川風が冷たく吹きすさぶ年の瀬の市。広場の柱に縄で縛られた女が立っていた。名をさヨという。かつて三谷の女中として仕えていたその女は、足元の木札に「御用の器を割った」と罪を記され、借金の形として身柄を国境の宿へ渡すと読み上げられていた。木札に印を押したのは、暗方の役人、坂木商米。彼は懐から消門を取り出し、三谷の銃兵がその後を継いだ。「この女の罪はすでに定まった。小門にある金高を払わぬ限り、身柄は三谷の定めるところに従う」見物人は口々に囃し立てた。誰がこの借金を肩代わりできるものか、と。
その頃、器直し職人の幻像は、娘のおきぬを連れて市に降りていた。おきぬの夜の怯えを沈める薬を買い求めるためだった。おきぬは七つになる娘で、母を亡くしてから一言も声を発していなかった。女の姿を見た瞬間、沖ぬは父の手を強く引いた。彼女が見つめていたのは、さヨの足元に転がる白い器のかけらではなく、その傍らに置かれた消門と共に没収された器の底だった。沖ぬは指先でその底を差し、それから自分の胸を指した。
幻像は娘がただ怖がっているのだと思ったが、沖ぬは膝をつき、父の足に指で死が見つくと初めて言葉にならない声をもらした。さヨは沖ぬの視線に気づいた。娘が自分を見ているのではなく、地に落ちた器の底を見つめていることにすぐ気づいた。幻像が尋ねた。「この子が何を言おうとしているか、お前には分かるか? 」さヨは静かに答えた。「この子はこの器を見たことがあるのでしょう」
坂木がすぐさま口を挟んだ。「器直しの分際で消門の場に口出しは無用。この女の罪はすでに暗方に降りて改めが住んでおる」
幻像は裏に何かがあると感じたが、懐にある銭には冬を越すだけで精一杯だった。沖ぬは地面に指で縁を描き、それを何度もなぞるように線を引くと父の手を強く握りしめた。幻像は死んだ妻の言葉を思い出していた。「壊れたものはつなぎ直せる。だが、見捨てた心をつなぎ直すのは容易なことではない」
幻像は告げた。「べにとうた消ウ門の金高を今全て払えぬまでも、代わりに何かで償うことはできぬか。れで消門を譲りはそう」
銃兵はしばし考える様子を見せたか、内心ではこの貧しい職人が消門を片付けられるはずもなく、いずれ約束を違えて借金がそのまま幻像に移り、器直しの腕と仕事場までも三谷の言いなりにできると踏んでいた。幻像が手持ちの銭を全て置き、この先一年、店の求めに応じてただ働きをすると一筆したためると、銃兵はそれで消門を譲りはそうと言った。
坂木がその場で新たな消門を書き、幻像に爪印を押させた。幻像は持っていた銭を全て差し出し、一年の働きを約束する消門に爪印を押してさヨの身柄を引き取った。
見物人たちはどっと笑った。「器直しの男があり金と一年の消門を差し出して罪人の女を買い取るとは」
縄が解かれると、さヨは鏡込み白いかけらを拾い上げた。それを日にかざし、小さな声で呟いた。「これは私が割ったと言われている器ではありません」その言葉を聞いた瞬間、沖ぬの体が激しく震え出した。さヨはその時、着物の袖のうちにもう一つ小さなかけらを隠し持っていた。ど門の場で没収された器のうち、砕けた一ぺだけを縄をかけられる直前にそっと拾い、誰にも気づかれぬよう伸ばせておいたのだった。
幻像はさヨを、器のかけらで埋め尽くされた自分の仕事場へ連れ帰った。粗末な家で、部屋も分けてやれず、出せるものが薄いかゆしかないことを彼は詫びた。さヨは不満をもらさず、並べられた道具を見渡して、幻像の腕がただ物でないことをすぐに見て取った。
その夜、さヨは袖に隠していたかけを取り出し、沖ぬがいつも箱に閉まっているかけらの肩に置いた。沖ぬは布の下に潜り込んでしまったか、さヨは無理に迫らず、ただ隅で紙に絵を描き、わざとその一部をかけたままにした。は色布の下から三年の間隠し持っていた黒く焦げたかけらを取り出した。それは家事の夜、母が自らの手でおきぬの指に握らせ、逃げるよう強く押し出した時に残されたかけらだった。二つのかけらは二人と合わった。同じ一枚の器から割れた破片であることは、誰の目にも明らかだった。幻像は言葉を失った。
さヨは静かに語った。「この有薬は波の力では出せるものではありません。それにかけらの底には小さな黒い点があります。これは回転と申しまして、御洋川の釜のうちで、ハイト炎の流れがちょうどその場所に落ちる時にだけ生じる、いわばカの癖でございます。ご要因とは別に、こればかりは同じ入り方まで再現することは容易ではございません」
