「高志が事故に遭って、病院に救急搬送された。すぐに来てほしい」
その電話で、私は慌てて病院へ向かった。道中、夫の一大事を知らせようと義父に電話をすると、意外な事実を知らされた。
「高志は今日、休暇を取っているはずだが」
私は凍りついた。高志は私に出張に行くと言っていた。それは嘘だったのだ。
病院に駆けつけると、看護師が状況を説明してくれた。高志は右足の複雑骨折で済んだが、同乗していた女性も別の病室に入院しているという。
同乗者。私は確信した。高志は不倫相手と出張と偽って旅行に出かけ、その途中で事故を起こしたのだ。
病室に入ると、高志は明らかに動揺していた。
「同乗者の方も無事だったみたいね」
「あ、ああ。取引先のVIPだ。挨拶は失礼になるから、絶対に向こうの病室に行くな」
必死に私を行かせまいとする高志。私は看護師に頼んで、その女性の病室を訪ねた。
扉を開けると、そこにいたのは――高校時代からの親友、マリ子だった。
「リ、リア!事故にあったって聞いて飛んできたのよ」
「そう、なのね。ありがとう」
「1人旅をしてたら足をくじいちゃって。病院に行こうと思ったら、偶然、高志さんの車だったの」
「本当に偶然ね」
マリ子は必死に言い訳をする。しかし、彼女の鞄からは高志が愛用しているキーホルダーや、2人が訪れた高級レストランのレシートが落ちていた。
「もう嘘はやめて。親友だと思っていたのに、2人して私を裏切っていたのね」
私はそう言い残して病室を出た。
高志の病室に戻ると、義父が来ていた。義父は激怒し、その場で高志の解雇と勘当を言い渡した。
「謝ってもらう必要はないわ。その代わり、離婚届にサインしてちょうだい。あなたとマリ子の双方に慰謝料を請求する」
その時、マリ子の夫である正志が部屋にやってきた。正志は弁護士で、状況を即座に理解し、妻の不貞を謝罪した。
「私も妻と離婚し、徹底的な慰謝料請求の準備をします。リアさんのお力にもなれると思うので、いつでも連絡してください」
マリ子は慌てた。
「待ってよ!私は離婚なんて嫌よ!高志とは本気じゃないわ。それに彼には私以外にも愛人がいるのよ。大口取引先の小林さんの奥さん!」
衝撃の事実だった。高志は大口契約を取るために、小林の妻とも肉体関係を持っていたのだ。
その直後、車椅子に乗った小林本人が病室に現れた。小林は激怒し、高志を追及した。
事故の原因も明らかになった。この日、小林は妻とドライブに出かけていた。その道中、対向車線でマリ子と不倫中の高志が小林の妻を目撃し、パニックになってハンドル操作を誤ったのだ。
全ての嘘が暴かれ、高志は会社を解雇され、義父からも勘当された。私は離婚し、マリ子も正志に離婚され、両親からも見放されて町を去った。高志は3者から慰謝料と賠償金を請求され、総額3000万円を超える借金を抱えることになった。
私は再就職活動を始め、義父の計らいで鈴本物産に正社員として採用された。必死に働いた私は、その能力を認められ、今では管理部門のリーダーとして活躍している。
最近、仕事を通じて知り合った実業家の男性と再婚することになった。彼は私の仕事への情熱も理解してくれ、結婚しても仕事を続けていいと言ってくれる。
私は新しい人生に期待を持っている。


