「全部バレてるよ。」
そのメッセージを送ったとき、私の手は震えていた。夫・明は今ごろハワイの海辺で、愛人と一緒に笑っているのだろう。私はリビングのソファに座り、送信済みの文字を見つめながら、ここまでの日々を思い返していた。
私たちの出会いは運命的だった。友人と訪れたカフェで、割り込んできた外国人に困っていた私を、明が英語で助けてくれた。その笑顔に惹かれて、コーヒーを一緒に飲んだことが交際の始まりだった。価値観も合い、休日は家族で過ごし、息子の強しが生まれてからも幸せな毎日が続いていた。
ところが強しが2歳になる頃、明の様子が変わり始めた。仕事から帰っても「疲れた」と寝室にこもり、週末は「休日出勤」と言って出かけるようになった。幼稚園の話をしても上の空で、夜の営みも拒否するようになった。私は不安を抱えながらも、信じたい気持ちがあった。
そんな中、明が突然「車を買い換えたい」と言い出した。前から欲しかったSUVで、家族でどこにでも出かけられるという。私は嬉しくなって、貯めていた頭金の200万円を渡した。明は笑顔で「手続きしてくる」と出かけていった。
でも、おかしかった。明が欲しいと言っていた車種は500万円ほど。手付け金に200万円も必要だろうか。不審に思った矢先、明は「明日から1週間、地方に出張になった」と言い出した。あまりにも出来すぎた話だった。
そして夕方、すべてが明らかになった。明は出張の嘘をついて、愛人とハワイ旅行に出かけていたのだ。私が渡した200万円は、不倫旅行の費用に消えていた。信じていた人に裏切られた衝撃で、涙も出なかった。
私はLINEで短いメッセージを送った。「全部バレてるよ。」
あとは返事を待つだけ。彼がどんな言い訳をするのか、それとも謝罪すらしないのか。私はスマホを握りしめたまま、画面が光るのを待っていた。