「三年前の家事で失われたはずの器が、なぜ今お前の身に振りかかった罪と結びつくのか」幻像は問うた。さヨはゆっくりと自分のことを語り始めた。元はこの町のか場のそばで育ち、幼い頃から森の利兵に目をかけられ、器の焼き上がりを見分ける術を襲い、暗えを覚める器の数を長面と照らし合わせる仕事も任されていた。ある時、収める数と焼き上がった数がわずかに合わぬことに気づいて上に伝えたところ、間もなく台所仕事へ下げられ、以来三谷の女中として働くこととなった。か場を去る日、リヘリは片身のように小さなうし塗りの湾を一つ持たせてくれた。「これは言葉にできぬものをしまっておくための器だ」とリヘイは言った。さヨはその意味を深くは問わず、ただ礼を言って受け取った。
「数の合わぬことはその後も続いていたのでしょう」さヨは続けた。「あなたの奥様はその頃、運搬の像で働いておられたと聞きます。見てはならぬものを見てしまったのかもしれません。私が像に運ばれる器の底を改めていたことに誰かが気づいたのでしょう。だから私を消すとして、あの消門が使われたのだと思います」
幻像は言葉に詰まった。「ならば、お前を助けたのは娘の傷を掘り返させるためだったのか」さヨは静かに答えた。「傷の上に土を被せ続ければ、それは治りません。ただ内側で腐っていくだけです」
沖ぬはその言葉を聞いても逃げず、二つのかけらを静かに並べておいた。さヨは割れ目をじっと見つめ、器の内側にごく小さな赤い塗料の跡があることに気づいた。それは本物の健上品として像に収める前だけに施される確認の印だった。
沖ぬはさヨが懐から取り出したうし塗りの腕に興味を示した。手に取ってみると、波の湾よりも底がわずかに熱く、重みがあることに気づいた。幻像は首をかしげたが、さヨはただ微笑み、「これはリ平様から頂いた大切な器です」というだけだった
さヨは幻像の仕事場を手伝うようになった。ある日、一人の老婆が持ち込んだ小バを手に取り、軽く叩いた。音を聞いた瞬間、顔が曇った。「この土はこの町のものではありません。それに、そこにご用員が刻まれている」誰かがご要員を真似て刻んだのだろうとさヨは言った。町のどこかにこうした偽物がすでに出回っているに違いない。一方でさヨは沖ぬに無理に言葉を出させようとはせず、色の違うかけらで物語を語る方法を教えた。「青は川を、赤は白を、黒は恐ろしいものを表すのよ」沖ぬは少しずつ心を開いていった
ある朝、沖ぬは自らさヨの前に座り、紙に触れさせた。さヨが丁寧に髪をすいてやると、沖ぬは目を閉じ、初めて安らいだ表情を見せた。その晩、三人は初めて自然を囲んで飯を食べた。海は薄かったが、誰も言葉を発さずとも、箸の音だけで場が満たされていた。夜、沖ぬが悪夢にうなされて目を覚ました時、彼女は声の代わりにさヨからもらった笛を短く吹き鳴らした。さヨはすぐに気づき隣に来て、眠るまで背をさすった。幻像は家に秩序とぬくもりが戻ってきたことを静かに感じ取っていた
雪の降る晩、三人は貧しい老婆が持ち込んだ器を修理していた。老婆は金を持たず、代わりに芋を三つ差し出した。幻像はその器に焼きがないと思い断ろうとしたが、さヨは言った。「器の内は父にあるのではありません。それは一つの家族が共に食べた飯の数に宿るのです」幻像は言葉を失い、修理に取りかかった。老婆には日を改めて取りに来るよう伝え、器を仕事場に預かることとなった。
数日後、仕上げのうしが乾き切る直前を見計ら、沖ぬが金の粉を継ぎ目に丁寧に巻いた。三人が一つの器を共に仕上げたのはこれが初めてのことだった
老婆に器を渡した後、さヨは老婆が以前三谷から求めたという茶碗を見せてもらった。。それを確かめると、父は川向こうの土でありながら、ご用員だけはよくできた真似で刻まれていた。「こうした偽物がすでに町の家にまで流れ出ているのです」とさヨは短く言った
その一か月ほどの間に、幻像は幾度か消門の一年働きを立てに三谷へ呼びつけられた。ある日のこと、幻像はまず割れた小バを直すよう命じられた。。手に取ってみると、土の粒立ちが妙に荒く川向こうの土であることにすぐ気づいた。だがそこには確かにご用員が刻まれている。よ目を凝らすと、印の線の一部に掘りたしたようなカスかな重なりがあった。印の周りの釉薬が通った後に沿ってごく細かく城食われているのも見て取れた。焼き上がった後に歯で無理に掘り込んだ印の証だった。。老婆の茶碗とは違い、この小バは三谷の店先で預かり物として直に扱われている品であった。。偽物はただ町に流れ出ているだけでなく、道や自らの手で日々使われているのだと幻像は悟った
