「お前が関係した企画が依頼内容と全然違うんだが、どうなってんだ?」
出社早々、係長の久田に怒鳴られた。突きつけられた資料を見て、俺は血の気が引いた。確かに、そこにあった依頼書には「シンプルでスタイリッシュなシルバー製品」と書かれている。しかし、俺が作ったのは久田から指示されたプラスチック素材の柔らかなデザインの企画書だった。間違いなく、この男が偽の依頼書を最初に見せて俺を嵌めたのだ。
そう確信したが、反論している時間はなかった。プレゼンは明日だ。俺は久田の「大事なお得意様を失ったら首だな」という脅しを聞き流し、部下たちを集めて徹夜で企画を練り直した。
「島田さんのせいじゃないですよ。」
広瀬さんを始め、部下たちは怒りつつも力を貸してくれた。朝までかかってなんとか形にしたが、結果は散々だった。取引先は明らかに不機嫌で、「練り直してくれ」と言われた。会社に戻ると、久田は満足そうに笑った。
「お前のせいで契約がダメになったら、確実に首だぞ。部長もそう言ってたからな。」
尊敬する太田部長がそんなことを言うはずがない。その一言で、俺の中で何かが切れた。
「では、部長の手を煩わせる前に、私の方から辞めさせていただきます。」
久田は満面の笑みを浮かべ、「お前がいなくなるのは会社にとって大きなダメージだなあ」と皮肉を言った。1ヶ月後、俺はその職場を去った。去り際、心残りだった広瀬さんに企画の引き継ぎを頼み、会社を出た。
その後、俺は大学時代の友人・小室の紹介で、同業種の新しい会社に入社した。規模は小さく、実験的な挑戦をしている面白い会社だった。ここで俺は積極的にアイデアを出した。すると、すぐに実力を評価され、会社の売上は約10倍にまで伸びた。
すると、辞めた会社の久田から電話がかかってきた。以前とは打って変わって、腰の低い態度で「戻ってきてほしい」と言う。俺が辞めた後、会社の企画力はガタ落ちし、太田部長が聞き取り調査をして、久田の個人的な感情で俺を追い出したことが発覚していたらしい。久田は干されていたのだ。
「もうそちらに戻ることはありません。すでに他の会社で働いておりますので。」
そう言うと、久田は最後に「覚えてろよ」と捨て台詞を吐いて電話を切った。きっとあの人は何があっても反省しないだろう。だが、もう俺には関係のないことだ。
俺は心残りだった広瀬さんを新しい会社に呼び、太田部長にも挨拶に行った。太田部長は「島田君の選択は間違ってなかったよ」と言ってくれた。その後、久田は大事な取引先を失った責任と優秀な部下を失った責任を取らされ、降格処分になったらしい。
今の俺はとても忙しい。売上を伸ばしたことで企画に使える予算も大幅に増え、実験的で挑戦的な企画を出すことができている。こんなにワクワクさせてくれる会社に恩返しをするためにも、俺はもっとアイデアを出して貢献していこうと心に決めている。



