真夏の炎天下、私は裸のまま家の外に放り出された。母が塩を振りかけ、「二度と帰ってこないでちょうだい」と言い放った。姉の足を折り、顔を火傷させた犯人だと濡れ衣を着せられたのだ。私の鞄から出てきたのは、叔母のネックレス。決してやっていない。でも、母も姉も義兄も、私の言葉を信じようとしなかった。数日後、荷物を取りに戻った私は、義兄にゴルフクラブで殴られそうになった。その時、姉が病院で何かを隠してい…
姉の顔は包帯で覆われ、そこから覗く傷は痛々しかった。足はギプスで固定され、ベッドに横たわっている。母は私を睨みつけ、怒りで声を震わせていた。 「あんたがやったんでしょう。何をですか?」 「知らばっくれるんじゃないわよ。り子の足を折るように誰かにお願いでもしたんでしょう。この顔、いくら自分が見にくくてり子が綺麗で妬ましいからって、顔を火傷させるなんてどういう神経しているの?」 私はため息をついた。母は私の話を聞こうとしない。 「私はそんなことしませんよ」 「嘘。おっしゃい!」 母は携帯電話を取り出し、警察を呼ぶと脅し始めた。私は構わないと返した。すると、姉が突然母を制した。 「だめ、呼ばないで」 「なんでよ」 「いいから呼ばないで」 私は半田直子、23歳の新社会人。地味な見た目と控えめな性格で、結婚願望はない。家族は母と姉と父の4人家族。母も姉も近所で噂になるほどの美人だった。そんな美人の姉と母に、私は幼い頃から高い圧力で支配されていた。 母はいつも美人の姉を可愛がり、私はその存在に怯えて育った。父は私と姉を分け隔てなく愛してくれたが、仕事が多く不在がちだった。姉は母と同じように私を高圧的な態度で攻めるようになり、私は高校卒業後、家を出た。1人暮らしは今まで生きてきた中で最も楽しい時期だった。 その生活が2年続いた頃、姉が同僚と結婚した。義兄は私が苦手とするタイプの男性で、あまり関わらずに過ごしていた。翌年、父に癌が見つかった。早期発見で手術は成功したが、父はすっかり弱ってしまった。心配になった私は1人暮らしを解約し、実家で父の看病をすることに決めた。母は贅沢三昧の生活を送り、姉夫婦は私をこき使うだけだった。それでも父のそばにいられる時間だけが、私の支えだった。だが、父は看病を始めて半年後に亡くなった。 葬儀は滞りなく終わり、数日後、母の姉にあたるおばが久しぶりに家に来た。私は茶を用意し、家事の合間に席を外していた時、おばの悲鳴が聞こえた。 「ちょっと誰か誰か来て。首につけていたネックレスがないのよ」 「さっきまでつけてましたよね」 「そうよ。ちょっとお茶をして起きたら無いの」 その時、姉が言った。 「おば様が寝ていたのなら、誰かが取ったんじゃないの?」 その発言で、場の空気が一瞬にして凍りついた。姉は続ける。 「例えば、あんたみたいにブランド品とか持っていない人とか」 全員の視線が私に集中した。私は取ってなどいない。姉に鞄を乱暴に奪われ、中身を床にぶちまけられた。すると、見慣れないネックレスが床に転がり落ちた。それはおばが身につけていた真珠のネックレスだった。 「ほら、ごらんなさい。やっぱりあんただったのね」 「違う、私はそんなことしていません!信じてください!」 必死に訴えたが、誰も信じてくれなかった。義兄は私の腕を掴むと、ズルズルと引きずっていく。そして、裸のまま家の外へ放り出された。母が塩を振りかけ、「2度と帰ってこないでちょうだい」と言った。真夏の炎天下、私は呆然としながら、会社の先輩の家へ向かった。 先輩はバーの店長で、私の事情を聞くと心よくかくまってくれた。先輩自身も実家からの嫁いびりがひどく離婚した過去があり、私の境遇に共感してしばらく世話をすると言ってくれた。先輩の家に世話になって3日、私はもうあの家族と共にはいられないと決意した。心の支えだった父はもういない。あの家族に未練はない。 姉と母がいない時間を見計らって家に荷物を取りに行った時、運悪く義兄に見つかってしまった。義兄は右手にゴルフクラブを持っていた。 「お前、よくもり子をあんな目に!絶対に許さないからな」 「何のことですか?私は何も知りません」 「うるさい!慰謝料として遺産放棄しろよ!」 わけもわからぬまま脅され、義兄はゴルフクラブを振り上げた。殴られると思った瞬間、聞き覚えのある声がした。 「お巡りさんこっちです!早く!」 タイミングよく警察を呼んでくれたのは、隣のおばさんだった。義兄はそのまま警察署へと連行されていった。 翌日、私はついに姉の入院している病院へ先輩と乗り込んだ。姉の病室の扉を開けると、姉は青ざめて言った。 「なんでここに?」 「残念でした。私はこの通り元気です」 姉の左足にはギプスがはめられ、顔にも包帯が巻かれていた。姉は私を上から下まで凝視し、何かを確信しているかのようだった。それは姉の仕組んだ計画の一部だった。私は言ってやった。 「義兄さんなら、昨日警察に連れて行かれたわよ」 すると、ちょうどその時、母が部屋に戻ってきた。母は私と姉の様子を見て、何かを察したように私を責め始めた。姉の足を折るよう誰かに頼んだと。私は否定し、母は警察を呼ぶと脅した。 「どうぞ。お好きに」 母が本気で警察を呼ぼうとした時、姉がまたしても母を制した。 「だめ、呼ばないで」 「なんでよ」 「いいから呼ばないで」 母は姉の様子に首をかしげつつも、警察を呼んだ。私は満を持して携帯電話を取り出した。 「実は、あの家には防犯カメラがありまして。父が取り付けていたんですよ。携帯と連動できるタイプのね」 2人は黙り込んだ。私は携帯の画面を見せ、再生ボタンを押した。そこには、あの日、ソファーでうとうとしているおばの首からネックレスを盗む姉の姿が映っていた。さらに映像が切り替わり、姉が自分で自分の足をゴルフクラブで殴っている姿が映し出された。 母は信じられないという顔で姉を見た。 「まさか、り子、あなた……」 私は続けた。 「確かお姉さんはメイク好きでしたよね。その顔、本当に火傷ですか?」 そう言った時、警察が病室に入ってきた。私はその映像データを警察に渡し、先輩と共に部屋を去った。 その騒動から1ヶ月後、今度は母と姉が私の会社に押しかけてきた。 「なお子、出てきなさい!絶対に許さないんだから!」 「あんたのせいで家を追い出されたのよ。この泥棒猫!」 … Read more