幻像はその場でそれを口にすればどうなるか察していた。。だからただ黙って下ごしらえに取りかかった。。器直しとして当然の仕事をこなしているだけだという顔をして、釉薬の汚れを落とし、形を整えていった。。手を動かしながら、懐の底の縁に目をやると、ごく小さく見慣れぬ不調が刻まれているのに気づいた。。傷や汚れと見間うほど小さなものだったが、確かに何かの歩であった。。おそらく偽の人揃いと混動せぬよう、店の内内で見分けるための歩であろうと幻像は押しかった
形を整え、下絵を終えた小バを三谷へ返した後、幻像は暗の裏手で荷を仕分ける仕事を続けて命じられた。。積まれた木箱を大きさごとに並べていく中、ある一つの箱を持ち上げた瞬間、中から普段とは違う済んだ音がしたことに気づいた。。並びの他の箱は揺らすと洗い土同士がぶつかるような鈍い音がしたが、その一つだけは、まるで薄く上な器がいくつも重なっているような軽やかな響きを立てた。。幻像はその箱の側面に目を落とし、思わず息を飲んだ。。そこに刻まれていたのは、先ほど小バの底で見たのと寸分がわずに歩であった。。は思わず手を止めたが、そばに立っていた万頭がすぐに近づき、「その箱はすでに仕訳が住んでいる」と、言いはさず引き取っていった
その日、銃兵は自ら像に姿を見せ、幻像の仕事ぶりを見て回った。。何気ない調子で「近頃仕事場に妙な噂は立っておらぬか」と尋ね、幻像が何をどこまで知っているか、それとなく探るようなそぶりを見せた。。幻像は多くを語らず、ただ命じられた仕事だけをこなして帰った。。だが、あの済んだ音と不調のことは胸の奥に重く残った
幻像とさヨはかつてご洋川の守りを務めた老人リヘイの元を尋ねた。。初め、リヘイは全てを否定したか、さヨが二つのかけらを目の前に置くと、リヘイはすぐにそれが三年自らの手で焼いた器だと悟った。。リヘイは語り始めた。。「鶴の紋用が入った十二の揃いの器は、半種の長寿を祝う席のために集えられた品だった。。土を選ぶところからリヘイ自らが手を入れた。。粘りの強いこの地でしか取れぬ土を幾度もこね直し、形を整え、絵付けを終えた後、幾重にもかけて丹念に焼き上げた。焼き上がった日のことは今もはっきりと覚えている。。自らの手で小の様子を正面に記した土の背合う。。カに入れた日、火を落とした日。。その全てを、だが、うわへ運ばれる前や様子がおかしかった。。普段は暗方の下役が二人係かりで二を改め封印を施すところ、その番に限って坂木自らが改めに来て下役を下がらせた。。リヘイが身を唱えると、その場でカ場を追われた。。以来カ場には近づくことも許されなかった”
リ兵はしばし黙り込んだ後、を絞り出すように続けた。「あの晩、坂木が自らの手に封印を施すのを、実は物影から見ていた。。だがその時はただ厳しい役人だとしか思わないんだ。。追われた後も誰かに訴え出ることもせず、ただ黙ってかを去った。。わしが早くに声を上げておれば、あなたの奥様が命を落とすこともなかったやもしれぬ」その後、リヘイは小の記録をつけていた正面を密かに書き移しておいた。。「証を残しておかねば、いずれ自分の記憶さえ疑わしくなると思ったからだった」そのうしをリヘイは自らの手で住まの床下の亀に納めた。。だがそれを誰かに見せる勇気は長らく持てずにいた。。この隠し場所を知るのは、内として長く使えてきたあの若い職人ただ一人であった
その晩、沖ぬは仕事場の隅でいつものようにかけらを並べていた。。だが今度はいつもと違う並べ方をした。。まず白いかけを置き、その傍らに小さな青いかけらで裏口の形を作った。。次に右足だけ斜めの線を刻んだ黒いかけを裏口の傍に置いた。。それから赤いかけを幾つも積み重ね、最後に白いかけらを裏口の外へそっと押し出すように動かした。。さヨはその並びを見つめ静かに言った。「お母様があなたを裏口から外へ押し出したのですね」沖ぬは頷いた。。それから両手で耳を塞ぐしをした。。さヨは「それが何か重いものが閉じられる音だったのではありませんか」と問うた。。沖ぬは再び頷いた
その夜、幻像の仕事場に何者かが忍び込んだ。。銭にも食べ物にも手をつけず、かけらを納めた箱だけを探した。。さヨは箱を守ろうとして腕を切られた。。逃げ去る際、侵入者は下駄の跡を残していった。。幻像はその後に目を止めた。。左の下駄には歯がまっすぐ並んでいるのに対し、右の下駄だけがかとの歯が一本内側へ斜めに打たれていた。。沖ぬはその跡を見て、家事の夜と同じように強度に陥った。。彼女は震える指で先ほど自分が並べた黒いかけらを指びさした。。さヨは言った。「この足跡には、他にはない癖があります。。もしまた同じ跡を見つけたら、それが同じ人物の証となるでしょう」
