朝、目が覚めると、スマホが震えていた。母から、父から、妹から、着信が何件も入っている。
「あの家は何? どこでお金を手に入れたの? すぐに電話しなさい」
私はコーヒーを淹れ、それらをすべて無視した。人生で初めて、彼らが知りたがっていることを、私が握っている側になったのだ。彼らが私を待たせた分だけ、待たせてやればいい。
私はアシュリー、35歳。つい最近、想像を絶するような離婚を経験した。夫のマークには何度も浮気されていた。何度も。他の女性と。とうとう現場を押さえた時、私は迷わず離婚届を出した。
ところが、私の両親は、私が離婚すると言った瞬間から大爆発した。
「アシュリー、あんた正気なの? マークは家族の中で一番稼いでいるのよ。あんたは彼の収入で生きてきたんでしょ」
「母さん、私はちゃんと年収数百万稼いでるの。財務ディレクターよ」
「大げさなこと言わないで。マークが教えてくれたわ。あんたの小さな事務仕事のことを」
小さな事務仕事。私は本当は叫びたかった。でも、これがいつものことだった。私の両親は、私の話を一度も聞いたことがない。彼らにとって、いつだって妹のエマこそが特別な子だった。
子供の頃からそうだった。エマが私のノートパソコンにジュースをこぼして壊しても、彼女には当日中に新しいタブレットが買い与えられた。私が「私のパソコンは?」と尋ねると、父は「置き場所が悪いんだ」と言った。エマが免許を取ると、新しいホンダを買ってもらえた。私が免許を取った時は、父の古いボロトラックだった。エマが大学に受かった時は、特大のパーティーを開いて学費も全額出してもらえた。私は奨学金をもらって進学したのに、足りない分は自分で払えと言われた。そういう家庭だった。
離婚の時、私は自分が多く頭金を出したからアパートをもらった。マークは私たちが一緒に買った田舎の家をもらった。公平な取り分だった。でも両親は、そのことでも私を責めた。
「よくもあの家を彼にやったわね! あそこは週末に行くのが楽しみだったのに」
「今度は私のアパートに遊びに来ればいいじゃない」
「違うわよ。あの家にはプールも庭もあるの。あんたのアパートなんて、ただのアパートでしょ」
離婚から二ヶ月、私は一度も家族の夕食に呼ばれなかった。エマがインスタグラムに載せる「家族団らん」の写真に、私だけが写っていなかった。
ようやく呼ばれた時、母は言った。
「エマがね、あんたの離婚を見て、自分は結婚していいのか不安に思ってるのよ。あんたは妹の悪い見本なのよ。完璧な結婚を投げ出して」
エマはあの日のテーブルで、ずっとニヤニヤしていた。
そんな中、私は少しずつ自由を感じ始めていた。自分のアパート、自分が支えられている仕事、本当の友達。マークは私をいつも貶していた。今は、誰の許可も取らずに、好きなように部屋を飾れる。心地よかった。
そして36歳の誕生日が近づいた。私は主導権を握ることにした。
「母さん、誕生日パーティーを自宅で開くから、その日は空けておいて」
「ええ、わかったわよ」
二ヶ月も前に伝えたのに、彼らは来なかった。午後7時を過ぎても、8時になっても、誰も来ない。電話しても、メールしても、返事はない。ゲストのみんなが楽しそうに過ごす横で、私は心臓が潰れる思いだった。
午後9時過ぎ、ようやく母からメールが届いた。
「今夜は予定があるの。エマが彼氏を紹介してくれるっていう晩餐会があるのよ。あなたの誕生日よりも大事なことだから」
私はそのメッセージを、5分間、ただ見つめていた。
エマに電話した。出た。
「何?」と、彼女はうんざりした口調で言った。
「エマ、どうして今夜に夕食を計画したの? 今日は私の誕生日パーティーでしょ」
彼女は本当に笑った。
「あら、偶然が重なっちゃったの。ごめんね。でも、そんなに大げさにしないでよ。泣いたらメイクが落ちちゃうわよ」
