「私の母が来るので、帰ってもらえますか?」——生まれたばかりの初孫に会うため、79歳で初めて祖母になった私は、息子夫婦の家に着いてわずか5分で、そう言われて追い出されました。手作りのベビー服を抱えたまま、何も言い返せずに帰るしかなかったんです。後日、SNSで嫁の実母が孫を抱く写真を見て、ようやく気づきました。私は「他の人」として扱われていたんだと。そして息子夫婦が求めていたのは、孫への愛情で…
「私の母が来るので、帰ってもらえますか?」 生まれたばかりの初孫に会うために息子夫婦の家を訪れた美代子さんは、到着してからわずか5分で、その言葉を聞くことになりました。79歳にして初めて祖母になった喜びは、一瞬にして打ち砕かれました。 美代子さんは5年前に夫を亡くし、それからは月13万円の年金と夫が残してくれた貯金で静かに一人暮らしをしていました。今年の春、息子の浩一さん夫婦に初孫が生まれたのです。その知らせを受けた時の喜びは、言葉にできないほどでした。 「母さん、生まれたよ。男の子で3200グラム。母子ともに健康だから」 電話越しの浩一さんの声に、美代子さんの声は喜びで震えていました。その日から、初孫に会える日を心待ちにし、手編みのベビー帽子とベビー服のセットを用意して待っていました。 2週間後、ようやく「会いに来て」と連絡が来ました。当日の午後2時、美代子さんは心を躍らせて息子夫婦のマンションを訪れました。インターホンを押すと、嫁の由香里さんが出ました。その声には、明らかに困惑が含まれていました。 リビングに通された美代子さんは、ベビーベッドで眠る初孫を見て心が温かくなりました。そして、赤ちゃんを抱こうと手を伸ばすと、由香里さんが慌てたように言いました。 「あの、手を洗ってもらえますか? それと、消毒もお願いします」 美代子さんは素直に従い、手を洗って消毒をして、ようやく初孫を抱くことができました。その瞬間の幸せは、何ものにも代えがたいものでした。 しかし、その幸せな時間は長くは続きませんでした。由香里さんの携帯電話が鳴ったのです。 電話を切った由香里さんは、申し訳なさそうな表情を浮かべながら言いました。 「お母さん、申し訳ないんですが、私の母が急に来ることになったんです。私の母は、他の人がいる時を使ってしまうので、今日は帰っていただけませんか?」 美代子さんは、一瞬何を言われているのか理解できませんでした。「他の人」という表現が、特に胸に突き刺さりました。 結局、美代子さんは手作りのプレゼントを渡すこともできず、用意していた贈り物も持ったまま、5分ほどで息子夫婦の家を後にしました。浩一さんは、最後まで由香里さんの決定に何も言いませんでした。 帰宅した美代子さんは、一人の夕食を取りながら、今日の出来事を振り返っていました。 「私は、他の人だったのね」 その言葉が、美代子さんの心に深く刻まれました。 しかし、この出来事は始まりに過ぎませんでした。数日後、美代子さんはSNSで衝撃的な投稿を目にしたのです。由香里さんのアカウントに、由香里さんの実母が赤ちゃんを抱いている写真がアップされていました。「おばあちゃんと初孫の、可愛い時間」――その投稿には、美代子さんがまだ経験していない祖母としての喜びが溢れていました。 5月に入ると、息子夫婦からの連絡の内容が変化し始めました。浩一さんからの電話では、家計の大変さが話題の中心になることが多くなったのです。 「母さん、最近は何でも値上がりしていて大変だよ。保育園代だけで月8万円もかかるんだ」 「それは大変ね。共働きでもそんなにかかるの?」 「ゆかりもパートに出ているけど、なかなか思うようにはいかなくて。母さんは年金もしっかりあるし、父さんの保険金もあったから、やっぱり余裕があるでしょう」 このような会話が続くたびに、美代子さんは息子夫婦が何を望んでいるのか、薄々気づき始めていました。 6月の浩一さんの誕生日には、より直接的な要求がありました。 「母さん、今年の誕生日は現金でもらえるかな? 