銃兵は反撃に出た。。さヨが幻像を惑わし、剣の品を盗ませて修理して売らせているという噂を街中に流した。。坂木もまた、幻像が結んだ一年のた働きの消門を持ち出し、「この者はすでに三谷への借を抱えた身であり、言うことなど信用ならぬ」と言いふらした。。住民に対しては、幻像の仕事場へ器を持ち込むことを禁じる触れが出された。。かつて雪の晩に器を直してもらった老婆場でさえ、一度は仕事場の前まで来ながら、周りの目を気にして結局と戦に引き返していった。。子供たちは沖ぬを遊びの輪から外し、道ですれ違うたびにかけらを投げつけては「盗すっとの娘」と呼んだ。。仕事が耐えたことで暮らしは目に見えて引っ迫り、米びつはほとんど空になり、炭も残りわずかとなった。。夜の怯えを沈める薬も買いたすがなくなった
ある夜、仕事場に何かがぶつかる音がした。。幻像が外へ出てみると、地面に一ぺのかけらが転がっていた。。物影へかけ去る小さな背中がちらりと見えた。。翌朝、雪の晩に器を直してもらったあの老婆がそっと詫びに来た。。「孫が悪さをしたようで申し訳ない」と言い続けて、こう明かした。。「孫は地頃、三谷の裏手にある割れた器を捨てる場所で拾いものをしてくるのだと自慢していたが、あの晩も近ったかけらだけはなぜか誰にも見せず隠していたという」幻像がかけらを確かめると、それは波の土とは違う白くめの細かい土であった。。さヨはそのかけらを以前幻像が三谷で見た小バや老婆の茶碗の土と見比べ、同じ性質のものだと確かめた。。「三谷の裏手には、こうした偽物の作り損じや割れた不良品が捨てられているらしい」と二人は察した。。「この場所を覚えておきましょう」とさヨは言った。。「いずれ包みの下へ向かう前に、確かめておくべき場所かもしれません」
幻像は選択を迫られた。。さヨとかけらの全てを差し出して罪を負うか、あるいは家族揃って冬の前に町を追われるか。。三谷が、二人を守るために自らサ郎と申し出た。。幻像はあの日、消門の場で口にした言葉を思い出しながら答えた。。「あの日、お前を助けたのは、危なくなったら再び差し出すためではない」これが幻像が初めて権力の前で頭を下げなかった瞬間だった
坂木が三谷の下役を連れて仕事場に現れた。。彼は並んだ割れた器を見て言い放った。「涼しいものは己れの分を湧きまえるべきだ。。お前たちは人が捨てたものを拾って生きているに過ぎぬ。。それにお前には一年の消門がある。。三谷の求めに応じぬのなら、消門違えのとめを受けることになるぞ」幻像は答えた。「ならばお気をつけなさい。。いつかあなたが捨てたものがつなぎ合わされ、あなた自身の罪の形になって現れるでしょう」
下役たちは道具のほとんどを三谷への預かりとして運び去った。。それだけでは飽きたらず、後から現れた三谷の者たちが、棚に並んでいた修理途中の器を次々と地面に叩きつけていった。。沖ぬは割れた破片の中に膝をつき、泣きもせず、代わりに破片を色に拾い集め始めた。。さヨは沖ぬが記憶の中の焼け落ちた光景をもう一度組み立てて直そうとしていることに気づいた。。沖ぬは暗の裏口によく似た形を組み上げ、その傍らに右のかだけ病の斜め投げたの跡を移した黒いかけらを置いた。。そして川の方向を差し示した。。「まだ誰も知らないの通り道があるのよ」
幻像とさヨは、リヘイが密かに川沿いの抜け道を整えていたことを突き止めた。。だがその夜,仕事場の近くに見慣れぬ男が幾度も立つようになった。。素性を尋ねても「ただ通りすがりだ」と言うばかりだったが、目つきは明らかに家の様子を伺っていた。。さヨは言った。「もう長くは待てません。。次に人手が動く時が、おそらく最後の機会でしょう」
三人は、ここ数日感じていた見張りの目を巻くように、夜更けにそれぞれ別の道から川沿いへ向かった。。煮の足立ちが交わる辻には、いつもの人影はなかった。。幻像は木箱のすれた跡から、夜のうちにこの道を通っていることを突き止めた。。和立ちの残る道を辿どると、車輪の跡に白くめの細かい粉が幾重もついているのが見えた。。幻像が指先でそれを救い取ると、粉というよりごく細かく砕けたすやきのかけらであることが分かった。。器を運ぶ煮が幾度もこの道を通った証だった
川の水かさが下がる夜明けを見計ら、三人は包みの下へ向かった。。塩の引いた川に、普段は水に隠れている小さな三橋が姿を表していた。。ここに年置いた先道が一人、船の綱を確かめていた。。幻像が声をかけると、先道は目を防いで「何も知らぬ」と繰り返すばかりだった。。だがさヨが車輪についていたきの粉のことを静かに告げると、先道の手が震え出した。。先道はやがてぽつりと語った。「塩の低けに幾度も船を出させられたことがある。。包まれた荷には雲で行にも包まれていたが、一度だけ肉連れで雲がめくれ、中からつの門葉が入った器が覗くのを見たことがある。。あれからというもの、見なかったことにして船を漕ぐしかなかった」先道はさらに、「つい先ほど、三谷の若い者が三橋に来て、こ宵いを持って荷を運びに来ると告げていった」と震える声で付け加えた
