「おばあちゃん、ちょっと認知症の気があるから、変なこと言っても気にしないでね」 嫁が私の悪口を近所に流していると知ったのは、スーパーのレジでのことだった。 72歳で、夫が残した家から追い出されそうになった私は、最初はただ黙って従うしかなかった。 でも、息子まで「美也子の言うこともわかってやれ」と言ったとき、私は決めた。 この家を出る。 でも、何も持たずに消えるつもりはない。…

「おばあちゃん、ちょっと認知症の気があるから、変なこと言っても気にしないでね」 嫁が私の悪口を近所に流していると知ったのは、スーパーのレジでのことだった。 72歳で、夫が残した家から追い出されそうになった私は、最初はただ黙って従うしかなかった。 でも、息子まで「美也子の言うこともわかってやれ」と言ったとき、私は決めた。 この家を出る。 でも、何も持たずに消えるつもりはない。...

朝の静けさを破ったのは、嫁の冷たい声だった。
「聞こえなかったんですか?この家にただで住み続けるつもりなら、出て行ってもらいます」
72歳の私は、手に持っていた茶碗を落としそうになった。

32年前、夫と二人で築いたこの家。
必死にローンを返済しながら、ここで息子を育て、庭に桜を植えた。
15年前に夫を喪ってからも、私はこの家を守り続けてきた。
息子が結婚するとき、「一緒に住もう」と言ってくれた。
嫁の美也子も最初は優しかった。
私の手料理を褒め、孫の世話を感謝してくれた。

でも、孫が小学校に上がった頃から、美也子の態度が変わり始めた。
「お母さんの部屋、子供の勉強部屋にしたいんです。和室で十分でしょう」
夫の仏壇がある部屋から、私は追い出された。
着物も、夫がくれた思い出も、ゴミ袋に入れられた。

そしてある日、玄関に高齢者施設のパンフレットが積まれていた。
「ああ、それ、私が取り寄せたんです」
美也子は平然と言った。
私は、この家で、もう邪魔者なのだ。

翌朝、スーパーで近所の人に会った。
「おばあちゃん、ちょっと認知症の気があるから、変なこと言っても気にしないでね」
美也子が私の悪口を流しているのだ。
私は怒りで震えた。
家に帰ると、息子がリビングに座っていた。
「母さん、美也子の言うこともわかってやれよ」
息子まで、私を施設に入れるつもりなのか。

私は決意した。
この家を出る。
でも、指をくわえて黙って出て行くつもりはない。
私が32年間、守ってきたもの。
夫と築いたもの。
それを、ただで譲るつもりはない。
私は弁護士の電話番号を調べ始めた。

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