夜、義母とテレビ電話を終えた後、操作ミスで通話が切れず、彼女の家の様子が映ったままだった。好奇心から、ついそのまま見てしまった。すると、義母以外の人影が動くのが見えた。一人暮らしのはずなのに。画面に映ったその人物を見て、私は凍りついた。そこにいたのは、私を散々苦しめた元夫だった。彼は義母のタンスを漁り、現金やアクセサリーを自分のポケットに詰め込んでいた。義母に「後ろ!」と叫んだ瞬間、元夫は「…

夜、義母とテレビ電話を終えた後、操作ミスで通話が切れず、彼女の家の様子が映ったままだった。好奇心から、ついそのまま見てしまった。すると、義母以外の人影が動くのが見えた。一人暮らしのはずなのに。画面に映ったその人物を見て、私は凍りついた。そこにいたのは、私を散々苦しめた元夫だった。彼は義母のタンスを漁り、現金やアクセサリーを自分のポケットに詰め込んでいた。義母に「後ろ!」と叫んだ瞬間、元夫は「...

画面越しに、まだ通話が切れていないことに気づいた。さっきまで義母と、3歳の息子の顔を見せながらテレビ電話をしていた。いつもの穏やかな別れの挨拶の後、義母が操作を誤ったのか、画面には彼女の家が映ったままになっている。

ふとした好奇心だった。普段、義母がどんな風に過ごしているのか、少しだけ見てしまおうと思ったのだ。すると突然、義母の背後に人影が映り込んだ。義母は一人暮らしのはず。その人影がはっきりと画面に映った瞬間、私は叫んでいた。

「お母さん、後ろ!」

そこにいたのは、元夫の大輔だった。

私は3歳の子どもがいるバツイチだ。大輔と離婚したのは、彼がどうしようもないクズだったから。結婚生活は、一体どれだけの苦労を強いられたか。息子が生まれた時でさえ、立ち会いもせずパチンコ屋にいた。遊ぶ金は全て私が稼いだ金。財布から勝手に抜き取られ、離婚を切り出しても「ATMを手放す気か」と拒否された。

頼れる親もおらず、弁護士を雇う金もない。私は昼は事務、夜はスナックで働き、何とか生活費を工面していた。そんな地獄のような日々を救ってくれたのが、義母だった。

ある日、大輔がとんでもないことを言い出した。

「浮気相手を妊娠させちまった。中絶費用に50万よこせ」

怒りと絶望で頭が真っ白になった。浮気をして、挙句子どもを堕ろす金を私に要求するなんて。大輔に何を言っても無駄だと分かっていたが、私は義母に縋ることにした。大輔の母なら、もしかしたら何かしてくれるかもしれない。淡い期待だった。

電話をかけると、義母は深いため息をつき、こう言った。

「仕方ないわね。可愛い孫のためよ。私が一肌脱いであげる」

翌日、義母が我が家にやってきた。そして、大輔に離婚届と、300万円が入った封筒を突きつけた。義父の遺産の一部だという。その金をやる代わりに、離婚して、二度と私たちに近づかないという誓約書にサインしろと言う。大輔は嬉々としてサインし、金を確認すると、捨て台詞を残して出て行った。

「これで俺も解放される。せいぜい元気でな」

呆気ない幕切れだった。義母に深く感謝し、返済を申し出ると、彼女はこう言った。

「いいのよ。あなただけだったら助けなかった。孫のためにやったことよ。あの子には言葉は通じない。金でしか動かないの。気にしないで」

そう言って義母は息子と少し遊び、帰っていった。私はその寂しげな背中を見て、思わず言った。

「私たちと一緒に暮らしませんか?」

義母は優しく笑って断った。私にできる恩返しは、孫を立派に育てることだけだ、と。

それから生活は嘘のように落ち着いた。大輔がいなくなっただけで、お金も貯まるようになった。私は義母にテレビ電話ができるようにパソコンをプレゼントし、月に数回、息子の成長を見せていた。そんな穏やかな日々を壊したのは、義母の「物忘れ」の告白だった。

「最近、お金を使ったことも思い出せないし、大切なアクセサリーをどこに置いたか分からなくなっちゃって」

私は心配になり、病院に行くことを勧めた。そして、その日のテレビ電話も終わり、義母がイヤホンを外した後も、誤って通話が繋がったままになっていた。好奇心からしばらく画面を見ていると、義母の背後に人影が動くのが見えた。大輔だ。彼は義母のタンスを漁り、アクセサリーや現金をポケットに詰め込んでいる。

「お母さん、後ろ!」

私は叫んだ。義母は驚いて振り返り、大輔を追いかけた。私はすぐに110番通報した。警察が到着し、大輔は現行犯逮捕。調べると、彼は何度も義母の家に忍び込み、金品を持ち出していたことが判明した。動機は、妊娠させた女性の彼氏に脅され、金を強請られていたからだという。義母からもらった300万円はすぐに消え、その穴埋めに義母を狙っていたのだ。

大輔は実刑判決を受け、私は義母と一緒に面会に行った。大輔は情けなく許しを請うたが、義母は冷たく言い放った。

「全部、自業自得よ。大人しく牢屋で反省しなさい」

その後、義母の物忘れは、ストレスによるものだと分かった。大輔がいなくなり、すべてが正常に戻った。あの時、義母がいなければ、息子は犯罪者の息子として生きていたかもしれない。私はこれからも、義母の孫を愛し、立派に育てていくことで、この恩を返していこうと心に誓った。

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