本屋を逃せば証は残らぬかもしれない。。三人は急ぎ包みの下に隠された古いクエと向かった。。辺りには見張りの気配があり、三人は物影伝って、月の光の中へ滑り込んだ。。中には、印を外された本物の器の一部、暗えを収めるのを待つための偽物の器、そして二の出入りを記した木の二札が幾つも下がっていた。。二札に刻まれた不調は、幻像が三谷の像で見たものと確かに同じであった。。さヨは無傷のままの凝っていた器を見つけた。。それは、幻像の妻の死と直接結びつく十二揃いの一つだった
裏の正面がどこにあるのか、初めは検討もつかなかった。。幻像は暗の中を見渡し、不調の刻まれた木箱が一際多く積まれている一角に目を止めた。。「あの日三谷で聞いた済んだ音の箱と同じ不調である」三人はその軸を探った。。だが正面らしきものは見当たらない。。さヨはその棚の奥、埃をかぶった木箱の下にわずかに紙の橋が覗いているのに気づいた。。木箱をそっとどかすと、正面のようなものが幾重も積まれていた。。表向きの御長とは別に、二の動きと金のやり取りを記した裏の正面であった。。その筆跡は、三谷で日頃から長漬けを任されている万頭のものと見て取れた
さヨが急いでページをめくり、三年前の家事のあった日付を探し当てると、そのページには「十杯の文字」があり、その下に「支払い先、坂木に、改め口止め金として、金量」と記されていた。。傍らには坂木の認め印が押されており、よく見るとその印の円の一部が小さくかけているのが分かった。。人の近づく足音が聞こえたのは、そのページを破り取った直後だった。。さヨは懐からうし塗りの湾を取り出し、そこの蓋をわずかに開けると、破り取った紙を素早く押し入れて閉じた。。それをおきぬの手に押し付け、短く言った。「お父さんに渡して」沖ぬはその瞬間、湾の重みがさらに増したように感じたが、深く考える間もなくそれを胸に抱え込んだ
外で足音が響いた。。三人は慌てて増能へ隠れたが、銃兵が手下を連れて現れた。。リヘイは捉えられた。。幻像はワンを握りしめた沖ぬの手を引いて逃げ延び、さヨは自ら残り、相手の足を止めた。。幻像はさヨを助けに戻ろうとした。。さヨはの中から叫んだ。「この子をもう一度木の中に投げ込むような助け方はしないでください」
像に火が放たれた。。幻像の目に三年前の炎が重なった。。今度は彼は立ち尽くさなかった。。娘を抱き、沖ぬが握りしめたワンと共に炎の中を駆け抜けた。。さヨとリ兵はその場で銃兵の手下に引き立てられた。。銃兵は二人を三谷の像に押し込め、見分の日までに罪を認める一冊を欠かせるつもりでいた。。裏の正面が一刑事でも外へ持ち出されては都合が悪い。。だからこそ二人をすぐには解き放たなかった
幻像は焼け落ちた仕事場に戻った。。手元には、これまでに集めたかけらと、沖ぬが握りしめてきたうし塗りの腕があった。。見分は四日目の朝と定められていた。。あと三日で証を人に示せる形にしなければならない。。だが、うしで金粉を落ち着かせるには通常なら幾日もかけて金か乾かせて間がいる。。三日という日限では、とても本式の金継など間に合わぬことを幻像はよくは買っていた
一日目、幻像とおきぬはまずかけらを仕分けることから始めた。。炭はほとんど尽き、とりは心もなかった。。幻像の手は、暗から逃げる際におった火傷でまだ痛み、疲れと寒さで小刻みに震えていた。。沖ぬは父の手が思うように動かぬのを見て取ると、自ら進んでかけらを色と厚み事に分け始めた。。青みが勝ったかけら、白いかけら、黒く焦げたかけを、それぞれ別の器に集めていく。。さヨはその横で、一ぺずつ手に取り口のそを確かめては元った位置を思い描いた
二日目、幻像は板の上にかけらを本来あった形に並べていった。。割れ口そのものには決してのやろ老を触れさせなかった。。後に本式のうしで継ぐ割我口が汚れていては正しくは合わさらなくなるからだった。。代わりにかけらの裏側だけに薄く米のりを塗り、板の上にそっと貼り付けていった。。所々細くひねった木でかけらを板ごと軽く縛り、動かぬように支えた。。全てのけらを並べ終えると、板の上、かけらとかけらの間の隙間に沿って、練った金デイを指先で薄くなぞっていった。。とりにかざすと、金デイの線がご用員の形をはっきりと描き出した
