夜中に祖母に叩き起こされて、古いトイレに隠された。息を潜めていると、外から叔父夫婦の声が聞こえてきた。「計画は延期だな。せっかくのチャンスだったのに。」「でもまさか、あのガキに遺産が入るなんてね。」「強盗の仕業に見せかければ簡単よ。」私は震えが止まらなかった。遺産欲しさに、実の姪を殺そうとしているのだ。祖母は気づいて、私を守ってくれた。でも、このまま黙っているわけにはいかない。証拠を掴んで、…

夜中に祖母に叩き起こされて、古いトイレに隠された。息を潜めていると、外から叔父夫婦の声が聞こえてきた。「計画は延期だな。せっかくのチャンスだったのに。」「でもまさか、あのガキに遺産が入るなんてね。」「強盗の仕業に見せかければ簡単よ。」私は震えが止まらなかった。遺産欲しさに、実の姪を殺そうとしているのだ。祖母は気づいて、私を守ってくれた。でも、このまま黙っているわけにはいかない。証拠を掴んで、...

夜中に突然、祖母に叩き起こされた。

「ルリ、起きてちょうだい。」

祖母は緊張した表情で小声で私の名前を呼んだ。眠い目を擦りながら何が起こったのか尋ねると、祖母は「静かに、急いで外に出るわよ」と言って、私の腕を引き、強引に外へ連れ出した。

「おばあちゃん、大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ。あなただけは守らなくちゃ。」

祖母は息を切らしながら、意味ありげな言葉を呟いた。そして、辺りを注意深く見回しながら、私の手を引いて庭を通り抜けた。

向かった先は、使われていない古い和式トイレだった。祖母はそのドアを開けると、私を中に押し込んだ。

「ここに入って。静かにして。しばらく出ちゃだめよ。」

そう言って、祖母は私を暗いトイレに残し、外へ出て行った。

私は言われた通り、狭いトイレの中で息を潜めていた。すると、外から声が聞こえてきた。叔父と、その妻のリツ子の声だ。

「あんたの目いっこ、急に朝一で仕事が入って、さっき帰ったみたいよ。」

「ちっ、計画は延期だな。せっかくのチャンスだったのに。」

計画? 私は音を立てないように、トイレのドアに耳をくっつけた。

「でもまさか、あのガキに遺産が入るなんてね。あなたって、よほど亡くなったじいさんに嫌われていたのね。」

「全くだ。父さんはあのガキの父親だった兄さんばかり可愛がって、俺のことは見限ってたからな。最後の嫌がらせのつもりかよ。くそ。」

「まあいいじゃない。計画通り、あのガキを泣きものにすれば、遺産の取分はあなたのものじゃない。強盗の仕業に見せかければ簡単よ。」

「そうだな。今日は実行できなかったが、チャンスはすぐに来る。ルリがこの家に泊まった時を狙おう。」

私は息を呑んだ。叔父夫婦は、私を殺して遺産を奪おうとしているのだ。

私は幼い頃に両親を交通事故で亡くし、父方の祖父母に引き取られた。祖父母は私を愛情深く育ててくれた。祖父は会社を経営していて、父に会社を継がせるつもりだったが、叔父が会社のお金を盗んでいたことが発覚し、勘当した。それ以来、叔父は祖母にたかっていた。

祖父は心臓の病気を患っていて、叔父のことは心配をかけたくないと祖母に黙っていた。しかし、祖父の容態が急に悪化し、入院してしまった。医師からは「もう長くない」と言われた。

そんな中、叔父が病院に現れ、無神経な言葉を吐いた。

「父さん、入院したんだって。ようやくあの頑固親父もおしまいだな。」

祖母はショックを受けていたが、叔父はヘラヘラと笑っていた。そして、また金を要求してきた。祖母は断固として拒否した。

「いやよ。もう二度とあなたにお金は貸さないわ。」

叔父は意外にもあっさりと引き下がったが、その目は恨みがましかった。

数ヶ月後、祖父は亡くなった。葬儀の日、叔父は喪服に身を包んで現れた。

「やっといなくなったなあ。さあ、遺産の話をしようか。」

私は怒りを覚えたが、叔父は私を突き飛ばした。祖母は遺言書を見せた。そこには、遺産のほとんどを祖母と私に譲ると書かれていた。叔父の取り分はわずかだった。

「こっぽっちかよ。ふざけんな。」

叔父は怒り狂ったが、その場は去っていった。

祖父の四十九日が終わった頃から、叔父夫婦が頻繁に祖母の家に訪ねてくるようになった。祖母はどんどん痩せていき、元気がなくなっていった。私は心配して、リツ子に尋ねた。

「リツ子さん、おばあちゃんのことなんだけど、最近調子が悪いみたいなの。ちゃんとご飯を食べているのかしら?」

すると、リツ子は不機嫌そうに言い放った。

「はあ? 私のせいだっていうわけ? こっちは善意で、お先短いババーの世話をしてやってるのよ。お金が欲しいくらいだわ。全く、ガキがしゃしゃり出てこないでちょうだい。」