そして、一方的に切られた。直後、写真が送られてきた。エマと、私が一度も会ったことのない男、そして両親が、高級レストランの席でグラスを掲げて笑っている写真だった。
私は、家の中に自分を待っていてくれる人たちがいることを思い出した。深く息を吸って、スマホをしまい、リビングに戻った。
「大丈夫?」同僚のマイクが聞いた。
「うん、家族に急用ができたみたい。来られなくなっただけ」
誰も詮索しなかった。それがどれほどありがたかったか。
「まあ、あっちの損ね」サラがグラスを掲げた。「誕生日おめでとう、アシュリー」
そこで私は決めた。彼らに見せてやろう、と。
「みんな、ちょっと聞いて。私、家を買ったの」
瞬間、空気が変わった。みんなが興奮して、写真を見たいと言った。サラは「このプール、信じられない!」と叫び、マイクは「素晴らしい!」と言った。「引っ越しパーティー、絶対やろうね!」と友達が言った。
家族は私の成功に嫉妬した。でも、本物の友達は、心から喜んでくれた。
私は寝る前に、インスタグラムに新居の写真を投稿した。キャプションは「自分自身への最高の贈り物」だった。家族はみんな私をフォローしていた。彼らがこれを見るのは、時間の問題だった。
週末、彼らが私のアパートのドアを猛烈に叩いたのは、案の定だった。
ドアを開けると、三人が立っていた。顔を真っ赤にした父、口をへの字に曲げた母、そして何故か得意げなエマ。
「あんた、一体何を考えてるんだ! 家を買って、私たちに黙ってたのか!」父が叫んだ。
「誕生日パーティーで言うつもりだったのよ。来なかったけどね」
一瞬、沈黙が流れた。母は父を見て、父は自分の足元を見て、エマは爪を眺めていた。しかし、十秒後、母の表情はまた硬くなった。
「あんたの給料で家なんて買えるはずがない! お金はどこから出したの? 無謀なローンを組んだんじゃないの?」
「ちゃんと私の人生に興味があれば、私がどれだけ稼いでいるか知ってたはずよ。でも、あんたたちは一度も私の話を聞いたことがない」
すると、父が言った。その言葉に、私は血の気が引く思いがした。
「エマに、その家をやりなさい」
「……何て言ったの?」
「聞こえたはずだ。エマには、その家が必要なんだ。あんたより、な」
エマが、勝ち誇った顔をして一歩前に出た。
「デレクと私、婚約したの。半年後に結婚するの。住む場所が必要なのよ」
「……つまり、私が買ったばかりの家を、あんたにやれと?」
「そういうことだ」父が頷いた。「お前にはもうアパートがあるだろう」
私は彼らの顔を一人ずつ見た。本気なのだ。これは冗談ではない。
「あんたたち、完全に頭がおかしいわ」私は言った。「今すぐ、この家から出て行って」
「アシュリー、そんなに自己中心的にならないで」と母が口を挟む。
「出て行け!」
私は彼らを玄関まで押し出した。父がまだ何か言おうとしたが、私はドアを閉めて鍵をかけた。
しばらく、廊下で言い争う声が聞こえたが、やがて静かになった。
しかし、私の怒りは彼らが去っても終わらなかった。翌日から、親戚からの電話が鳴り止まなくなった。
「アシュリー、君はエマに対して不公平だと思うよ」と、叔母のスーザンが言う。私は電話を切った。
「お前の母さんが聞いたんだが、新しい家を妹に分け与えたくないらしいな。お前らしくないぞ」と、叔父のボブが言う。切った。
「ねえ、エマ結婚するんだよ。助けてあげなよ」と、いとこのジェニファー。切った。
母は、私が可哀想な妹をいじめているという悲劇のヒロイン物語を、親戚中に電話して話していたのだ。
さらに悪いことに、エマはインスタグラムに、涙を流した自撮り写真を投稿した。
「自分の姉が、私の結婚を妬んで助けてくれない。結婚する私を、離婚した姉は、幸せそうな人を見るのが我慢できないみたい」
コメント欄は阿鼻叫喚の嵐だった。
それでも私は何もしなかった。
そして、新居の引っ越しパーティーの日。私は、本当に私を大切にしてくれる友達だけを呼んだ。昼頃、みんなが集まり、新居を褒め称え、楽しい時間を過ごしていた。
