「半額まで値下げできないなら、別のサプライヤーを検討する」──そう言い放った男の顔色が、私がたった一言を返した瞬間に真っ青に変わるのを見た。長年、父の影に隠れて“社長の息子”としか見られなかった私が、その日初めて技術者としての誇りを武器にした瞬間だった。しかし、その結果を知った時、私は思わず息を呑んだ。この男が仕掛けたのは、値下げ交渉だけではなかったのだ。 CTA:…

「半額まで値下げできないなら、別のサプライヤーを検討する」──そう言い放った男の顔色が、私がたった一言を返した瞬間に真っ青に変わるのを見た。長年、父の影に隠れて“社長の息子”としか見られなかった私が、その日初めて技術者としての誇りを武器にした瞬間だった。しかし、その結果を知った時、私は思わず息を呑んだ。この男が仕掛けたのは、値下げ交渉だけではなかったのだ。 CTA:...

父が不在の隙を狙って、いつものように値下げを迫ってきた男──ウメノ。こっちは何度も冷静に対応してきたつもりだ。それなのに、彼は決して私を“ただの社長の息子”としか見ようとしない。挙げ句の果てに「半額まで値下げできないなら、他のサプライヤーを検討せざるを得ないな」と、まるで脅すように言ってのけた。悔しさで手が震えたが、私は技術者としての誇りを何より大切にしてきたから、あの言葉が何よりも許せなかった。

あの特許モーターができるまで、私はどれだけ特殊な合金を削り、形を変え、失敗し、また一からやり直したことか。コンパクトなのに最高の出力を維持するための試行錯誤は、言葉にできないほどだった。ようやく理想の形にたどり着いて、父が珍しく誇らしげに肩を叩いて笑ってくれたあの瞬間を、私は忘れたことがない。それなのに、ウメノは技術の何も分からないくせに、私の努力を嘲笑い、そして「小さな下請けに潰される覚悟はあるのか」とまで言った。

その瞬間、長年封じ込めてきた怒りが一気に爆発した。
「では、昨日弊社に頭を下げに来た貴社の社長、サワイ氏に伝えてください。36億円の契約は、完全に白紙に戻すと。」

ウメノの顔色が一瞬で真っ青に変わった。
「なっ……社長が……そんな……まさか……」
「どうやら貴方は、社長が何を考えて動いているのか、何も把握していないようだな。」
私は目の前の男に、これ以上ないほどはっきりと告げた。「お前が勝手にやったことだろう。サワイ社長は、値下げ要求なんて一度も指示していないと言っていたぞ。」

するとウメノは、今にも消え入りそうな声でこう漏らした。
「……あの……私……少しでも早く実績を出したくて……それで……」
「実績? そんな理由で、これまでの信頼関係を壊すつもりか?」
私がそう問い詰めると、彼は何かを悟ったように拳を握りしめ、小さく「……すみません」と言った。しかし、それだけでは話は終わらない。私は彼の弱さと、技術に対する冒涜を、決して許すつもりはなかった。

その日以来、ウメノの姿を会社で見ることはなかった。そして数ヶ月後、父とサワイ社長との再交渉の結果、私たちは以前よりはるかに有利な条件で契約を結び直すことができた。「もう一度でも疑わしい動きがあれば、次はない。」父がそう言った通り、今度の契約には厳しい条項が盛り込まれているらしい。私は技術の誇りを守り抜いた。それで十分だと思っている。

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