「ねえ、あの親子、見てよ。高級寿司店に来てるのに、味噌汁とカッパ巻きだけだって。貧乏くさいわね。」
私、芦澤テル子は、久しぶりの家族での昼食を楽しみに、夫と息子と共に高級寿司店を訪れていた。だが、そこで見知らぬ親子が隣の席のママ友・佐々木美ゆさんから、品のない言葉で罵倒されているのを目撃してしまう。
美ゆさんはこの地域のヤクザ組織・佐々木組の若頭の妻で、日頃からその立場を笠に着て周囲を見下していた。隣の席の貧しそうな親子に対しても、容赦なく悪口を浴びせかける。
「おい、あんな汚らしい服着て、ここに座るなんて場違いだろ。回転寿司と間違えたんじゃないか?」
美ゆさんの夫も調子に乗って笑い声を上げる。母親は必死に耐えているが、息子はもう泣き出しそうだ。とうとう母親が声を上げて抗議すると、美ゆさんは激昂し、その母親の顔面を思いっきり殴りつけたのだ。
さすがに見かねた私は、静かにスマホを取り出した。この店は、私たち無藤組の縄張り。そして、私は無藤組の若頭。組長に連絡をすれば、事態は一変するだろう。私は家族に「ちょっと電話してくる」とだけ伝え、席を立ったのだった。



