖いけど、自由になった実感が広がっていた。

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