「ちょっと、ガレージの中に誰かいるんだけど。夫と名乗る男が、閉じ込めたままにしておいたんだ」…

「ちょっと、ガレージの中に誰かいるんだけど。夫と名乗る男が、閉じ込めたままにしておいたんだ」...

夫が浮気をしていることを確信したのは、三か月前のことだ。夫は「急な会議」や「出張」と称して、週に三日も家を空けるようになっていた。私は怪しいと思いつつも、証拠を掴むまでは動かないと決めていた。そして、車とガレージに隠しカメラを設置し、夫の行動を記録し始めた。

あっさりと撮れた映像には、夫と見知らぬ女性が車内で抱き合っている姿が映っていた。私は衝撃を受けつつも、逆に冷静になった。もう迷いはなかった。

夫が愛人を連れてガレージに入ったその日、私は外からシャッターに鍵をかけた。中からは絶対に開けられないようにしてある。準備は完璧だった。私はあえて夫に連絡をしなかった。しばらくしてから、夫から電話がかかってくる。

「もしもし、アンリ?ガレージのシャッターが開かないんだ。閉じ込められちゃってさ。心当たりない?」

私は何も知らないふりをして答えた。
「え、そうなの?それは大変ね。私、今から帰るから、ちょっと見てみるわ。」

夫は慌てて言った。
「いや、帰ってこなくていい!体調が悪いんだろ?病院に行ってくれ。俺がなんとかするから!」

なんとかしようとしても無駄なのに。私は内心で笑いながら、ガレージの前に立って言った。
「あら、もう着いちゃったわ。ちょっと様子を見てみるね。」

シャッターを開けると、そこには車の前に立ちすくむ夫だけがいた。私は微笑みながら言った。
「どうしたの?誰かと一緒にいるんじゃないの?」

夫は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「誰もいない!浮気なんてしてない!お前は俺のことを疑ってるのか!」

その時だった。ガレージの外から、もう一人の男性の声が響いた。
「兄さん、嘘をつくのはやめなよ。車の中をよく見たらどうだ?」

現れたのは、五年前に家を出た夫の弟、雪とだった。夫は驚きの表情を浮かべながらも、まだ嘘を続ける。
「ゆきと!?なんでここにいるんだ!それにアンリと何の関係があるんだ!」

私はゆきとを見つめ、静かに告げた。
「あなた、愛人をどこに隠したの?車のトランクの中かしら?」

夫の顔が一瞬で青ざめた。私は夫が動揺している隙に、車のトランクを開けた。そこには、口元を押さえて縮こまっている愛人がいた。私は愛人にトランクから出るように促した。もう言い逃れはできないと分かったのか、愛人は大人しく車から降りてきた。

夫は今にも泣き出しそうな顔で私に頭を下げた。
「本当に悪かった…。でも、肉体関係を持ったのは今日が初めてなんだ。だから、許してくれないか?」

私はその言葉を聞いて、思わず大声で笑ってしまった。夫は驚いた顔をしている。
「初めて?そんなの嘘に決まってるでしょ。あなたたちの隠しカメラの映像が全部あるのよ。三か月も前から撮ってたんだから。」

私は持っていた封筒を投げつけた。
「これを見てから、同じことが言えるかしら?」

封筒の中には、複数のホテルに入っていく写真や、家の寝室での映像から切り取った写真などが入っていた。夫はそれを見て、顔面蒼白になりながら震えていた。追い打ちをかけるように、私は言った。
「それに、あなたの愛人さんはね、未婚じゃないのよ。ゆきとの奥さんなの。」

夫は信じられないといった様子で、愛人を見た。
「嘘だ…。そんなはずない。お前、確かフリーだって言ったよな?」

愛人は俯いたまま何も答えない。代わりに、ゆきとが口を開いた。
「兄さんは、俺が結婚したって連絡を無視してたから知らないのも無理はないよ。でも、秋菜は俺の妻だ。籍も入れてある。」

夫はその場に崩れ落ちるように膝をつき、ゆきとから離婚届を突きつけられた愛人もまた、ただ震えているだけだった。私はもう、夫に負い目を感じる必要は何もなかった。離婚の準備はできている。証拠も、慰謝料を取るための材料も揃っていた。

その一か月後、私たちは正式に離婚した。夫は慰謝料をきっちりと払い、残りの人生を懸けて仕事に打ち込むと言い出した。一時期は塞ぎ込んでいたけれど、今は新しい目標に向かって歩き出したようだ。愛人の秋菜は、今までの専業主婦生活で貯金もなく、慰謝料を払うために夜の仕事を探しているらしい。自業自得という言葉がこれほど似合う人もいない。

私はというと、元々趣味で書いていた小説を本格的に書き始めたことがきっかけで、今は新しい環境で充実した日々を送っている。ゆきととも、今では良き友人として付き合いが続いている。あの騒動の中で、夫と愛人に対する怒りはもう消えてしまった。今はただ、新しい人生を自分の足で歩いていくだけだ。

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