午後4時頃、突然ドアがノックされた。開けると、両親が立っていた。
「サプライズ!」と母が、作り笑いを浮かべて言った。
彼らは私の返事も待たずに、家の中へ入ってきた。
「みなさん、こんにちは! アシュリーの母です」
彼女はまるで理想の母親のように振る舞い、私の友人たちと握手をした。そして、リビングの真ん中に立つと、大きな声で宣言した。
「私はとても誇らしいわ。アシュリーが、私たち両親をこの素敵な家に住まわせてくれることになって。私たちは、自分たちの家をエマに譲ることにしたから」
部屋が静まり返った。
私はその言葉を飲み込み、そして、微笑んだ。
「いいえ、違います」私は同じくらい大きな声で言った。「あんたたちは、この家には住まないわ」
母の顔が歪んだ。
「アシュリー、これは内輪で話し合うべきことよ」
「話し合うことなんて何もない」私は玄関のドアを開けた。「今すぐ出て行って」
父が前に出た。
「私はどこにも行かないぞ。馬鹿げてる!」
「なら、警察を呼びます」
私はスマホを取り出し、番号を押した。彼らはようやく、しぶしぶ家を出て行った。車に向かって歩きながら、父が叫んだ。
「あんたは、恩知らずな娘だ!」
私はドアを閉めた。
振り返ると、友達が全員、私を見ていた。
「ごめんね、みんな。ちょっと中断しちゃったね。パーティーを続けよう」
そして、私たちは再び笑い合った。友達は皆、私が自分を守ったことを誇りに思うと言ってくれた。
あれから半年。私は家族と、一言も言葉を交わしていない。エマの結婚式の写真は、ネットで見かけた。当然、私は呼ばれなかった。良かった。エマと旦那のデレクは、街の反対側の小さなワンルームに住んでいるらしい。親戚の噂話で聞いた。両親は相変わらず、昔の家に住んでいる。私を「話にならない恩知らずな娘」だと、誰かれ構わず愚痴っているらしい。
でも、もう気にしない。
私はこの家が大好きだ。週末はここで過ごす。友達を呼んで、プールサイドでバーベキューをすることもある。静かに一人で庭の野菜の世話をすることもある。ゴールデンレトリバーのチャーリーという相棒もできた。
仕事も順調だ。昇進もした。家族のドラマに振り回されないって、本来あるべき姿なんだなと実感している。今はトムという建築家と付き合っている。彼は、私の家族の話を聞いても、「よく境界線を引いたね。毒になる家族に、ただの血縁ってだけで何でも許されるわけじゃない」と言ってくれた。初めて、理解者が現れた気がした。
私は時々考える。家族と和解すべきだろうか、と。特に、ふと寂しくなった時や、「家族は何よりも大切だよ」と言われると。
でも、その度に思い出す。あの誕生日の夜。エマに家を渡せと言った父の顔。私の友達の前で勝手に住むと宣言した母の図々しさ。涙の偽物を投稿したエマのあざとさ。
彼らは、一度も謝らなかった。一度も、自分たちの非を認めなかった。
35年間、私は彼らの承認を得ようと必死だった。真面目に働き、しっかり生きてきた。それでも、私はエマよりも劣った子として扱われてきた。エマは、ちゃんとした仕事もせず、28歳まで親と暮らし、欲しいものが手に入らないと癇癪を起こして、それでもいつも思い通りにしてきた。
私はずっと、自分に何かが欠けているのだと思っていた。頑張りが足りないのか、成功が足りないのか、愛される資格がないのか。
今なら分かる。問題は、私じゃなかった。
彼らは、努力も、自立も、責任も評価しない。彼らが評価するのは、最も助けを必要とし、最も声の大きい人間だけだ。彼らは、私が自分の力で家を買ったことを誇りに思うのではなく、自分たちが欲しいものを私が持っていることに腹を立てている。
だから、もうこりごりだ。
私は、彼らの承認がなくても、自分の人生を生きていく。この家で、自分の友達と、愛する犬と一緒に。大切なのは、自分自身を愛すること。私はそれを、やっと学んだのだ。