リツ子は祖母がいないところでは「ババー」と呼んでいた。

そして、ある夜、祖母が私をトイレに隠してくれた。叔父夫婦の会話を聞いて、彼らが私を殺そうとしていることを知った。祖母は私を守るために、私を隠したのだ。

「ルリ、しばらくうちには来ない方がいい。」

祖母はそう言ったが、私は祖母を一人にできなかった。

「おばあちゃん、あいつらに反撃しないと。何か証拠を掴まないと。」

私は家の中を調べ始めた。すると、台所のゴミ箱の中に、見覚えのあるものを見つけた。

「これって…」

それは水仙の花だった。私は祖母に見せた。

「おばあちゃん、もしかして、体調が悪いのは、これのせいだと思うわ。」

祖母は驚き、震え出した。

「まさか、こんなものが家にあるだなんて…」

「でも、これを叔父たちの仕業だと証明するのは難しいんじゃないかしら。」

「大丈夫よ。だって、あれがあるじゃない。」

私はあるものを指差した。それは、祖父が亡くなった直後に、祖母の様子を見守るために台所に取り付けた防犯カメラだった。

「あれがあれば、確かに証拠になるわね。」

私たちはタクシーを呼び、警察署へ向かった。警察に証拠を提出すると、警察官は顔色を変えた。

「すぐに捜査します。」

翌日、叔父夫婦がいつものように祖母の家にやってきた。私たちはリビングで待ち構えていた。

「どうしたんだ? 二人揃って。」

「おじさん、リツ子さんに話があるのよ。あなたたちの犯罪についてね。」

「犯罪? 何を言っているんだ?」

「知らばっくれても無駄よ。リツ子さん、料理に水仙を混ぜて、おばあちゃんに食べさせていましたね。」

「はあ? 何それ? どこにそんな証拠があるのよ。」

「白ばっくれても無駄ですよ。あなたたちの犯行は、全てこれに録画されていますから。」

私はカメラを取り出した。すると、叔父はカメラを奪い、足で踏みつけて壊してしまった。

「はっ、ざまあみろ。証拠隠滅だ。」

「残念でした。もうこの映像はコピーして、警察に提出済みよ。カメラの本体を壊したところで、意味なんてないわ。」

「け、警察?」

二人は慌て始めた。すると、リツ子が台所にあった包丁を掴んで、私に襲いかかってきた。

「生意気な。あんたのせいで計画が全部台無し。」

「ルリ、危ない!」

しかし、その瞬間、隣の部屋に待機していた警察官たちが一斉にリビングに飛び込んできた。

「現行犯だ。取り押さえろ。」

リツ子はあっという間に取り押さえられ、手錠をかけられた。叔父も同じように拘束された。

「くそ、もうおしまいだ。」

「え、冤罪よ。私は何もしていないわ。」

リツ子はヒステリックに叫んだが、無駄だった。二人はパトカーで連行されていった。

その後、叔父とリツ子は、祖母と私に対する殺人未遂の疑いで逮捕された。祖父の遺産が三等分されたことに不満を抱いた叔父は、リツ子と共謀して、私を殺し、祖母に毒を盛り、遺産を独占しようと企んでいたのだ。

叔父はギャンブルで多額の借金を抱えていた。祖母からもらった金で生活していたが、返済には到底足りなかった。だから、私たちさえいなくなればと思ったのだ。

取り調べでは、叔父は「リツ子にそそのかされただけだ」と主張し、リツ子も「叔父が主犯だ」と互いに罪をなすりつけ合った。しかし、私はあの夜、トイレで二人の計画を聞いていた。どれだけ言い訳しようと、二人の罪が軽くなることはなかった。

初犯にも関わらず、計画的で身勝手な犯行ということで、二人はかなり重い刑罰が言い渡された。

祖母は家を売却し、田舎に引っ越すことに決めた。私も仕事を辞め、リモートワークができる企業に転職し、祖母と一緒に暮らし始めた。祖母は、毒の影響で体調を崩していたが、幸い命に関わる量ではなく、時間をかけて回復していった。

今では、趣味だったゲートボールを再開し、社交ダンス教室にも通い始めた。

そして、私はある人と付き合い始めた。祖母が通うデイサービスで働く介護士の青年だ。

「ねえ、おばあちゃん、紹介したい人がいるんだけど。」

祖母は驚き、そして喜んでくれた。

その後、私たちは結婚し、新しく家を建てた。祖母の家の近くで、いつでも様子を見に行ける。

「ルリ、本当にいい人を見つけたわね。あなたが幸せになってくれて嬉しいわ。」

祖母は涙ぐみながら微笑んだ。

今、私のお腹には夫の子供が宿っている。祖母に妊娠を打ち明けると、目に涙を浮かべて喜んでくれた。

幼い頃に両親を失い、大好きだった祖父にももう二度と会えない。しかし、こうして新たな命の誕生がある。祖母にひ孫の顔を見せられるその日が楽しみだと、私はゆっくりと自分のお腹を撫でるのだった。

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