これは証として一目にさらすための仮組であり、いずれ落ち着いた頃に我口を丁寧に洗いき読めた上で正式なうしと金粉で継ぎ直さねばならぬこと、幻像は沖ぬに言い聞かせた。。作業の最中、沖ぬの記憶はさらに鮮明になり、母が裏口へに王し出す姿をかけらで形づくった。。幻像は妻がただ娘を守っただけでなく、証拠のものを守ろうとしていたことを悟った。。彼は涙をこえきれずに言った。「お前の母は父が弱かったから死んだのではない。。あの人は真実を守ることを選んだのだ」沖ぬは初めてはっきりと声を出そうとしたか、三つ小さなしかし確かな声だった
三日目、幻像は仮組の継ぎ目を、これまでに集めたにや人々の証言と一つずつ付き合わせていった。。近霊の線が描く後要因の形と、リヘイの正面に記された日付、引きの証言にあった不長都とが、矛盾なく重なることを確かめた。。その夜、風が吹けるにつれ、かつて背を向けた町の人々が一人また一人と尋ねてくるようになった。。最初に姿を見せたのは、あの雪の晩に器を直してもらった老婆だった。。謝ったことを浴びながらも、近所の目を気にせず迷いのない足取りでやってきた。「あんたたちが正しいなら、私はこの目で見たことを話す。。うちの茶碗は確かに三谷から求めた品だが、ご用がの土でありながら波の印しかなかった」
続いて、包みの二を運んだことのあるに車の男が、幾度も当たりを見回しながら訪れた。。三谷に見つめられれば仕事を失うと恐れ、一度は戸口で引き返しかけたが、老婆の話を耳にすると、問を決したように語り出した。「夜更けに暗か方から呼ばれ、町外れの船つき場を運んだことがある。。誰の差しかは知らぬが、坂木の印のあるかきつけを渡されたことは覚えている」
さらに、リ平のうちである若い職人が、青ざめた顔で幾度も後ろを振り返りながら訪れた。「師匠が包みの下の暗へ向かうと聞いた番、満一のことを案じて、住まの床下に隠されていた正面を、その前にそっと取り出しておいた」のだという。。「果たして、師匠が捉えられたと知り、やつの影が家の周りをろついているのに気づいた時には、すでに面を懐に収めていたおかげで、助かりました」面には、鶴門用の一揃いが焼き上がった日付と、暗えを覚められるはずだった日付がはっきりと記されていた
それぞれが恐れの色を隠せぬまま、それでも持てるだけの真実を差し出していった。。幻像は集まった証言と仮組の継ぎ目を照らし合わせ、札の不調、正面の日付の道筋が全て同じ一つの筋書きを差し示していることを確かめた。。だがこれだけでは、誰が金を受け取り、誰が差しずしたのかまではまだ示すことができなかった。。沖ぬは握りしめてきたうし塗りの湾をそっと幻像の前に差し出した。。幻像はそれを手に取り、その重みが不自然であることに気づいた。。だがさヨが命がけでおきぬに託した品を、確かめもせずに開くことはためらわれた。。傷つけぬように、包み仮組の次へと共に木箱に納めた
夜明けの鐘が鳴る頃、見分の日を告げる触れが街中に響きは立った。。見分の庭には多くの人々が集まっていた。。坂木、三谷から使わされた見分役の職人たち、人々、町の住民、そして罪人のように縄をかけられたさヨとリ兵の姿があった。。三谷の万頭も、売け町を携えて庭の橋に控えていた。。分薬はこの地のものではなく、白家から使わされたものであった。。地元の縁につりのないその立場、彼はどちらの側にも組みしない態度で場に望んでいた
銃兵は「本物だ」と主張する人揃いの器を差し出した。。その中には、運ぶ際についたものか、縁が一部かけている一つがあった。。坂木は「さヨが不注意で古い人揃いを割ったのだ」と述べた。。幻像は連れ木箱を抱えて姿を表した。。坂木は幻像を捉えるよう命じようとしたが、県文薬がそれを制した。「申し立てがあるなら、まずは聞こう」
第一の巡り。。幻像は銃兵の差し出した器を軽く叩き、要件分薬に求めた。。鈍い音がした。。幻像は言った。「この音はよそから運ばれた粘りの少ない土の音です」銃兵はすぐさま反論した。「器の音など、その日の締めり気や寒さで変わるものだ。。それだけで審議を語るのは早島であろう」見分薬は頷き、さらに確かめるよう命じた。。幻像はすでに縁が欠けていたその器を手に取り、かけた断面を見分薬の前に示した。。断面に見える土の粒立ちは荒く、この土地の土とは明らかに異なっていた。。縄をかけられたままのリヘイが、震える声で言った。「この土は川向こうの砂の混じった洗い土。。この地のご用がまでは決して使わぬ土でございます」
第二の巡り。。坂木が声をあげた。「よし土が違ったとて、それが誰の仕業かまでは分かるまい。。の職人が勝手にその土を混ぜたのやもしれぬ」さヨが進み出ていった。「この土はご用がでは決して持ちぬ土。。すなわちこの人揃いは五がの外で作られた偽物にございます。。本物はすでに焼き上がり、暗えを収められる支度も整っておりました。。偽物とすり替えられたのは、二が像に納められる、まさにその番のことでございましょう。。身を改めをする役目を持つ方を置いて、そのような真似ができるものはおります」銃兵は色をなして言い返した。「この人揃いがどこの土であろうと、三谷には関わりのないこと。。二を改めをするのは暗方の役目。。三谷はただ言われた通りに二を扱ったまでのこと」
