同窓会の席で、中学の同級生がサラダの残りを私の頭に投げつけながら言った。「ゴミ箱かと思った」と。私は黙って頭を洗いに行き、その場をやり過ごした。翌日、私は50億円の大事な商談のため、会社の大会議室で待っていた。ノックの音がしてドアが開くと、そこに立っていたのは、昨日私を辱めたあの男だった。彼は私の顔を見るなり言った。「水商売のババアに育てられた中卒のお前とは用事がない」と。私はスマホの録音ボ…
「ゴミ箱かと思った。」そう言って、中学の同級生・御神は、同窓会の席でサラダの残りを俺の頭に投げつけた。上はどこかの社長の息子で、T大卒のエリートらしい。俺のそんな姿を見て、同級生たちは大笑いした。 俺はすぐに手洗いへ行き、水で頭を洗い、ペーパータオルで髪を拭いた。本当は気の進まない同窓会だった。だけど、そんな俺にも一人だけ、正という親友がいた。親友に誘われて出席したんだ。正とは長い付き合いになっていた。しかし御神は中学時代と全く変わっていない。 その翌日のこと――俺は地獄を見ることに。 俺の名前は広山生太。今は大手の不動産会社で働く27歳だ。今でこそ生活に困ってはいないが、俺の中学時代は暗いものだった。俺は自営業をしている父とパートで働く母の間に生まれた一人息子だ。小学生までは普通にゲームをしたり、クラスメイトと仲良くしたりして元気な男子だった。 しかし中学に上がる前に父が突然亡くなった。まだ若かったのだが、病気だった。しかも父は自営業でたくさんの負債を抱えており、母と俺はいきなりどん底へ突き落とされた。母は家を売り、父の工場を売ったが、まだ少しばかり借金が残った。 母は昼は工場で、夜はスナックで働き出した。俺と母は風呂もないボロアパートに引っ越す。近くには、ずっと仲良くしていた正が住んでいたんだ。正には年の離れた兄がいて、お母さんは看護婦さん。正も家庭に恵まれていた。 俺は明るい父が大好きだった。しかし、俺と母は泣いている暇はなく、俺は母の家事手伝いなども始める。小遣い欲しさに、ゲームも売って少しの現金に変えた。母と俺は毎日を生きるだけで必死だ。まだ中学生で金銭的には母を助けることができず、勉強を頑張ることと家事を手伝うことぐらいしかできない。中学に上がる前も、制服を買うお金に困っていた。 しばらく小学校を休んでいた俺を心配して、正がよく俺の家に来てくれたんだ。そして、俺は正のお兄さんの昔の制服や体操服を譲ってもらった。母は帰りが遅かったので、俺は近くの銭湯へ3日に1回ほど一人で通う。 中学1年になると、早速クラスメイトからの嫌がらせが始まった。そのボス的な存在が御神だ。御神は金持ちのボンボンで、取り巻きたちを連れていた。 「よう、生太の家には風呂もないのか?この前、塾の帰りに銭湯から出てきたお前を見たぞ。」 そんな風に言ってきたが、俺は黙っていた。 「なあ、お前の制服だけさ、なんだかよれよれじゃね?」 そう言って笑う御神。 「おい、生太、お前ってさ、毎日銭湯行ってんの?なんだか匂うんだけど。あ、これやるよ。」 そう言って給食の残りの牛乳パックを俺の机にねじ込んでくる。そんな毎日が続いた。 俺と正は部活には入らず、よく二人で一緒に下校した。ある日、御神は靴箱の前で俺の靴を取り、「やめろよ」と言って追いかけたが、教室のゴミ箱に捨てられた。「お前の靴って臭いんだよ。」 俺はゴミ箱から靴を出して下校する。いつの間にか俺の机の中はゴミだらけになっていく。御神の取り巻きたちも一緒になって、俺の机に消しゴムのカスやいらないプリントをねじ込んでくるんだ。 下校時、正が言った。 「生太、お前平気なの?大丈夫か?」 「ああ、平気だよ。ああいうやつは無視に限るよ。」 「それならいいけどさ、今日うちに寄っていけよ。」 俺は正のうちによる。ゲームも少し楽しんだが、部屋の本棚が気になった。 「生太って本が好きなの?」 「あれは兄ちゃんの本だけど、今は弁護士になるために法律の本ばかり読んでるから、好きな本持っていきなよ。」 正の兄は、いつも俺が来ると愛想よくジュースを入れてくれるような人だった。俺は正の兄さんに礼を言って本を借りて帰ろうとする。すると正が、 「あ、待って。風呂にも入っていきなよ。俺も今から入るからさ。」 