正直、物より現金の方が助かるんだ」 美代子さんは5万円を包んで渡しましたが、浩一さんの反応は意外なものでした。 「ありがとう。でも、もう少し……ゆかりの母は10万円くれたんだよ」 美代子さんは追加で3万円を渡しましたが、心の中では複雑な思いが募っていきました。7月に入ると、美代子さんが孫に会いたいと申し出ても、理由をつけて断られることが多くなりました。「今日は風気味だから」「子供の機嫌が悪くて」「用事があって忙しい」――一方で、SNSには由香里さんの実母と孫が楽しそうに過ごしている写真が頻繁に投稿されていました。 決定的な出来事が起こったのは、孫の1歳の誕生日が近づいた時のことでした。美代子さんは事前に浩一さんに電話をかけて、お祝いの準備について相談しました。 「もうすぐ誕生日ね。何かお祝いをしてあげたいんだけど、どんなものがいいかしら」 「ああ、そうだね。でも母さん、今回の誕生日会は身内だけで、個人的にやる予定なんだ」 「私のこと、呼んでもらえないの?」 電話の向こうで、浩一さんの少し詰まったような沈黙がありました。 「実は場所が狭いから、母さんも呼ぶと厳しいんだよ。ゆかりの両親も来るし、ちょっと手間になりそうで」 美代子さんは胸が締めつけられるような思いでした。しかし数日後、SNSを見てさらなる衝撃を受けました。誕生日会の写真が投稿されていたのですが、そこには由香里さんの両親だけでなく、由香里さんの兄弟夫婦とその子供たちまで映っていました。「狭いから」という説明は、明らかに嘘でした。美代子さんだけが、意図的に排除されていたのです。 翌日、美代子さんは思い切って浩一さんに電話をかけました。 「昨日の誕生日会の写真を見たけれど、たくさんの方がいらしていたのね」 「あ、まあ結果的にはそうなったけど」 「私には、なぜ声をかけてくれなかったの? 同じおばあちゃんなのに」 すると、電話の向こうから由香里さんの声が聞こえてきました。浩一さんが由香里さんと何かを相談しているようでした。しばらくして、浩一さんが戻ってきました。 「母さん、ゆかりが変わるから」 電話に出た由香里さんの声は、これまでにないほどはっきりとしていました。 「お母さん、正直に言わせていただきます。同じおばあちゃんでも、やっぱり実の親とは違うんです。うちの親は普段から孫の面倒を見てくれているし、経済的な援助も……。お母さんはあまり孫の面倒を見てくれないし、お金も期待するほどじゃないし。申し訳ないですけど、そういうことなんです」 美代子さんは言葉を失いました。自分なりに孫を愛し、できる範囲で援助もしてきたつもりでした。しかし、息子夫婦にとっては、それは「期待するほどじゃない」ものだったのです。 「わかりました。そういうことでしたら、もう無理にお邪魔しません」 美代子さんは静かにそう答えて、電話を切りました。その夜、美代子さんは一人で泣きました。夫の写真の前で、心の内を話しました。 「あなた、私はどうしたらいいのでしょう? このまま黙っていたら、一生こんな扱いを受け続けることになりそうです」 美代子さんはこれまでの人生を振り返りました。何十年も地元の会社で真面目に働き、息子を大学まで出し、結婚の時には援助もしました。夫が亡くなってからも、息子夫婦に迷惑をかけないよう、一人で静かに暮らしてきました。 「優しいだけじゃダメなのね。少し、厳しくする必要があるかもしれません」 翌日から、美代子さんは冷静に状況を分析し始めました。まず、息子夫婦の経済状況について考えてみました。浩一さんは地方公務員で安定はしているものの、住宅ローンと保育園費用、車のローンで、月々の支払いは厳しいはずです。由香里さんのパート収入も不安定で、実際に家計は苦しいのだろうと推測できました。 一方、美代子さん自身の状況を見直してみると、年金13万円と夫の遺族年金、そして1200万円ほどの貯金があります。住宅ローンもなく、実は息子夫婦よりも経済的に安定していることに改めて気づきました。 … Read more