高校1年の頃の俺は、いわゆるインキャラでパッとしない高校生活を送っていた。高校生になったら見た目も気にして、友達もたくさん増えて、彼女と楽しい時間を過ごす——そんな毎日が待っていると思っていた。しかし俺の高校デビューは失敗に終わり、理想とはほど遠い現実に心が折れそうだった。
そんな俺には2歳年上の姉がいて、同じ高校に通っていた。俺とは真逆の性格の姉は、なぜか校内の不良たちと一緒に俺の教室によく来ていた。その不良の中でも特に怖い人がいて、その千夏という女性は俺に会うたびに話しかけてくるのだ。俺は彼女の怖い顔がとても苦手だった。
この日も俺が教室で過ごしていると、姉と千夏さんがクラスにやってきた。
「またしてんの?」
「見ての通り何もしてないけど」
「本当、いつ来てもあんたって暇だね。彼女くらい作ったら?」
「そんな簡単に言うなよ。俺だってできるもんなら付き合ってみたいんだから」
「はあ。お前、二股する気か?」
「ふ、二股? 僕、彼女いないですけど」
「本当だろうな」
「は、はい。仮に彼女がいたとしても、二股なんてことはしないと思います」
俺は慌てて返すと、千夏さんは何か納得してくれたようだった。ああ、怖ええ。千夏さんってどこで起こるのかよくわからないんだよな。その後も姉たちが帰るまで、俺はビクビクしながら千夏さんの様子を伺っていた。
そんなある日のこと、自宅で晩御飯を食べていると、姉からとんでもないことを言われた。
「あんたのことが気になっている女子がいるからさ、1度会ってみてよ」
そんなことを言われたのは初めてで、調子に乗った俺は、相手がどんな人かも聞かずに会ってみることにした。そして会う約束の日になり、俺はドキドキしながら待ち合わせ場所のファミレスに向かった。
するとそこには、なぜかコーナー1の不良少女である千夏さんがいた。
「あれ? 千夏さん」
「こんにちは」
「おお。まあとりあえずそこ座れよ」
「え?」
「なんだよ。文句あんの?」
「いや、ないですけど」
俺は彼女に言われるがまま席に座った。しかし俺はもう1つ気になることがあった。店内を見渡しても、待ち合わせをしていそうな人がいないのだ。なんだよ、俺をからかっただけなのか。姉に腹を立てながらも、俺はこの状況をどうするべきかと必死に考えた。
「あのさ」
「は?」
「せっかくのデートなんだから、なんか話せよ」
「はい。えっと」
「なあ、まだかよ」
「これ、デートなんだな」
つか、口べたな俺が会話を引っ張るなんて無理だよ。俺は彼女の圧力に潰されそうになりながらも、必死で話題を作り彼女に振ってみた。すると最初は目も合わせてくれなかった千夏さんが、少しずつ俺の方を向いてくれるようになった。なぜか俺はその変化が嬉しくて、夢中になって色々な話をした。
思っていた以上に時間が経つのが早くて、気づけば日が沈んでいたので、この日はここで別れることになった。
そして次の日、俺がいつものように下校しようとすると、千夏さんが1人で教室にやってきた。
「あれ? 千夏さん、どうしたんですか?」
「つ、次のデートはいつにするのかなって」
ちょっと待ってくれ。次もあるのか。俺は思わず固まってしまった。千夏さんはそんな俺の気持ちに構うこともなく話を続ける。
そしてこの日から、千夏さんは毎日のように俺に会いに来るようになってしまった。最初は姉に騙されただけだと思っていたけど、もしかして千夏さんは本当に俺に好意を抱いているのか? 俺がそう思い始めた矢先、教室の入口に1人の男が現れた。
「ああ、誰だお前?」