幻像はそこで懐から小さな包みを取り出した。。中には、三谷の裏手で拾われたかけらが納められていた。「これは三谷の裏手で拾われた一ぺのかけらにございます。。先ほどの人揃いと同じ、川向うの土でできております。。三谷には関わりないと覆せるなら、何故このようなかけらが店の裏手に落ちていたのでございましょうか」銃兵はそれには答えられなかった。。見分薬は下役に命じ、「後ほど三谷の裏手を改めるよ」うに
銃兵はこれに応じるように、懐から一枚の正面を取り出した。「ならばこれをご覧いただこう。。か場の小の記録である。。ここには鶴門の人揃いは、と折りな工像へ収められたと記してある」リヘイは縄をかけられたままその正面に目を落とし、「これは自分の筆ではない」と言いきった。「日付の書き方も炭の色もわしの竜儀とは異なる。。見分役様、どうかこの長面の隅と神を、像に保管されている他の年のご用長と見比べてくださいませ」県文薬はその場で下役に命じ、の御用長を運ばせた。。見比べた末、下役は「銃兵の差し出した長面の筆跡と支出が、他の年の記録とは明らかに異なる」ことを認めた
第三の巡り。。煮の男が震えながら進み出た。「夜更けに暗方から荷を運ぶよう言いつけられたことがございます。。行き先は町外れの船つき場。。その折に渡された柿つけには、坂木様の印がございました。。あの時、かきつけに判を押していたのは坂木様ご自身のお手でございました。。この目で確かに見てございます」坂木は顔色を変えた。「船つき場などという場所は知らぬ。。その者の見間違いであろう」しかし先道が人々の後ろから、俯いたまま進み出た。。「塩の低けに幾度も船を出させられたことがございます。。一度、肉ず連れで雲がめくれ、中から鶴の門酔うの入った器が覗くのをこの目で見ましてございます」
第四の巡り。。見分役は言った。「二の行き先を決めたのは、誰の差しずであったか、はっきりと申しべく なる立場からのガレようと保先を変えた。。元一件は、坂木殿が画像の改めを取りし切っていたこと。。もし不正があったとすれば、それは暗方の落ち度であろう。。三谷はただ坂木殿の求めに従って二を扱ったに過ぎぬ」坂木はこれに激しく反発した。「何を言う? 二の行き先を決めたのは三谷ではないか。。わしはただ印を押しただけだ」二人の言い分が食い違い始めたことに、見分役は目を止めた。。「ならば、金の動きを示すものがあれば、この場に」と、さヨが声を上げた。「包みの下の像に、二の動きと金のやり取りを記した裏の正面がございました。。筆跡は三谷の万島のものと見受けられました。。私はそこから一ページだけを持ち出し、沖ぬに託した腕の中に隠しました」
見分役は幻像に、木箱の中の湾を差し出すよう命じた。。幻像はこれまで肌み放さず守ってきたワンを、王台の上に置いた。。さヨはそれを一目見て、「確かに自分がおきぬに託したワンである」と認めた。。見分役は湾の底を改めるよう命じた。。下役が慎重に底の蓋を開けると、中から薄い紙が現れた。。最初に目に入ったのは記された日付であった。。三年前、あの家事のあった日と同じ日である。。続けて読み進めると「十杯の文字」があり、その下に「支払い先,坂木に,改め口止め金として,金量」と記されていた。。傍らには小さく認め印が押されており、印の縁の一部がわずかに欠けていた。。銃兵はそれを目にした瞬間、思わず身を乗り出し、その神をひったくろうとした。。下役に押しとめられなおも声を荒げた。「そのような紙、いくらでも後から作れるものであろう」
県文薬はその場で三谷のバ頭を呼び出させた。。万島が青ざめた顔で進み出ると、見分役は日頃の売り掛けを持ってこさせ、裏の正面の筆跡と見比べるよう命じた。。数字のガき壁、炭の羽いずれも同じ手によるものであることは、並べてみれば一目瞭然であった。。万頭は震えながらも「この正面が確かに自分の筆である」ことを認めた。。さらに見分役は、酒きに日頃用いている印を差し出させた。。二つの印を鍋で並べて森にかざすと、どちらも縁の同じ箇所が同じだけかけていることが見て取れた