「え、いいの?ありがとう。」 そう言って俺はシャワーを借りた。 中学2年になったが、また俺は御神と一緒のクラスになる。正とはクラスが離れたが、相変わらず仲良くしていた。御神からの嫌がらせはずっと続いていたんだ。 俺は勉強は嫌いではなかった。特に英語や国語が好きだ。授業は真面目に受けていた。成績は悪い方ではなく、母も安心してくれていた。正とは一緒に宿題をしたり、互いに家の手伝いをしたり、掃除や買い物をしたりもしていたんだ。 そんな中学時代は長かったが、卒業して、俺は近くの建築現場で働き出した。正から高卒認定試験を進められて、仕事で疲れてはいたが、夜は勉強に励む。建築現場では先輩は厳しかった。しかし、真面目に働く俺。社長はとてもいい人で、いつも俺を応援してくれていた。 やっと俺にも給料が入るようになり、母と風呂つきのアパートへ引っ越すことができた。そして携帯も買い、正とメールをして楽しんだ。正はバイトを始めたのであまり会えなくなったが、時折俺の家に来てくれて、勉強を見てくれていたんだ。 そして19歳の時、俺は高卒認定に合格する。俺は嬉しくて社長に報告すると、社長から今の不動産会社を紹介された。正社員で最初は事務や雑用をしていたが、20歳を過ぎた頃から営業に走り出す。最初は先輩に付き添ってもらっていた。まだその頃はそんなに大きな会社でもなかったが、だんだんと大きくなっていく。 俺の営業成績はトップクラスに入っていき、その頃社長に呼ばれる。 「広山君の活躍はよく見ておるよ。いつもご苦労。実はな、海外に支社を作ることにした。いずれ広山君にもアメリカへ3年ほど行ってもらうことになる。できれば今からでも英語を学んでおいてくれないか。」 「わかりました。」 俺はそれからパソコンを購入して、ネットで英会話をスクリーン越しに学ぶ。教師はアメリカ人でとても楽しい人だ。その頃の正は、お兄さんと同じく弁護士を目指して独学で勉強をしていた。俺は宅地建物取引士の資格も取る。 そして23歳から3年間アメリカへ行き、支社での営業も兼ねながらネイティブな英語も学んだ。アメリカでも実績を積み、26歳で帰国した。その1年後、俺は27歳で営業主任を社長から任されたんだ。正はしっかりと弁護士になっていた。母は昼間の工場はやめ、夜のスナックを任されていた。正と一緒に母の店に飲みに行くと、笑顔で迎えてくれる母。昔よりも母の顔色が良くなって、俺は嬉しかった。 そんな頃、家に1枚の葉書が届いた。よく見てみると、中学の同窓会の誘いだ。俺は地獄の中学時代を思い出す。3年生の時は御神とクラスは離れたが、廊下ですれ違うたびに「貧乏人」だの「臭い」だのと言われ続けていた。 俺は絶対行きたくないと思ったんだが、一応正に電話してみた。 「あ、正か。なんだか葉書が届いたけど、うちにも来たよ。中学の同窓会だろ。俺は行きたくないんだけどさ。」 「ま、気持ちは分かるけど、あれから10年以上も経ってるし、みんなきっと変わっているよ。俺が行くからさ、一緒に行こうぜ。」 「うーん、どうしようかな。」 「何もないと思うけど。何かあったら俺が止めるからさ。」 「ありがとう。じゃあ、覗くだけでも。」 そういう話になったんだ。 そして同窓会当日。場所は高級ホテルのレストランだ。俺は仕事用ではないスーツを着て正と出向いた。その時、仕事の電話が入り、正と一緒に1時間ばかり遅れてしまった。着いてみると、もうみんなが食事をしていて、そこで御神が、 「お、生太じゃん。よく来たな。もう来ないのかと思ったよ。相変わらず正と仲良しだな。」 「ああ、御神、久しぶりだな。ちょっと仕事で遅くなった。」 「はあ。お前、まだ建築現場にいるんだろ。5時になったら終わるだろうよ。」 「いや、ちょっと何かまを操作している。」 「おい、みんな、貧乏人の登場だぜ。」 御神はそう叫び、相変わらず変わっていなくて残念だ。正と座ると、しばらくして食事が運ばれてきた。 「よ、生太、俺高校の帰りにさ、いつもお前が作業を吹く姿や、自転車で帰るところを見かけていたぜ。今も中卒でかわいそうに。なのに無理してスーツなんか着てきたんだな。悪いな、俺の主催でスーツまで買わせてさ。」 「いや、スーツぐらいは持ってるよ。」 … Read more