県文薬は銃兵,万頭,坂木の三人に向けて順に問いを重ねた。「この金数を払えと命じたのは誰か」銃兵は口をつぐんだ。。「これを正面に記したのは誰か」バトは震える声で答えた。「三夜の屋丁場で、銃兵様から時々に命じられ、その通りに印ましてございます」。。「この金数を受け取り、二を偽わしたのは誰か」坂木は名を答えようとしなかった。。その沈黙は、積み重なった証をさらに重くするものであった。。見分役は言った。「金を出したのは三谷。。正面に記したのは万頭。。金を受け取り、二を偽わったのは坂木。。その方々の申し開きなくば、この場を持ってまず三を封じ、双方の身柄を仮に止めおく」
最後の巡り。。短くはあったが、最後の輪が閉じられた。。県文薬は幻像とさヨに問うた。「三年前の家事について、その方らはどうもし開きをするか」坂木はなおも言い抜かれようとした。。「あの夜、自分の場に自分がいたことなど、誰にも見られて羽織らぬ」沖ぬは坂木の白げに目を止めた。。右のかに、内側へ斜めに打たれた歯があった。。それは新入の夜に幻像が写し取った跡と、寸分わず同じものであった。。沖ぬは震えながら、かけらを並べるように指を折って一つずつ示した。。「裏口」この人の足音と閉じる音と、火が落ちて」庭に静寂が満ちた。。県文薬は沖ぬの示したし草だけでなく、下駄の歯の跡と煮や先道の証言と、一つずつ付き合わせるよう命じた。。それらは全て、あの夜坂木がその場にいたことを明らかに差し示していた。。裏の正面に記された日付は、その夜銃兵が坂木に金を渡した事実と重なり、隠さねばならぬ理由が確かにあったことを示していた
県文薬は言った。「証は一つならず、幾重にも重なっておる。。三谷の寝台と帳簿一切を封じ、坂木商米ともども、叱るべき戦技の場へ移す」銃兵と坂木はその場で捉えられた。。県文薬は幻像が結んでいた一年のた働きの消門を取り上げ、その場で向こうと申しは足した。。作の名が解かれた。。おきぬは駆け寄り、はっきりとした声で呼んだ。「さよ姉さん」
銃兵の不正な利は取り上げられ、偽物を焼かされた職人たち、無実の罪を着せられた者たちの家族、素悪な品をかわされた町の人々への償いに当てられた。。坂木は職を解かれ、城きを受けることとなった。。町の人々が幻像のもとを訪れるようになった。。さヨはすぐに美しい言葉で許すことはせず、こう言った。「あなた方が投げた石は、私の娘を傷つけました。。頭を下げただけで、その傷が消えるわけではありません。。しかし本当に食いているなら、その手で壊したカと家を立て直すために働いてください」かつておきぬにかけらを投げつけた子供たちの親が、幾人か真っ先に河を運び、土を組む手伝いに加わった。。許しは消し去ることではなく、つぐいという行いに変えられた
幻像は、無効となった一年の消門をさヨの前で静かに広げて見せた。。「もうこれに縛られることはありません」沖ぬはその紙を両手でゆっくりと引き裂いた。。名誉を取り戻したリ兵は、ご用が前へ戻るよう招かれたが、その場での申し出をすぐには受けなかった。。代わりに、「貧しい者も技を学べ、割れた器が捨てられずに住む新しいカを気づきたい」と語った。。幻像が訪ねたならば、「割れた器だらけのこの家に止まるつもりか? 」さヨは答えた。「いいえ。。私は二度と元には戻らぬと思われたものをつなぎ直す術を知る家に止まるのです」
幻像は、の場で仮組のまま示された鶴の器を、それから幾重にもかけて本式に継ぎ直した。。焦らずうしを重ね、く時を幾度も待ち、その上に金粉を丁寧に巻いていく。。全ての継ぎ目が落ち着き、金の線が滑らかに定まるまでには、季節が一巡りするほどの月日を用した。。三年の月日が流れた。。幻像の小さな仕事場は、次目のカという名の蒲理場として立て直された。。リ兵もまたそこでカ森として迎えられ、若い者たちに土と炎の見極め方を伝えていった。。幻像は器の修理を受け持ち、さヨは小と役を若い職人たちに教えていた。。竜になったおきぬはすっかり言葉を取り戻していたが、それでもかけらで物語を語ることを好み、つの翼がかけたまま金の線で繋がれた新しい様式の器を作り始めていた。。ある日、一人の老婆が泣き、夫の残した割れた器を持ってきた。。沖ぬは尋ねた。「きれいに直しましょうか?

」老婆は答えた。「いいえ。。そのままにしておくれ。。それを見るたびに、この器が一度割れてもなお、私のそばにあり続けたことを思い出せるから」
幻像とさヨは、その言葉を見つめた。。二人の背後の棚には、最初に合わさった二つのかけらから復元された鶴の器が飾られていた。。沖ぬが三つの茶碗を卓に置き、はっきりと言った。「とうさん,さよ姉さん,お茶が覚めてしまいます」二人は同時に振り返った。。極ありふれた一言だったが、幻像にとっては、かつて城へ健上されたどんな宝よりも尊いものだった。。夕暮れの光が、鶴の器を巡る金の線をそっと照らしていた


